アメリカで再発見、みりんの魅力~西邨マユミのプチマクロ生活~
こんにちは、マクロビオティック・ヘルス・コーチの西邨マユミ(にしむら・まゆみ)です。
10月に入って少しずつ秋の気配が強まってきましたね。
私は暑い夏を避けて秋に日本に戻るようにしているのですが、少しずつ冬に向かうこの時期は、過ごしやすく大好きな季節でもあります。
目次/Contents
みりんという調味料
私は春と秋にそれぞれ1か月ほど日本で過ごすのですが、今年は久しぶりに「みりんを使ったイベントをやりませんか?」とお声がけいただきました。
以前みりんのレシピ本(「三河みりんで味わうプチマクロ料理」キラジェンヌ、2013年)を出すほど、みりんは私のレシピに登場します。
そんなみりんに出会ったのは、日本ではなく、20代で渡ったアメリカで。アメリカで暮らし始めた初めのころ、日本の雑貨や書籍を扱うお店でアルバイトをしていた時に「いいビネガー」として売られていたのがみりんでした。
みりんはご存じのようにアルコール度数も高いので、「お酒」の扱いなのですが、そのお店、酒類販売のライセンスを持っていなかったので、「ビネガー」として販売していたんですよね。つまり密売(笑)。
でも買いに来るアメリカ人は、みりんが「お酒」だと認識していました。
私が渡米した1980年代は、カウンターカルチャーを追求する先鋭的な人たちの中では、大量生産ではない、本当に良いものを求める風潮が強かったんですが、穀物や海藻、日本の昔ながらの製法で作られたお醤油やお味噌と一緒に、みりんも求められていたんですね。
ただ当時のアメリカでは、みりんは手に入れるのが難しかったことから、調味料として手軽に使うのではなく、パーティなどハレの日に使うものでした。
マクロビオティック料理では、精製された白砂糖ではなく、甘味としては甜菜糖や米飴、メープルシロップを使いますが、みりんはその上等バージョンとして使われていました。
また、みりんは醸造調味料ですから、他の甘味料とは違う甘みを持つという話もアメリカのマクロビオティック料理の教室で学びました。
私自身はアメリカに来るまでみりんを調味料として使ったことがなかったので、アメリカの学校でのみりんについての講義が、人生初の、みりんとの出会いだったとも言えます。
だからこそ、日本で暮らす人よりも、みりんの有難みはより強かったのではないかと思います。
みりんの強み
私はこれまで、アメリカでパーソナルシェフのお仕事を続けてきましたが、みりんは手放せない調味料のひとつ。
仕事ではマクロビオティック料理だけではなく、時と場合によってはお魚を使ったお料理もしますが、煮崩れを防いだり、おいしそうな照りを付けたり、臭みを消す効果があるみりんは、本当に貴重な調味料。
ちなみに煮崩れしないという点については、実際にジャガイモの煮っころがしにみりんを入れるのと入れないので比べてみるとよくわかります。みりんを入れると煮崩れしないんです。これ、ぜひご自分でも試してくださいね。
みりんの持つほんのりとした甘みは、みりんだけではなく、いろいろな食材と合わせることでただの「甘味」ではない「うま味」に変化します。
マクロビオティックという概念を提唱した「桜沢一如」が好んだレシピに「ゴボウの天ぷら重ね焼き」があるのですが、これはゴボウを天ぷらにした後、薄い半月切りにした玉ねぎと重ね合わせ、そこに醤油と昆布出汁のみで作ったソースをかけてオーブンで焼き上げています。
私のアレンジは、ソースにみりんを加える事で、マクロビオティック料理を知らない方にも、喜んで頂ける一品になっています。
日本だと、ソースに砂糖を多用することで甘い味付けになりがちなのですが、砂糖ではなくみりんを使用することで、すっきりした甘さに仕上がって美味しいし、身体にも良いレシピになります。
西洋料理でもみりんを
素材が持つ甘みは塩で引き出すこともできますが、甘みを加えたいときは、みりんは本当に便利です。
和食以外の料理でもみりんを使うことで、過度な甘みになりすぎない、ほんのりとした甘みを楽しむことができます。
私たちにはおなじみの味噌や醤油も、外国人にとってはその匂いや味に「癖がある」と苦手な人もいます。
醤油の中には小麦が入っているので、グルテンフリーな人には難しい場合もありますが、その点お米と米麹だけで作られたみりんならひと安心。
和食の煮物や魚の煮つけといった定番料理はもちろんですが、洋食でも、またエスニック料理でも、みりんは大活躍。例えばタイカレーミックスにみりんを加えると、タイカレー特有の辛みのカドが取れてまろやかな味わいに。
お酒として使えるみりん
モヒート
みりんは、江戸時代には女性に親しまれたお酒だったそうです。
今もお正月に欠かせない「お屠蘇(とそ)」は、みりんで作られているって知っていましたか?「お屠蘇」はこれから始まる一年を健康に過ごすことができるように、という願いから、普段お酒を飲まない若者や甘党の方などあらゆる人が口にします。
だからこそ、口当たりの良いみりんが「お屠蘇」の材料になっているのです。
と考えると、みりんは調味料としてだけではなく、「もち米のリキュール」=お酒として楽しむこともできます。
私はアメリカでマクロビオティック料理の紹介をするとき、みりんを「日本のクッキング・ワイン」と説明することがあるんですが、この時に「そのまま飲んでも甘くておいしいけど、砂糖は入っていない」というと、みんな興味津々で「ひと口舐めたい!」と言ってきます。
「飲んでもおいしいみりん」というのは、もちろん添加物など入っていない、昔ながらの製法で作られている必要がありますが、本物のみりんを使うと、調味料としてだけだったら本当にもったいない。
例えばラムをベースに作られる人気のカクテルモヒートも、ラムの代わりにみりんを使って、砂糖ではなくメープルシロップ、それにライムジュースをつぶしたミントの葉を混ぜて、最後に静かにソーダ水を注げば、簡単みりんモヒートの出来上がり。
みりんを氷、メープルシロップ、イチゴ、レモン汁、ライム汁、ラム酒、ペリエと一緒にミキサーにかければ、お手軽なストロベリーダイキリまで自宅で作ることができるんですよ。
調味料としてだけではなく、ぜひみりんそのものを楽しむレシピもチャレンジしてくださいね。
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