本来、人はみんな、ベジタリアンなのです。 雑誌「veggy ベジィ」編集長 吉良さおりさんインタビュー≪前編≫
今回 Vegewelは「veggy ベジィ」編集長の吉良(きら)さおりさんにインタビュー。
出版社「キラジェンヌ」の代表として数多くの話題作を世に送り出す敏腕経営者でもあり、三人の子どもをもつ母でもあり。
かなりご多忙のはずですが、少女のような透明感と好奇心にあふれた美しい方です。
日本初のベジタリアン雑誌はどんな経緯で、どんな想いで創られているのか、じっくりお話を伺いました。
一般的にベジタリアンは、菜食主義者・植物性の食品のみ食べる人と訳されていますね。
しかしライターは今回「veggy」冒頭の文章を読んでびっくり!
「ベジタリアンの語源は、ラテン語の『vegetus=健康で生命力に溢れている』です。野菜をベジタブルと呼ぶことから、ベジタリアンを『野菜のみ食べる人』と認識している方は多いと思いますが、本当は『健康で生命力に溢れた人』を指しています」
そういうわけで、結果的に食生活は菜食中心になるのですが、本来の意味は違うのです。Vegewel読者の皆様には常識かもしれませんが…
この文章は毎号、ベジタリアンの種類解説とともに記されています。
≪後編≫サステイナブルな社会への提言。 出版社キラジェンヌの代表としても指揮をとる吉良さおりさんインタビュー
海外生活が教えてくれたこと
さて、まさに「健康で生命力にあふれた人」吉良さんは、もともとお肉が苦手で、子供の頃から家でも学校でもお肉を避けていたといいます。
特に理由はなかった。説明もできない。家族は普通にお肉も食べている。
なのに吉良さんだけが「単に嫌いだったから」食べていなかったそうです。
そんな吉良さんが「自分はベジタリアンなんだ」とはっきり自覚したのはイギリスへ留学した頃のこと。
吉良さん「ホームステイ先のおばあちゃんが生粋のビーガンで、ベジタリアン料理をいろいろ教えてもらいました。
それまでオーガニックのことも知らなかったのですが、オーガニックマーケットや自然食品店におばあちゃんと一緒に買い物に行って、食材の選び方なども教えてもらいました」
その当時の吉良さんは、まだ乳製品や卵は摂っていたそうですが、その後のフランス留学を経て、それらもやめることになります。
吉良さん「パリにいた時、体調も肌の調子も悪くなって。
そこで友人に教えてもらったマクロビオティック専門の自然食品店へ行き、マクロビオティックの料理教室に通うようになりました。
そのうち乳製品も自分には合わないのだと気づいて、抜いてみたら体調がすっかり良くなったのです」
当時の日本では、マクロビオティックはまだあまり知られていませんでした。
なのに、パリにフランス人が経営するマクロビオティックの専門店や料理教室があったということに驚きます。
実はマクロビオティック理論を確立した桜沢如一氏(ジョージ・オオサワ)は1920年代にパリに渡って啓蒙・著作活動をしていたのです。
1960年代にはその食養論と宇宙観が「ゼン マクロビオティック」としてパリを中心に欧米で広がり、現地に桜沢氏の弟子がたくさん育っていきました。
吉良さん「近年ベジタリアンに対して理解が広まりつつありますが、少し前の日本では『どうして肉を食べないの?』と、特別視されがちでした。
しかし、当時でも海外では『ベジタリアンです』と言えばすぐに理解してもらえたので、とても楽になりました」
こうして吉良さんは自他共に認めるベジタリアンとなり、帰国してからveggyを創刊。雑誌を創ろうと思った経緯はどんなものだったのでしょうか。
そしてveggy創刊
吉良さん「ベジタリアンのカルチャーが日本でも広がるといいなと思っていましたが、当時はベジタリアンのための情報が本当に少なかった。
オーガニックのお店もほとんどないし。でも、ちょうどヨガ雑誌も創刊されたところでしたので、もしかしたら需要あるかも、と思ったのです。
海外ではヨガをやる人=ヴィーガンやベジタリアンですから。
かつての自分のように、潜在的なベジタリアンが結構いるというものわかってきて、そんな人達にも情報を届けたいと思いました」
しかし、単に食の情報を広めたかったのではありません。
「ベジタリアンカルチャー」も伝えたかったのです。
エシカルな視点を持つということ
海外では独特な「ベジタリアンカルチャー」があり、ベジタリアンというと一般的に、日本とは少し異なるニュアンスで理解されます。
ベジタリアンになった理由が「エシカル」な動機の人が多いためです。
「エシカル」とは直訳すれば倫理的、道徳的ということ。
肉を食べない、動物を殺さないという選択をすることで、自分だけでなく環境にも社会にも配慮しているということです。
多くの国際環境保護団体は、「先進国への牛肉の輸出拡大が、アマゾンの破壊につながっている。森を肉に加工しているようなものだ」と警告しています。
貧しい国で牧畜を拡大するためには、果てしなく森林を伐採して開墾しなけれならないからです。動物愛護の精神から肉をやめる人もいますが、肉食をやめることは自然を守ることと考える人も多いのです。
また、社会的な配慮というのは、貧しい人や途上国からの「搾取」を避けるという意味で、一般的に以下のような主張です。
「食糧不足に苦しむ人のことを考えれば肉食は効率が悪い。
効率の面で考える限り、肉食1人分=菜食20人分。同じ土地の広さがあった場合、放牧するのと穀物を作るのとでは、穀物を作ったほうが放牧で食用肉を作る場合と比べ、約8倍の人を養うことになる。
だからと言って、日々の生活に精一杯な発展途上国の人たちに『貴重な熱帯雨林を伐採してまで牧草を育てるな』と言うのは、豊かな国に住む人間の一方的で傲慢な言葉。見直すべきは己のライフスタイルからではないか」
「健康で生命力に溢れた人」は、自分だけでなく地球全体を、健康で生命力にあふれた世界にしたいのです。
吉良さん「ベジタリアンには環境活動家が多いですが、結局一貫して求めているのは『平和』なのです。ガンジーや桜沢如一もそうだったように」
子育ては自然体で
ご自身のお子さんはやはりベジタリアンとして生活させているのでしょうか。
吉良さん「特に強制はしていません。家で作る料理はベジタリアンですが、夫は肉も食べますから、お父さんがご飯を作る時は喜んでいます(笑)。給食や祖父母の家で食事するときも動物性食品を禁止しません」
子供は禁止するほど欲しがるものですよね。
吉良さん「はい。大きくなって自分で自然に選べる時が来るまでは、選択肢を示すだけです。ただ動物性食品にしても質は選びたいですし、選択のための情報は与えたいですね。
ベジタリアンになる・ならない以前に、環境問題などは伝えたいです。
関連した映画や本を見せたりして。もっともいまどきの子はユーチューブなどで勝手に勉強してしまいますが」
子ども達にはいずれ海外経験もして、いろいろな価値観に出会って、自分の意見をしっかり持って欲しいと言う吉良さん。
「今、欧米では若い人にベジタリアンがすごく増えています。人と違う主張を堂々とできるのも、幼い頃から受け身ではなく、自分の意見をしっかり持つことを奨励する教育で育ったからかもしれません」
ベジタリアンやマクロビオティックを実践する子育て中の方には、吉良さんのこんな自然な姿勢が参考になるかもしれません。
【吉良さおりさん プロフィール】
雑誌「veggy」発行人。1974年12月生まれの山羊座。20代からヨガをライフスタイルに取り入れるようになり、自然とベジタリアンの食生活を始める。2008年に雑誌「veggy」を創刊。3児の母。食事はマクロビオテック、ローフード×スーパーフード、アーユルヴェーダ、薬膳などを体調に合わせて選んでいる。
後編へ続く
後編はこれまでの veggyの内容、出版社キラジェンヌの他の出版物についてご紹介していきます。
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