サステイナブルな社会への提言。 出版社キラジェンヌの代表としても指揮をとる吉良さおりさんインタビュー≪後編≫

更新日:2019/02/01 公開日:2018/02/18

前編では「veggy」編集長 吉良さおりさんの人となりや「veggy」への想いをご紹介させていただきました。

後編は「veggy」のユニークな内容と、その出版社キラジェンヌがこれまで送り出してきた興味深い出版物の数々を通して、吉良さんのポリシーを探ります。

雑誌「veggy」は、大きなテーマに沿った特集と連載で主に構成されています。

例えば最新号のテーマは「健康の鍵はミネラル」。

これだけ見ると、ミネラルをたくさん摂れる食事の紹介かなと思いますが、巻頭の特集がなんとファスティング(断食)。食事とらないの…?

≪前編≫本来、人はみんな、ベジタリアンなのです。 雑誌「veggy ベジィ」編集長 吉良さおりさんインタビュー

多様な選択肢を提示する


「名医がススメるミネラルファスティング」として、末期ガン専門ドクター、白川太郎氏と、断食の第一人者、山田豊文氏の画期的な対談が取り上げられています。

白川医師は、現在自分のクリニックで代替医療も含めた統合医療を行なって成果を上げています。元・京大医学部教授であり、世界的遺伝子学者として長年末期ガン患者に寄り添ってきた白川医師の言葉には重いものがあります。

「結局、患者さんを見ていると8~9割は暴飲暴食ですよ。まずはなぜ自分が病気になったかという根本を見つめて、考え方と食生活習慣を変えなければいけないという原点に立ち返ってきました」

という一文を読んでハッとする方は、今の日本に多いのではないでしょうか。

ただ健康や医療に対する考え方は人それぞれです。「veggy」はあくまで多様な側面から選択肢を提示するだけ、というスタンスで多様な専門家を紹介しています。

もちろん、ベジの世界で有名な料理家のミネラルレシピも用意されています。

You Tube「Peaceful Cuisine」で世界の視聴者を魅了する高嶋綾也さん、「旅する料理教室タタンズホームキッチン」の姫野理南子さんが、これまた美しいレシピを提供していて、見ているだけでワクワク。

連載も刺激的で、読者の視野を広げ、ベジタリアンの世界の奥深さを伝えます。現在の連載はこんな感じ。

*編集長 吉良さおりさんのメッセージ
*世界のベジタリアン&オーガニックの食・商品・サービス最新情報 
*世界のヴィーガン・ブロガー&インスタグラマーの紹介
*ハーブ王子こと野草研究家 山下智道さんの野草の魅力紹介
*バリ「Sayuri healing foodカフェ」シェフでローフード講師 田中さゆりさんのバリ島通信
*ミュージシャン カヒミ カリィさんのエッセイ
*女優 熊谷真実さんのエッセイ
*ベジカフェブロガー「マクロビマウス」のヴィーガンなお店紹介
*「ホリスティックドクター最前線」統合医療を実践して全人的医療を目指す医師を紹介
などなど。

出版社としても独自の目線で

キラジェンヌ社としては、ローフード・マクロビオティック・ベジタリアン・ヴィーガンなどのレシピ本と、食育・環境・健康・医療などの本を出版していますが、一貫して流れているポリシーはやはり「健康・幸福・平和」。

自分だけでなく家族や周囲の人、そして地球全体を豊かに…という希望です。


実はライターも、これまでキラジェンヌ社の本とは知らずに購入していたものがたくさんありました。やはり同じ志向の人や物は引き寄せられるのですね。

真に価値あるものを探す旅

ところで最近キラジェンヌ社は新しい雑誌を発刊しました。


「セレンディップ トラベル」という旅行情報誌です。

今回は「健康」ではなく「旅行」?と驚きましたが、実はこれも人生を豊かにするという意味では同じなのです。

「セレンディピティ」とは素敵な偶然に出会ったり、本来の目的とは別の、予想外で素敵なものや真に価値のあるものを偶然見つけること。

お金をかけて得られるラグジュアリーではない、旅という非日常の中で研ぎ澄まされる感性の豊かさを提案しているのです。

第一号の特集はフィンランド。元々北欧諸国は高い幸福度や雄大な自然が注目されてきましたが、その中でも今、フィンランドの「森」に注目が集まっているようです。

鬱蒼とした森を散歩して、ワイルドハーブやワイルドベリーを摘んで料理に取り入れる…

おとぎ話の世界のようですが、これが近年ヨーロッパのシェフの間で大ブーム。名だたる有名レストランが野草を料理に取り入れています。

「世界のベストレストラン50」という権威ある雑誌で何度も一位になった、デンマークのレストラン「ノーマ」から大きくなった流れかもしれません。

深い森の小さな別荘・湖のほとりのサウナ・エシカルでおしゃれなレストラン・家具やファブリックデザインの完璧さ、そしてムーミン…女子の大好物が満載の「セレンディップ トラベル」。

あ〜今すぐフィンランドに行きたい!と興奮するので要注意です。

行動する経営者


しかし「veggy」とキラジェンヌ社の表現したい「豊かな人生」は、ただ唱えているだけでは実現しません。

インタビューの最後に吉良さんが言っていたことが印象に残りました。

「昨今、ようやくベジタリアン・ヴィーガンという言葉を彼方此方で耳にするようになりました。でも日本ではまだ、ベジタリアンメニューをどこでも自由に楽しめたり、主張しやすい環境には程遠いですよね。

今後は2020年のオリンピックやインバウンドに向け、国内だけでなく海外からの旅行者などによる消費の需要も高くなることが予測されます。

大企業や商業施設などにも、ベジタリアンやエシカルな視点での商品開発・取り組みをしてほしい。そうするとやはり消費者の意識も変わりますし、コストが下がってさらに一般に浸透するのではないかと思います」

そのような想いを持って、吉良さんはお忙しい中で講演会やイベントなどを積極的に行い、自らが広告塔となって啓蒙活動をされています。


一貫したポリシーと、地道で現実的な経営。その両方のバランス感覚に優れた 吉良さおりさん。

そしてキラジェンヌ社は、経営者のそんな姿勢に賛同するスタッフ達のチームワークで前進を続けています。

これからも、どんな提案をしてくれるのか、本当に楽しみですね。

吉良さおりさん ありがとうございました。

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HANA

HANA

KIJ(クシインスティチュート オブ ジャパン) 公認マクロビオティック インストラクター、栄養士。
料理教室「Rainbow Kitchen 六本木」主宰。

1965年札幌生まれ。
自然と本物の食をこよなく愛す。
30歳の時に突然アレルギー発症して以来、マクロビオティックで心身の調整法を学ぶ。

レッスンは紹介制・単発制・デモンストレーション形式。
料理をしない方、野菜嫌いの方、男性の参加者にも好評。