地域に根ざした憩いの古民家カフェ いな暮らし(東京・稲城市)

南武線の矢野口駅から徒歩7分のところにある、多摩川にほど近い緑の多い住宅地に見えてくるのは、石塀に囲まれた古民家。

ここには、地域に根ざして、癒しのごはんと憩いの場を提供するヴィーガンカフェの「いな暮らし」があります。

住宅地に現れる黒板にチョークで書かれた「いな暮らし」というちっちゃな看板。

「いな暮らし」の店名の由来は、 ”稲城の暮らし”だそう。「たべよう・はなそう・つくろう」をテーマにした昭和の古民家ヴィーガン・カフェです。

以前、同店が川崎の柿生で開催されていたベジ&フォークマーケットに出店していて、お弁当やおやつがほっこり美味しかったことから、いつか行ってみたい……!と思っていました。

念願叶い、新緑の美しい季節にお邪魔してきました。

料理が出てくるのを待つ時間も楽しめる

円卓のちゃぶ台を囲む座布団に腰掛けると、サーブされるのは、常温のノンカフェインの三年番茶。

身体のことを考えて提供してくれるお茶を飲みながら、縁側越しに庭を眺めたり、店内の本棚に並ぶ素敵な本を自由に読んだりしながら、そよ吹く風を感じるひととき。料理を待つ間もそんな時間がなんとも心地よく感じられます。

とくに、本のセレクトのセンスにも心躍ります。

ベビーベッドや、子ども用の遊び場があって、ベビーフレンドリーなのが手に取れます。

ちょうどこの日は、庭で、神奈川の自然農、自然栽培の農家さんたちの野菜を「その町のほんの小さな八百屋 まる然」が出張販売していました。

地元の方も次々と野菜を買いに来ていて、笑顔でやりとりする光景もあったかくて、なんだかほっこり。


ていねいに作られた本当においしいごはん

「いな暮らし」では、日替わりの定食、スイーツやドリンクがいただけます。ご覧のように、目にも鮮やかな本日の定食に、まずは目を輝かせること間違いありません……!

ガラスの器に入ったきれいな薔薇色のスープは、なんとビーツのミネストローネ。なんて色鮮やかで美しいんでしょう。そして味も抜群に美味しいのです。

この日のメインのおかずは、車麩のカツの豆腐タルタルのせ、旬の花ズッキーニとかぶのグリルにルッコラのジェノベーゼソースかけ。

ほかに、ブロッコリーときのこのペペロンチーノ、ひじきとれんこんの黒酢煮、小松菜とにんじんの胡麻和え、春雨のタイ風サラダ。

ひとつひとつていねいに作られていて、優しさとおいしさが沁み渡ります。味わうことに集中したくなるので、自然とよく噛んで食べたくなり、無言で瞑想状態に。

ごはん茶碗によそられたごはんは、玄米と雑穀入り分づき米のハーフ&ハーフなのも嬉しいかぎり。ひと口ごとにしみじみおいしく、心身が満たされます。

同店自慢のスイーツである、自家製の甘酒豆乳アイスのSpecialパフェ 抹茶とあんこ(850円)。コースターやカトラリー置きなどもかわいくて嬉しくなってしまいます。

こちらには自家製のあんこと抹茶タルトクリームを凍らせたもの、あんこ入りのグラノーラも入っていて、トッピングには玄米ぽんせんがのっています。

こちらはキャロットケーキに自家製豆乳クリームのせ(560円)。にんじんにスパイスとナッツの塩梅も相性ばっちり。

こちらはクッキー(1つ160円~)。みたらし団子クッキーがとってもかわいい。

みんなが楽しめる地域の交流の場として機能したい

オーナーの一人であるお母様の鈴木ともみさんは、この日は半農の二拠点生活をされている長野の佐久に行っているとのことで、もう一人のオーナーのお嬢さんの鈴木萌さんにお話をうかがいました。

――このお店をはじめようとしたきっかけは?

「私はもともと看護を学んでいました。妹が卵乳製品アレルギーであったことから、なるべくみんなで一緒に食べられるように、植物性のごはんを作るようになりました。

地域の交流の場をつくりたい、そんな思いで、あらゆる年代、さまざまな立場の人たちが一緒に過ごせる居心地のいい場を作りたいと、母も私も思っていました。

2011年の震災をきっかけに、 自宅のガレージにパラソルを立て、地元農家さんの野菜や天然酵母のパンなどを並べたマルシェからスタートしました。

その後、ご縁あって、この古民家との出会いから、生産者さんやお客様が交流できるスタイルのカフェを2014年にオープンしました。

長野の佐久穂の有機農家さんとの出会いもあり、母は稲城と行ったり来たりの生活になっています」(オーナーの鈴木萌さん)

――料理のこだわりは?

「なるべく多摩地域の有機農家さんの野菜を使い、お肉が好きな人でも満足のいくものを作っています。

野菜は八王子のFIOという無農薬農家さんのもの、お米は糸島のお米、雑穀は谷川農園さんのものを使っています。

素材のおいしさと力を生かしながら、五味(甘味、酸味、塩味、辛味、うま味)のバランスを考えた料理を提供するようにしています」(オーナーの鈴木萌さん)

――看護師時代からカフェを開くことに興味があったのですか?

「学生時代から私は、街にある美容院や本屋、カフェなどでの交流が自分の癒しや発見の場になっていて、そこで生まれる人との交流の大切さにも気づきました。

病院という場の役割とは別に、日々の食や暮らしを見つめるきっかけになれたらと思い、みんなで一緒に食べられるごはんとして、自然食やヴィーガン食、スイーツを提供したいと考えました。そして色々なイベントや集い、ワークショップなどを開催するようになりました」(オーナーの鈴木萌さん)

もうひとつのおうちでありたい

ちゃぶ台、襖、欄間、縁側。古き良き日本の民家にある風景。日本家屋のよさは、その風通しと呼吸する家であること。

コンクリートの密閉空間、窓の開かないオフィスビル。そんな中で息苦しさを感じていた近年、コロナで換気、通気と言われるようになり、改めて天然素材の生きた日本家屋の素晴らしさを見直す人も多いと思います。

靴を脱いで揃えて上がると、足裏に感じる木の感触。庭を眺める広々、居心地のよい空間にほっとするのは、日本人の魂に根ざした感覚なのでしょう。

きっと誰もが、その懐かしい感覚や、旬の食材を生かしたごはんのおいしさに生き返るに違いありません。

余談ですが、たまたま隣のテーブルにいた、サイクルウェアに身を包んだスポーティなスタイルの男性客。

緊急事態宣言による営業自粛で時間ができたため、自転車でナチュラルカフェ巡りをされている銀座の寿司職人さんでした。

プロの料理人の方も、「いな暮らしさんの料理は本当に美味しい」と話されていました。ちなみにこの方は、自然食をとり入れて、30kgも痩せたのだそう。

仕事として提供するお寿司は白米、砂糖、塩に食物繊維のない魚。

それは糖尿病や高血圧にもよくないという矛盾を抱えていたそうです。自身の体質改善の経験も伝えつつ、いつかヴィーガンを取り入れて、健康のことを考えた料理を提供する店をやりたいと夢を語ってくれました。

パンデミックを機に食やライフスタイルを見直すのにも、「いな暮らし」に行ってみるのもいいかもしれません。

いな暮らし
住所:東京都稲城市押立1744−46
営業時間:9:00〜17:00
月・木・日曜定休
※臨時休業もあるため、最新情報はホームページやInstagram(@inagurashi)をご確認ください。

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千葉芽弓/Miyumi Chiba

千葉芽弓/Miyumi Chiba

千葉芽弓(Miyumi Chiba)
ベジフードプロデューサー
Vegewel プロデューサー
Tokyo Smile Veggies 主宰

日本に根付いた伝統食を生かしたベジ・ヴィーガン食から健康や環境保護などの社会問題の解決や、ダイバーシティとしての真のおもてなしを目指し、メニューコンサルタント・製品開発・食育を行う。