「生まれて初めてラーメン食べた!」感激の声を励みに。グルテンフリーT’sキッチン【六本木】

グルテンフリー*は世界的に認知度が上がってきていますが、日本のレストランでもグルテンフリーの料理を提供するお店が増えてきました。

今回はその中でも希少なグルテンフリー専門店、六本木にある「グルテンフリーT’sキッチン」を取材。

ヴィーガンメニューも多く、最近はそれが目当てのお客様も増えているということです。

*グルテンフリーとは、グルテン(小麦・大麦・ライ麦等に含まれるタンパク質の一種)を摂取しない食事法、もしくは含まない食品のことです。グルテン摂取が引き金となる自己免疫疾患の増加が近年目立ち、知られるようになりました。

ここではグルテンフリーを「小麦摂取が難しい体質の方、セリアック病やグルテンアレルギーの方の食事法」と定義いたします。
ダイエットや健康志向でのグルテンフリーと区別するためです。

グルテンフリーT’sキッチンの場所や詳細な情報はこちら

グルテンアレルギーを持つ訪日客の駆け込み寺的存在

 


<米粉のポーク餃子 税込690円>

グルテンフリーT’sキッチンは開店から3年目を迎えました。

オープン当初から訪日外国人の間で話題になり、トリップアドバイザー グルテンフリー部門で1位、SNSでも話題となって、現在は顧客の8割が外国人です。

皆さん口々に「やっと日本食が食べられてうれしい」「こういうお店を探していた」と大満足のご様子。

日本観光の大きな目的の一つは日本食ですが、最近は伝統的な日本食ばかりでなく、ラーメン・餃子・お好み焼きなどのいわゆる「B級グルメ」が大人気。

しかしこういうものほど、グルテンフリーの人にとっては手の届かないごちそうなのです。グルテンフリーT’sキッチンに外国人が集まる理由もここにあります。

パスタの麺やパンをグルテンフリーに替えられるお店は増えていますが、グルテンフリー専門店、かつ日本食を提供するお店を見つけることは、東京でもほぼ不可能なのが現状です。

食べられるものがなくて困っている…素晴らしいレストランや美味しい食があふれる東京で残念な思いをしている外国人は、実は多いのです。

意外と難しいグルテンフリー日本食

   

<フワフワ桜ケーキとアイスクリーム 税込1,200円>

実は日本食をグルテンフリーで提供するということは、お店側にとって多くのハードルがあるために、なかなか普及しません。

日本では欧米に比べてグルテンアレルギー人口が少ないため、需要が少ないということも考えられます。

そのため、グルテンフリーの目的がきちんと認知されにくいのです。

日本は米文化だからグルテンアレルギーにも対応できるのでは?と考える方も多いのですが、例えば日本食につきものである醤油が小麦を含んでいます。

ほんの少しの小麦成分でもアレルギー症状が出てしまう過敏な方もいるのですが、そういう現状はあまり日本では知られていません。

大豆だけの醤油は特殊で高価なので一般に普及していませんし、味噌・酢やみりんなどにも麦を含むものがあるということで、調味料から見直す必要があります。

また、市販や業務用のソース・冷凍食品・レトルト食品なども、ほとんどが小麦や小麦由来成分を含んでいるので、ほぼ全てをグルテンフリー食材で手作りすることになります。

単価の高い高級店ならそれも可能ですが、一般的なレストランでは採算を取るのが難しくなってきます。

そんな中、あえてグルテンフリー専門店を作ることにしたオーナーの飯野孝子(いいのたかこ)さんは、必ずグルテンフリーの波が日本にも来るという直感を持って、飲食業の経験が無いにも関わらず、自ら厨房に立ってお店を始めました。

きっかけはセリアック病の友人


<ベジタリアンカレー(ヴィーガンカレー+卵)税込1,600円>

飯野さんは、長い間東京とロサンゼルスを行き来する生活をしていました。

当時ロサンゼルスの友人にセリアック病の方がいましたが、グルテンフリーの知識がなかった飯野さんは、その友人が日本に遊びに来ても一緒に外食ができない、ということに大変驚いたそうです。

「今はあまり表面化していないけれども、日本で困っている外国人は結構多いのではないか。そして今後は日本人にもグルテンフリーを求める人は増えるのではないだろうか」

その予感は当たっていました。

グルテン摂取を制限すべき体質の持ち主にとっては、日本は決して居心地のいい国ではありません。

「せっかく日本に来たのに、日本ならではの食体験がないまま帰るなんて、そんな残念なことはないですよね。日本人としても日本食は美味しかったと言ってもらいたいし、笑顔で帰って欲しいんです」

そんなホスピタリティー豊かな飯野さんは、お客様からの喜びの声を励みに、毎日笑顔でお店に立ちます。

「特に小さな子どもさんが大喜びしてくださるのが本当にうれしいですね。

初めてラーメンを食べた、と喜ぶ子供さんを見たとき、本当にこのお店を始めて良かったと思いました。

最近は日本人にもグルテンアレルギーの方が増えてきて、遠方からわざわざご来店くださいます。初めて家族で外食できた!と言ってすごく感謝されるんですよ」

グルテンフリーならではの工夫が必要


<アジアンサラダ 税込1,500円>

しかし、現在のように多彩なメニュー構成にするまでにはいろいろな苦労がありました。

デザートのケーキ、パンケーキ、お好み焼き、天ぷらなどは、米粉や雑穀粉を配合して作りますが、通常のレシピの小麦粉を他の粉に替えただけではおいしくなりません。理想の食感とするために、配合を変えて何度も試作を繰り返しました。

パスタの麺や餃子・春巻きの皮ももちろん米粉ですが、小麦粉と違ってコシがなく、水分に大変弱いので一切作り置きができません。

そのため注文を受けてから調理することになり、通常より時間と手間がかかります。

また、醤油の原料が大豆100%のため、通常と違う味わいになります。一般的な醤油より旨味が少なく塩味が強い印象なので、うどん・ラーメン・すき焼きなどの醤油を多用するメニューは、まろやかさを出すため味の調整に苦労しました。

それでも「誰も歩いたことのない道だから大変なのは当たり前」と、常にポジティブ思考で笑って乗り越えてきたという飯野さん。

飯野さんの笑顔に惹かれてくる常連客も多いのです。

最近はベジタリアン・ヴィーガンのお客様が増加

                            

<ヴィーガンラーメン 税込1.460円>

訪日外国人の増加に伴って、グルテンフリーT’sキッチンにもベジタリアン、ヴィーガンのお客様が増えてきました。グルテンフリーかつヴィーガンの食事ができる場所というのはますます希少です。

お店のメニューは、餃子・ラーメン・パンケーキ・パスタ・カレーライスなどで、ヴィーガン仕様を選択できます。

タコライスと春巻きは最初からヴィーガン仕様のみの提供です。

人気の焼きそば・お好み焼きなども、リクエストすればヴィーガン仕様にしてくれます。

グローバル企業からの高い評価も


先日、農林水産省主催「フードアクション・ニッポン・アワード2019」が開催され、お店で手作りしているオリジナルラー油「グルテンフリーヴィーガンラー油」がみごと受賞しました。

全国各地の産品を食のプロが発掘するコンテストで、約1,500品のもの応募に対し10社の企業が選出に関わります。その中で、アマゾンジャパン合同会社からこのラー油が選定されたのです。

担当部門トップからは「商品にダイバーシティの可能性を感じた。海外進出も考えての商品に意気を感じ、当社のプラットフォームで支援したい」というコメントがありました。

商品もそうですが、飯野さんの食の多様性や世界に目を向けた姿勢が評価されての受賞となりました。

飯野さんは当初からインターネット販売や海外での展開も視野に入れていましたが、これをきっかけにアマゾンamazonから日本全国で販売する予定です。

受賞したラー油はグルテンフリー醤油と多量の香味野菜で作られ、お客様からの要望によりお店で販売するようになったものです。

ラー油は近年の流行で多種多様なものが出回っていますが、グルテンフリーは意外と見当たりません。ラー油といえば(グルテンフリーの需要が少ないという前提の)日本人やアジア人が主なターゲットだからでしょうか。

しかしお店では、そのラー油がヨーロッパ系のお客様にも大人気で、餃子やラーメンはもちろん、パスタに使用する方も多数います。

また、ラー油だけでなく、手軽なグルテンフリー日本食を開発して世界に届けるという目標があり、世界中からのお客様に安心していただけるように、最近グルテンフリーの国際認証機関「GIG」アジア初の認定も受けました。


「アレルギーがあってもなくても、みんなで楽しく食事できる場所を提供したい」という飯野さんの想いは、ベジウェルの理念とも共通するところです。

これからますますおもしろい展開になりそうな「グルテンフリーT’sキッチン」。

オーナー飯野孝子さん、ありがとうございました。

※記事の内容は取材時点のものであり、変更される可能性があります。来店時には、あらかじめお店にお問い合わせいただくことをお勧めします。

店舗情報

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HANA

HANA

KIJ(クシインスティチュート オブ ジャパン) 公認マクロビオティック インストラクター、栄養士。
料理教室「Rainbow Kitchen 六本木」主宰。

1965年札幌生まれ。
自然と本物の食をこよなく愛す。
30歳の時に突然アレルギー発症して以来、マクロビオティックで心身の調整法を学ぶ。

レッスンは紹介制・単発制・デモンストレーション形式。
料理をしない方、野菜嫌いの方、男性の参加者にも好評。