世界のベジタリアン料理コンペで、TOP8に選ばれた日本人。杉浦仁志シェフインタビュー
更新日:2019/02/15 公開日:2017/09/22
今年5月にミラノで開催された「The Vegetarian Chance(ザ・ベジタリアンチャンス)」。
世界中から名だたる多数の料理人がエントリーするベジ料理のコンペティションで、1人の日本人シェフがTOP8に選ばれて入賞しました。
それがPATINASTELLAの杉浦仁志シェフです。今回は、杉浦シェフの料理への取り組み・想いについてインタビューしました。
最後に杉浦シェフとVegewelがタッグを組んで実施する料理教室の情報がありますので、お見逃しなく!
(追記:杉浦シェフはパティナステラから別の店舗に異動されました)
目次/Contents
日本人でただ1人、世界最高峰のベジ料理コンペに挑む
生地にビーツを練り込んだトルテッリ。同じくビーツのソースをあわせ、アマランサスの葉を添えた、秋の装いをイメージしたアートのような料理。
こちらは、アメリカで約50店舗展開するパティナ・レストラン・グループの海外初進出店PATINASTELLA(パティナステラ)のエグゼクティブシェフ、杉浦シェフによる一品です。
杉浦シェフはベジ料理の世界大会、ザ・ベジタリアンチャンス2017でTOP8シェフを受賞しました。
ザ・ベジタリアンチャンスは今年で4回目、ベジタリアン料理の推進などを目的にイタリアのミラノで開かれた大会です。
ベジ料理を競うなんて?!大会の内容が気になりますね!!調べてみると…
- ダシ、エキスをふくむ動物性の食材を使わない(2皿中、1皿は一部乳製品使用可)
- ニンニク・タマネギを使わない
- オーガニック、もしくはバイオダイナミック農法の食材を使用
- 着色料・合成添加物などを使わない
- その国の伝統的な料理の特徴・オリジナルな味付けを取り入れる
などなど、普通のお料理しかしない人はどうしたらいいんだ?!となってしまいそうなルールの中で腕を競うものです。
審査基準も味だけではなく、料理の独創性、栄養学的なバランスや美しさなどが考慮されます。さらに、「環境の持続可能性」も基準に入っており、さすが最先端の料理コンペティションですね。
杉浦シェフの出場のきっかけは友人であり、尊敬する奥田政行シェフに声をかけられたことでした。奥田シェフは山形のレストラン、アル・ケッチァーノを創業され、地元の在来野菜を使って地方再生を行っている方です。奥田シェフも、同じ大会で過去に受賞しています。
自分がどこまで世界で通用するのか確かめたかった気持ちがあり、出場に対してネガティヴな思いはなかったそうです。
パティナ・レストラン・グループの創業者兼総料理長のジョアキム・スプリチャル氏の元で、カルフォルニア・クイジーヌを習得した杉浦シェフ(シェフの詳しい経歴は下記参照)。
海外の食文化では、ベジタリアン料理はいたって普通であり、コースメニューも多かったそう。カボチャの種を使ってダシを取るという、マクロビオティックの一物全体にもつながる料理もあったとか。
その経験から、ベジ料理ということに特に動じることなく自信を持って取り組めたとシェフは言います。
日本を感じるベジタリアン料理はどうやって生まれたのか
その国の特徴を出すというルールがある中、杉浦シェフがこだわったことは「ダシ」。お寿司屋さんの息子で、元々は和食から料理をスタートし、創作和食に進んだ杉浦シェフ。その経験があるからこそできるダシの作り込みです。
海外のベジタリアン料理文化を肌で感じた経験と、杉浦シェフのルーツである和食を融合させ、これまでにないベジ料理を生み出します。
「精進料理のエッセンスを昔と同じようにではなく、現代的に見せることが自分にできる料理表現だと思いましたね。」
こちらが受賞したお料理、「Bouquet(ブーケ)」です。
ザ・ベジタリアンチャンスのコンセプト「野菜の素晴らしさを伝える活動」に対する感謝の気持ちが、名前のブーケ(お祝いの花束)に込められています。テーブルに運ばれてきたら、あまりの美しさに感動してしばらく眺めてしまいそう。
日本の精進料理に発想を得て、ダシに用いたのは椎茸。その旨みを最大に引き出し、麹も使用したオリジナルの新和食料理です。野菜は柚子オイルでマリネし、ニンジン・ダイコンに豆腐・ゴマ・木の芽などを加えました。
世界の料理コンペで感じた、海外のベジタリアン料理に対する意識
かぼちゃのアニョロッティ。
杉浦シェフに受賞時の感想を聞くと、
「素直に嬉しいですね。海外の料理人たちの方が、ベジの人達やベジタリアン料理に対する意織がとても高いと感じたんです。皿の表現力とか味の作り方も、オリジナリティをすごく感じました。」
杉浦シェフが感じた、海外のシェフのベジタリアン料理に対する意識。日本のベジ料理でよくある、ただお肉・魚を抜いた料理や、肉や卵に見立てるという、”モドキ”料理ではないことがお話から伝わってきます。
あくまでも、野菜そのものを美味しく食べる料理としてのベジタリアン料理という意識が、海外の方がはるかに高いのでしょう。精進料理に関しても、杉浦シェフよりも知識の豊富な海外のシェフがいるのだとか。
「日本のベジタリアンは健康やおしゃれから始まっていて、あくまで個人の食生活というイメージがあります。それに比べて、海外ではベジタリアンは食文化として社会の中に浸透している。受賞後に思ったことはそれが一番大きいかもしれないです。」
杉浦シェフだからできる、ベジ料理を通した国際交流
インタビュー中、ビーガンの味付けやベジスイーツの作り方をライターに質問し、熱心に耳を傾ける杉浦シェフ。とても世界のコンテストで入賞した人とは思えない謙虚さが見える一面です。
創作和食の時から、料理を通じて世界と交流したいと思っていた杉浦シェフ。ニューヨークの国連大使館で安倍首相が開いたレセプションで野菜ずしを披露したことも、その想いが実現した形です。
杉浦シェフがエグゼクティブシェフを務めるPATINASTELLA(パティナステラ)。
今回のコンペティションを経て、日本と世界のベジタリアンの食文化をつなげたいと、新境地の挑戦に意欲を見せる杉浦シェフ。
”磨きがかかる”という意味が込められた、青銅を表すPATINA。時代が変わっても愛され、ゲストとたくさん交流が持てるレストランにしていきたいと話してくれました。
シェフのネクストステージへの想いに、「美味しいビーガン料理がたくさん広がりますように」という私の夢もついつい重ねてしまいました。
杉浦シェフ×Vegewelの料理教室
杉浦シェフとVegewelがタッグを組んだ料理教室を開催します!
収穫の秋。ハロウィンらしく、かぼちゃを中心とした秋の味覚を使った前菜・メイン・デザートの3品を、世界で活躍するシェフから直接学べる貴重なチャンスです。
和食職人としての経験を積んだ杉浦シェフだからこその、繊細で美しいハロウィン料理と盛り付けの技を学んでみませんか?
詳細・申込は以下のページから。
https://vegewel.com/ja/style/patinastella-event/
プロフィール
【杉浦仁志】
東京・大阪のレストランで研鑽を重ねた後、2009年に渡米。全米約50店のレストランを展開するパティナレストラン創業者兼総料理長のジョアキム・スプリチャルの元で学ぶ。
エミー賞授賞式、ハリウッドボウル、NYティファニー本店でのケータリングなど数々のイベントにも参加。2013年、パティナグループの海外初進出店「PATINASTELLA」のエグゼクティブシェフに就任。
NYの国際連合日本政府代表部大使公邸で開催された「和食(WASHOKU)」のレセプションイベントにて、2014・2015年の2年連続で日本代表シェフとして参加してVIPをもてなす。
2017年5月ミラノで開催されたThe Vegetarian Chance(ザ・ベジタリアンチャンス)において、世界中から集まった多数のシェフの中からTOP8に選出される。更に活躍の場を拡げるべく、国内外で食の素晴らしさを伝える。
【PATINASTELLA パティナステラ】
全米で約50店舗のスペシャリティレストランを展開するパティナ・レストラン・グループの海外初進出の店舗。さまざまな食文化を融合した”究極のモダンなアメリカン・クイジーヌ”をテーマに、アメリカ各地などから厳選した旬の食材の料理を提供している。
https://patinastella.com/sp/index.php
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