笑顔で同じ食卓を囲んで欲しい! 「みんなの野菜だし」に込めた想い【農食タユトマ】
「おだし」がきいたものを食べると「ホッと」しませんか?
海外でも日本人が慣れ親しんだおだしを「Dashi」といって、レストランのメニューでもよく見かけます。
だし汁は古来から伝わるものですが、時代とともに進化しています。しかし、変わらないのは「人を幸せにしてくれる」効果。
今回は、顔の見える九州の農家が作った野菜を使った乾燥野菜「みんなの野菜だし」を販売している福岡県の企業「農食タユトマ」代表の宮崎智子(みやざきともこ)さんと、福岡県の農家の皆さんをインタビュー。
乾燥野菜に関わる人々からとても素敵なお話を伺ってきました。
なぜ乾燥野菜?
※農食タユトマ代表の宮崎さん。
「みんなの野菜だし」には、玉ねぎ・大根・しめじ・生姜が入っています。そして無塩です。大根と玉ねぎの甘さとしめじのミルキーさが加わった優しい味のだし汁がとれます。
この組み合わせにたどりつくまでには、かなり時間がかかったそうです。
使用する野菜は全て福岡産。紅茶のティーバッグと同じ三角形のバッグに入っています。3gx10包で税込1,080円です。
また、農食タユトマでは、「みんなの野菜だし」の他、黒ニンニク・有機黒大豆「クロダマル」等を販売しています。
農食タユトマHP
http://tayutoma.com/
農食タユトマのこだわりは、「おいしい旬の野菜を使う」・「農家さんの負担にならない」・「農家さんが元気になる」ことです。
「乾燥野菜はカットした野菜を乾燥させて、長期保存ができるようにしたもの。昔から野菜を無駄なく使いきるために用いられてきた手法です。
おいしい野菜を旬のタイミングで乾燥できるのは、農家の方々だけですし、乾燥野菜なら農家さんも簡単に始められます」と宮崎さん。
乾燥野菜に着目した理由からも、農食タユトマのこだわりを知ることができます。
「乾燥野菜のイメージは切り干し大根。でも、大根以外のものでも乾燥はできます。乾燥野菜は使い方も簡単ですし、野菜を乾燥することでうまみが増します。乾燥野菜の文化が広まればもっと農家さんは元気になると思うんですよ」
宮崎さんは、「農食タユトマの活動が、日本の農業が抱える課題の解決の一つになるのではないか?」と、乾燥野菜と向き合う覚悟を話してくださいました。
では、なぜ乾燥野菜をだしに使いたいと思ったのでしょうか?
「おだしは、料理の基本。私たちのバックボーンです」
宮崎さんは、小さいころ彼女の祖母が病気になり、独りだけ家族と異なる食事を摂っていたことや、宮崎さんが栄養士になろうと思ったきっかけが祖母であることを話してくださいました。
「病気の方々から『減塩』・『油ぬき』の食事が必要で、家族と同じ食事ができないことが辛いという話を多く聞きました。
野菜のおだしならどんなお料理にも使ってもらえるし、無塩で作れば家族全員が食べられる。乾燥した野菜を戻すことで、野菜のうま味が出た美味しいだし汁がとれ、その野菜も一緒に食べられるので無駄なく使えます」
乾燥野菜をだしにしようと思った理由は、同じ食卓で独りだけ異なる食事をしていた祖母への想いと、野菜だしなら、食事制限がある人とも一緒に美味しく食べられるような工夫ができるという想いからでした。
父親の病気がきっかけで脱サラ
宮崎さんは、父親の病気がきっかけで、20年間勤めていた飲食システムの会社を退職して、タユトマを約3年前に創設しました。
宮崎さんの実家は、広島で代々続く農家。弟は父親の病気を機に家族を連れて実家に戻り、農家を始めました。しかし、専業農家で生計を立てるのは困難であることから、工場に勤めながら父親が守ってきた農業を続けることにしたそうです。
そんな様子をみた宮崎さんは、「弟が農業だけで生計が立てられるようにサポートをしたい」と思い、サラリーマン時代の経験を活かして広島で作られた野菜の流通・販売を始めることに。
実際に野菜の流通・販売に携わって、初めて日本の農業のシビアな現実を知ったそうです。
かつて日本は農耕・稲作が盛んで、私たちの食文化の多くを占めるのは国産の野菜・大豆・米でした。しかし戦後の日本の食文化は、食の欧米化やライフスタイルの変化に伴い大きく変わりました。
また、日本の農業は高度経済成長期からかなり減り始め、現在は農家の後継者不足等様々な課題を抱えています。
宮崎さんは、「私たちの『食』を支える農業はこれからもなくてはならない産業。何とか農家さんの助けになることはできないか?」と考え、現在住んでいる九州の農家の方々と一緒に、国産野菜を広める仕事を始めたのです。
野菜を作る農家さんはハンドボール選手
乾燥野菜に使われる野菜は、福岡県糸島の若手の農家の方々が作っています。
実はここにも「農家さんを元気にしたい」という農食タユトマの想いがつながっています。
若手の農家の方々は、なんとスポーツと農業の両立にチャレンジしている、ハンドボールチーム「フレッサ福岡」の選手達。
一見華やかに見えるプロアスリートの世界ですが、賞金・スポンサー支援等で生活ができる選手はほんの一握り。多くのアスリートは生活の安定を図ることは難しく、別の仕事を持ちながら選手生活を続けています。また、引退後の生活も保障はありません。
そこで、人材不足の農家とアスリートの生活・第二の人生の問題を同時に解決することを目的として、「一般社団法人フレッサ福岡」が発足されました。
フレッサ福岡に所属する選手は農家で研修を受けて、日中は研修先の農家で農作業を行い、夕方からはハンドポールの練習に励んでいます。
選手兼監督の國分さんは、
「まったくの素人でした。農業研修を通じて野菜作りを勉強し、研修後はベテラン農家さんから色々教えてもらいながら農作業をしています。
農作業は自然を相手にしているので大変です。でも、全てが経験。頑張ったら頑張っただけの実りはありますし、全ての経験が次に活かされます。
このシステムの良いところは、頑張れば生活の基盤ができますし、練習も続けられること。引退後は農業を続けられるし、毎日の経験が引退後にも活かされます。第二の人生の不安を抱かなくてもよいと思うと、ハンドボールにも集中できます。
一生懸命美味しい野菜を作って、多くの人に野菜を食べてもらいたいです」とお話してくださいました。
アスリートと農業で地域を元気にする取り組みを支えるシステムを構築・提供している方々もいます。
アグリサポートシステム株式会社の清水社長(写真)は、福岡、九州の天候、環境を知り尽くしており、農業をやったことがない若者が農業で生計が立てられるように、農業設備・システムを提供するなどサポートをしています。
このように、野菜ができるまでに多くの人々が携わっていることを改めて知りました。
「乾燥野菜は、野菜を切ってから乾燥をさせますが、切った形がその野菜の調理方法をイメージさせます。つまり、野菜の切り方次第で料理が決まってしまいます。
それゆえに難しさもありますがやりがいはあります」と、農家の池さんが、乾燥野菜を商品化をしる難しさを話してくださいました。
挑戦はこれからも続きます
「野菜を作っているアスリート兼農家さん・野菜を乾燥している会社さんの想いを、皆さんにお届けするのが役割。でもまだまだ起動したばかり。
想いだけでは難しいことは感じていますが、『美味しい』と笑顔になる皆さんのことを思いながら丁寧に作っています。
消費者の皆さんも『どんな人が作っているのかな?』と知りたくなるでしょうし、知ることができれば『安心』して食べてもらえると思います。『顔の見える生産者』にこだわり続けて、生産者さんの想いを食卓に届ける役割を今後も担っていきたいです」
宮崎さんの挑戦はこれからも続きます。
また、宮崎さんは、農食タユトマだからこそできる商品づくりと取り組みについてもお話をしてくださいました。
「具だくさん味噌汁・炊き込みご飯・ベジタブルティー等『みんなの野菜だし』の使い方はアイデア次第。
私は洗い物を少なくするために、マグカップにお味噌とみんなの野菜だしを袋から出して入れ、お湯を注いでいただきます。忙しい朝にはとても便利です。
今後はスティックタイプのものを考えています。味をつけたものや、使いやすさを追求したものも。もっと乾燥野菜を広めて、乾燥野菜文化を作っていきたいです。
今年中に新たな商品として展開したいのが『子供のだし』。これは、多くの子供に旬の野菜の美味しさを知ってほしく、旬の野菜シリーズとして、通年で流通しない野菜を乾燥して使った商品です。もちろん国産・無添加・減塩・顔の見える生産者さんにこだわり続けます」
今後の展開が今から楽しみです。
今回の取材を通して、日本の農業の課題・アスリートの課題を改めて知ることができました。そして「答えのない問題はない」と同じ想いの仲間が集まって多感に挑戦する様子を肌で感じました。
乾燥野菜「みんなの野菜だし」には、多くの人の想いもギュッとが凝縮されているんですね。
忙しい毎日、インスタント食品やファストフード等、簡単に食べられる食事に頼りがちです。どんなに忙しくとも乾燥野菜があれば、1品・2品とバランスの取れた美味しい野菜を摂ることができます。
そして、顔の見える生産者さんの想いを感じながらいただく食事は、心から笑顔になります。
料理の脇役になりがちな乾燥野菜。使い方次第では料理の主役として、私たちの食卓に笑顔と幸せを届けてくれる素晴らしい力をもっている気がします。
農食タユトマHP
http://tayutoma.com/
取材協力:アグリサポートシステム株式会社様・農家の池様
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