「マクロビオティックはユニバーサルな食事です。」体に良い食事から平和な世界を。西邨マユミ先生インタビュー≪後編≫
世界の歌姫マドンナや、ブラッド・ピット、ミランダ・カーといったセレブリティにパーソナル・シェフとしてマクロビオティックの食事を提供している西邨マユミ先生。
世界中でマクロビオティックを伝え続けるマユミ先生の思いをお伺いするインタビュー。
前編では導かれるようにマクロビオティックと出会ったその半生をお伝えしました。
後編ではアラスカを拠点とする海外での活動から見た日本の食、現代の食生活についてのマユミ先生の想いをお伺いします。
≪前編≫「大切な命を作るのは、食事しかありません。」一生続けられる食事・マクロビオティックを世界で伝え続ける、西邨(にしむら)マユミ先生インタビュー
目次/Contents
なぜアラスカが拠点?世界の視点でみる食事の事情
アラスカのコミニュティで一緒に餃子を作るマユミ先生。みなさんとっても楽しそう。
現在マユミ先生は、ヨーロッパ・アメリカを始めとした世界中で食のイベントやシェフ、パーソナル・シェフをしています。
「私にとってマドンナのパーソナル・シェフの仕事は特殊です。
いろんなケースがありますが、ご自身や家族が料理をするのがマクロビオティックの基本ですので、パーソナル・シェフの仕事も目安として3ヶ月間を最長としています。
私を頼ってしまうのではなく、一緒にスーパーに行き、買い物の仕方から始め、ご自身で作れるように教えますよ。 」
世界で活躍するマユミ先生の目から、世界の食を取り巻く環境はどういう風に見えているのでしょうか。
「アメリカは大きな国なのでひとくくりには言えないと思うんです。ただ、 オーガニックは本当に根付いてきたなと。貧しいといわれる地域でもスーパーにオーガニックのものが並んでいます。」
今、マユミ先生が夏の間に主な拠点としているのはなんとアラスカ!
きっかけとなったのは97年にアラスカから久司先生の所にたまたま来た17、8才の男の子。味噌も豆腐も作れる彼に、なんでそんなに知ってるんだ!と、びっくりしたマユミ先生はすぐさまアラスカへ。
そこには30年近く、3世代に渡り菜食の文化が続き、自給自足という形で助け合いながら暮らしているコミュニティの姿がありました。豆腐・セイタン・テンペに、味噌・醤油も作られています。
その姿に、マユミ先生は大きな感動と、マクロビオティックの可能性を感じました。
「マクロビオティックはユニバーサルだと思います。どこの国でも食べられる状況を作ることができます。発酵食品はどこでもできる。 塩があれば発酵調味料だってできる。
日本は似たような物が安く手に入り、そうするとイミテーションばかりになってしまう。イミテーションは似たようなものであって、同じではないですよね。本当の食品の作り方を若い方が覚えていく必要があります。
二十数年前、アメリカで大量生産ではなくきちんとした製法で味噌や発酵食品を作り始めた会社は、今はオーガニックの市場でとても大きくなっています。
日本にはなかなか聞こえてこないけど、そういう事実を知ってほしいです。日本はまだまだ遅れています。」
オーガニックやビーガンの業界は儲からないというイメージはなかなか変わりませんが、本当にいいものを伝えていけば成果は必ず出る、ということを教えてくれているような気がしますね。
日本の次世代と、次世代を育てる親となる方へのメッセージ。
日本人よりも海外の人の方がローフードやビーガンにはまる人が多いのは、もともとが肉食の文化だからとマユミ先生は言います。
「ダイエット目的の人も多く、短期間でやめてしまう人もいます。反対にマクロビオティックは一生続けられる食事なんです。」
アラスカで3世代に渡り続く、体に良い食事を求めていく環境がある一方で、日本では子供を取り巻く食事の問題が度々取り沙汰されています。
女性の社会進出が当たり前となりつつある中で、子育てだけに時間をかけられないママも増えています。そのような状況を、シングルマザーとして仕事と子育てを両立してきたマユミ先生はどう感じているのでしょうか。
「みんな、時間が無い!で片付けてしまうんですよね。わかりますよ、私もそうだったので。
ただ、何が一番大切なのかを考えた時に命より大切なものはないんですね。その命を作るものは食事以外ないんです。
一食でも、お家で体に良い食事を食べることをして欲しいです。朝だけでもいい。玄米といいお味噌のお味噌汁と少しとか。そんなんでいいんですか?って言われるけど、シンプルでいいんです。
何で毎日がごちそうじゃないといけないのか。質素な食べ方をしろというわけではありませんが、いいものを使って、美味しいものを食べるのが一番の贅沢だと思ってます。
体に良い食事をすることが"お金がかかる"というのであれば、その反対側にあるもの、病気や気分の落ちこみ、短気といったいろんなものがすでに目の前にあることを考えてみて下さい。それを変えてくことが可能なんですよ。」
昆布・しいたけで出汁を取り料理をすることも、マユミ先生の料理では簡単にできてしまう。
子育て中の食育もそうですが、インターネットで溢れる膨大な食の情報に、何が正しいか、何を選択すればいいのか迷う経験をした方も多いのではないでしょうか。
まだまだ認知度が低かった時代に、様々な反対もある中で、自らが良いと思うマクロビオティックを伝え続けてきたマユミ先生。自分の健康に対してどう情報を選び、判断していけばいいのかをお伺いしました。
「絶対食べなくちゃいけないものはありません。逆に何でも食べられますよね。常識で考えないことです。新しい食材も自分で試して考えて、自分の心の声を掴むことがポイントです。
マクロビオティックでいえば、人間は歯を見ると、穀物を食べる歯がたくさんあるということ。そして、進化の過程ではできれば人間より遠い食べ物を食べた方がいいという理論から、人間は菜食であるとしています。
私はそれを、桜沢先生や久司先生の本で幸運にも20代で学ぶことができました。
情報を判断することは難しいことではなく、まず本を読むことです。情報がたくさんあって、中にはいいかげんなものもあるので情報の出どころを確かめる。
長く続けている人の情報は確かです。情報も一部分ではなく、全体性を見るのがマクロビオティックです。」
マユミ先生が出会った本から、皆さんにおススメの本を教えていただきました。
桜沢先生
「新食養療法」
「東洋医学の哲学」
どういう考え方をして体や健康を見ていくかが書かれています。
久司先生
「マクロビオティック健康法」
「ワンピースフルワールド」
食事だけでなく、どういう風に物事を考えていくか。
「病気に向き合いたい方には久司先生の「マクロバイオティック」がいいと思います。」
「アラカン」とは思えないマユミ先生がエネルギッシュな秘訣とは?
今、還暦に近い方のことを「アラカン」と呼ぶのだそうです。
いつもエネルギッシュなマユミ先生、エネルギーの源は食事だけでしょうか?何か秘密があるのでは?と思いお伺いすると、
「好きなことしかやってないですね!笑
コミュニティで気の合う人たちと生活することもそうかな。
くよくよしないです。もともと楽天的なんですけどね。歳を取ってきたけど一生懸命先のことを悩んでも仕方ないので、早く寝ます。
あとは物を持たないことですね。持たないおかげで自由にできた。自分がどこを一番大事にしたいかを決め、自分のハッピーは何かを自分に聞いてみて欲しいです。
そして、好きなことは健康ではないとできないです。マクロビオティックをみんながやれば良い、とは思わない。けど、こういう生き方があるというのを知って楽になる人がいるのであれば、と思って伝えています。」
一人一人が健康になれば、国が健康になり、そして世界が健康と平和になります、とおっしゃるマユミ先生。
日々の体に良い食事の積み重ねが、世界平和につながっていく。目に見えなくてもマクロ(大きな)の視点で見るからこそわかることだと感じました。
西邨マユミ先生
マクロビオティック・ヘルス・コーチ/パーソナル・シェフ/ORGANIC CARTEL 最高顧問
日本パーソナルシェフ協会 顧問/一般社団法人オーガニックヴィレッジジャパン(OVJ) アドバイザー
1982年に単身渡米、マクロビオティックの世界的権威である久司道夫氏に師事。
その後、アメリカ マサチューセッツ州 クシ インスティテュート ベケット校の設立に参加し、同校の料理主任および料理講師に就任。
同時に、がん患者や子どものために食事を作る経験を通して、また働く女性でも無理なく続けられるよう、時代のニーズに合ったマクロビオティックのあり方を提唱・実践している。
2001年より通算10年間にわたり歌手マドンナ一家のパーソナル・シェフを務め、ワールドツアーに参加。
その他にもブラッド・ピット、ミランダ・カー、スティング、ガイ・リッチー、ゴア元副大統領など多くのセレブリティに食事を提供してきた。
現在は国内外においてマクロビオティック・コーチ、パーソナル・シェフとして精力的に活動中。
2011年にはキューバのフィンレイ・インスティテュート(ワクチン研究所)等でマクロビオティック指導をする。有機農業、海洋調査などキューバ政府が推進するマクロビオティック振興のために現地調査に協力。
誰でも実践可能な「プチマクロ」を提唱。世界各国で活動している。
現在は国内外においてマクロビオティック・ヘルス・コーチ、パーソナル・シェフとして活動中。
http://www.mayuminishimura.com/
https://www.facebook.com/mayumilab/
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