「ヴィーガンが一番難しくて面白い」フレンチシェフの絶品ベジ。LONGING HOUSE(ロンギングハウス)加藤俊之シェフインタビュー。

更新日:2019/02/02 公開日:2018/05/05

軽井沢のリゾートホテルを始め、ヴィーガンカフェ「野菜がおいしいカフェLONGING HOUSE(ロンギングハウス)」など、表参道に2店舗を構えるロンギングハウス。

自然の素材を生かし、ココロもカラダも元気にするレストランとして、たびたびメディアでも取り上げられています。

その料理を監修するのが加藤俊之(かとうとしゆき)シェフです。「バリバリのフレンチシェフだった」という加藤シェフが、どうしてヴィーガン料理を手がけるようになったのか。シェフが注目する調理法と共にご紹介します。

野菜がおいしいカフェの場所や詳細な情報はこちら

表参道の喧騒から離れた隠れ家のようなスポット。


1981年に創業した軽井沢ロンギングハウス。地産地消の野菜を始め、全国のこだわりの農家から届いたオーガニック野菜の料理を堪能できるリゾートとして、全国からお客様が訪れています。

こだわりの料理は都内・表参道でも頂くことができ、その中の一つ「野菜がおいしいカフェロンギングハウス」はヴィーガンメニュー専門のカフェとして、ベジタリアンだけでなく健康志向の方も集う人気店となっています。

グルテンフリーも対応可能です。


時代に流されない、古き良き英国調インテリアは上質な癒し空間です。テレビにもたびたび登場し、美味しい野菜料理をいただけるカフェとして紹介されています。


オーガニックのサラダビュッフェ(単品1,500円、お食事と共に注文時950円。共に税抜)は16時まで利用でき、新鮮な野菜でエネルギーチャージができます。

ランチタイムには、サラダビュッフェにパンやメインディッシュがついたお得なメニューもあります。

こだわりの野菜は、料理長で野菜ソムリエの加藤シェフが全国を回って仕入れたもの。ご自身で栽培方法や味を確かめ、信頼を築いた農家さんから届けられています。


メインメニューで一番人気。「ソイミートのベジチーズハンバーグ(1,420円税抜)」はとてもジューシー、かつふっくらでお肉を使っていないとは思えません。

中でチーズがトロッととろけ、ソイミートと絡まるのがたまりません。ヴィーガン料理が初めての友人と食べに行きましたが、これならまた食べに行きたいと言うほど絶賛。


「ソイミートの黒酢あんかけ(1,420円税抜)」。ボリュームがありながらも、生姜でさっぱり仕上げた黒酢あんで、心地よい満腹感を感じられます。

進化を続けるヴィーガンスイーツを食べたいならここ!


野菜がおいしいカフェロンギングハウスは、お食事だけでなくスイーツが充実しているので、ティータイムもオススメ!

写真は「豆乳ムースのふわふわティラミス(650円税抜)」。ティラミスはヴィーガンスイーツの定番と思っている方、このティラミスはワンランク上です。


用いられている調理法は「エスプーマ」という液状の食品を泡状にする技術。一般的にエスプーマは、ゼラチンとフルーツピュレ、グラニュー糖や卵白を入れ、亜酸化窒素ガスを封入してムース状にします。

加藤シェフはベジタブルゼラチンを使用し、調理法を工夫することでヴィーガンエスプーマを作ることに成功しました。

豆乳の重さや豆臭さを感じさせない非常に滑らかな舌触りのムースは、一度食べるとやみつきになります。


真空調理を利用したローのフルーツコンポートも作るなど、次々と新しいことにチャレンジする加藤シェフ。

マクロビオティック・ローフード・ベジタリアンスイーツなどの技術と、ご自身が培ってきた料理の科学的な知識、フランス菓子のテクニックを融合させることで、全く新しいヴィーガンスイーツが生まれています。

プロの料理人に伝えたい、ヴィーガン料理こそ一番技術が難しく面白い!


ロンギングハウスの料理長を務める加藤シェフ。

六本木のフレンチ・小笠原伯爵邸の立ち上げに携わり、青山ラピュタガーデンなどでも腕をふるった、「バリバリの」フレンチシェフです。

20代後半には5年間ほど、フランス・アメリカ・スウェーデン・アジアの各国でフレンチの修行をしていたそう。

当時を振り返り、加藤シェフはこう言います。

「こんな貴重で珍しい素材があるんだ!こんな凄い調理法があるんだ、すごいだろう!と、お客様を驚かすことが全てだったんですよね。僕達料理人に多いんですが、美味しければ栄養学・健康的な観点はおろそかにしてしまうこともありました。」

43歳の時に高級ホテルの立ち上げに関わった屋久島を訪れて、初めて地方で働くことになった加藤シェフ。農家さんを訪ねて採れたての野菜を使ったり、ご自身でも野菜を作っていたそうです。


地で採れたものを新鮮に、シンプルな調理法で出して喜んでもらうということがやっと楽しくなってきた日々の中で、導かれるように一冊の本と出会います。

なぜかホテルのライブラリにあった、ミス・ユニバースの栄養指導をしていたエリカ・アンギャルの本「世界一の美女になるダイエット」。

ダイエットというよりは健康についての本だと感じながら読み進め、ヴィーガン・スーパーフードってなんだ、面白いなと感じたそうです。

そんな時、外国人のベジタリアンカップルがホテルを訪れました。

対応する上で自身の料理を見つめ直したところ、もともと野菜好きで、ドレッシングもヴィーガン。さらに、野菜のブイヨンにもこだわっていたことがわかり、あっという間に13品のコース料理ができたそうです。


「二人はすごく感動してくれました。『こんな美味しいものは食べたことがない、ベジタリアンというだけで歓迎されないのに。ありがとう』と。

どんなに凄い料理をしても、シェフをしていた25年間でこんな喜ばれ方はしたことがなかったですね。

‘’この自分の持っている力・今まで培ってきた技術を全部ヴィーガンに向けたら、面白いものができるんじゃないか。食のことで困っている人がこんなにいるならやってみたい’‘

そう思ったのが今から7年前です。」(加藤シェフ)

ロンギングハウスの料理長として迎えられてから、ホテル内で食材の知識の共有やメニューの理解を得ることはスムーズではありませんでした。

しかし、今では野菜がおいしいカフェロンギングハウスはヴィーガン専門カフェにリニューアル。軽井沢のコース料理を始め、その他のロンギングハウス全店でもヴィーガン・グルテンフリー対応をしています。(要予約)


シェフが新たに取り組んでいるのが真空ミキサーを使った調理法。ローフードの知識を元に、いかに酵素を壊さず、新鮮な美味しさをお客様に届けることができるかを追求しています。

「真空グリーンスムージー(Mサイズ950円、Lサイズ1,500円。共に税抜。テイクアウト可)」は切りたてのりんごのさわやかな香りがふわっと鼻に抜けていきます。

りんごは本来なら、切ってすぐ酸化して臭いが変わってしまうのでこれには驚きです。


今までの経験をベースにしながら、さらなる高みを目指してチャレンジし続ける加藤シェフ。

料理人としての視点でみたヴィーガン料理についてこう語ってくれました。

「フランス料理は味の積み重ね・足し算のテクニックです。それに対してヴィーガンの料理は引き算のテクニック。

旨味で使えるのは、グルタミン酸・グアニル酸。動物性食材に含まれるイノシン酸が使えないと途端に料理人はやりたくなくなる。一般的な料理から見ると、’‘飛車角落ちの料理’’になってしまうわけです。

味・旨味成分の構築をわかった上で引き算の料理をすることで、みんなが満足してくれる料理になる。最初から足し算の料理を知らない人には難しいかもしれません。

ヴィーガンに関わらず、料理の塩梅は『甘み・塩み・酸味』で決まります。この味の構築が上手にできるシェフは美味しい。技術があってもこれができないとチグハグになってしまうんです。

また、いい素材をシンプルな調理法で美味しく料理するためには、野菜は核になるので、オーガニック野菜は必需品だと思っています。味に嘘はつけないので。」(加藤シェフ)


ロンギングハウスで勤めてから、加藤シェフは自ら全国を回って食材を探しに行きました。

最初のうちは、軽井沢から静岡や北海道まで足を運んでも、門前払いをくらうこともあったそうです。

そこまでして食材にこだわり、ヴィーガンに真剣に向き合う姿勢から生まれる料理には、加藤シェフにしか出せない美味しさがあります。ファンが多いのも納得です。


加藤シェフにはどのような新しい料理の世界が見えているのでしょうか。

「シェフ達に伝えたいです。食の健康が求められてる時代の中で、ヴィーガンにはまだまだ知らない世界がいっぱいある。ローフードだって混ぜるだけでこんなに美味しいんだっていう驚きがあります。

料理人って人を生かすも殺すもできるじゃないですか。こういう職業についたからには、料理を食べた人に健康になってもらいたいですね。


ヴィーガンの美味しさと一般的な料理の美味しさは全く違うものなんです。酵素も生きてて、血糖値も上がらない。体全体からくる、あったかい幸せの美味しさなんです。

美味しさを追求しすぎて、体に負担がかかったり、もっともっとと渇望する美味しさとは違う。美食家と言われる方達にはそういうところも知ってもらいたいです。」(加藤シェフ)

加藤シェフは東京と軽井沢を毎月行き来しています。これからの行楽シーズンには軽井沢ロンギングハウスに足を運んで、リラックスタイムを過ごすのもオススメですよ!

【ロンギングハウス】
https://www.longinghouse.com/
※メニューについて記事で紹介したメニューは「野菜がおいしいカフェロンギングハウス」のものです。他のロンギングハウスでのヴィーガンメニューは要予約。

※記事の内容は取材時点のものであり、変更される可能性があります。来店時には、あらかじめお店にお問い合わせいただくことをお勧めします。

店舗情報

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岩田 絵弥曄 / Emika Iwata

岩田 絵弥曄 / Emika Iwata

ヴィーガンフードアナリスト®︎
ベジタリアン・ビーガン・グルテンフリーなどヘルシーな食のフードライターとして活動。 保育士経験から子供たちの未来を守るため、オーガニックや自然栽培など食の安全にも取り組む。インバウンド対策やアレルギー・環境問題から、ヴィーガンに関するセミナー等も開催。自身も10年以上のヴィーガン。 メディア出演:The Japan Times、日テレ「人生が変わる1分間の深イイ話」、チバテレビ「ジャルっと爆ハリ」等。