自然栽培・無農薬野菜を直接生産者から!都会でノスタルジックなマルシェ体験を。アースデイマーケット【渋谷】

更新日:2019/02/02 公開日:2018/02/03

近年、日本でもいわゆるマルシェ(市場)が広く開催されるようになってきました。しかし、まだマルシェが数えるほどしかなかった頃から、渋谷で長く続いているマルシェがあります。

今回取材させていただいた「アースデイマーケット」は、2006年から実に11年も続いている老舗マルシェ。

月に一度、主に自然栽培・無農薬野菜を扱う生産者が出店する他、雑貨やマッサージなど、魅力的なお店が軒を連ねます。

マルシェというと、海外のオシャレな雰囲気をイメージする方が多いかもしれませんが、アースデイマーケットは日本の古き良き文化をそのまま引き継いでいるようなノスタルジックな雰囲気が魅力。

他のマルシェにはない、この穏やかでどこかホッとする空間が、日本最大の賑わいを見せる渋谷にあるなんて!

今回は、アースデイマーケット実行委員会事務局長の冨山普(とみやまひろし)さんにインタビュー。アースデイマーケット立ち上げまでの経緯や、まだまだ進化していくこれからのアースデイマーケットについて、お話を伺いました。

日本のマルシェの先駆け!渋谷らしからぬ、昭和の商店街を思わせるようなマーケット。


取材当日は寒かったものの、とてもいいお天気でした。渋谷駅から歩いて10分。

代々木公園のけやき並木に着く頃には、先ほどの渋谷の喧騒が嘘のように、穏やかでゆったりとした空気が流れていることに気づきます。


10時のオープンタイミングで到着したVegewelスタッフが驚いたのは、そのアットホームさ。

出店者の中にはお子さん連れの方も多く、子供同士で遊んだり、はたまた隣のお店を手伝ったり。まさに、昭和の商店街にいるかのような雰囲気です。


アースデイマーケットのテントは全て竹を使ったもの。間伐材(かんばつざい)の竹を使っており、とってもエコです。

「誰も入らない里山では、竹も生え放題。きちんと手を入れてあげないと枯れてしまいます。健全な里山を保全するための間伐で切られる竹を、テントの骨組みに利用しているんです。

これだと無駄がないし、この活動を持続運営すれば、竹林も保全されることになります。慣れれば女性2人でも建てられるテントなので、使い勝手も良いですよ。」と冨山さん。

普通のイベント運営のテントと比べて軽いため、運搬時のCO2排出量もかなり少ないそう。

みんなで組み立てて、みんなで解体。周りとのコミュニケーションツールとしても貢献している竹テントです。


運営スタッフの方からおすそわけ。出店者同士だけではなく、訪れる人も一緒にアットホームな時間を楽しめるのが魅力です。

直接生産者と触れ合える。厳選野菜・食品など様々なお店を紹介!

早速、注目のお店を紹介していきます!


まずお話を伺ったのが、無農薬・無化学肥料栽培のお茶を生産する静岡県の「北川園」。

北川園では30年以上、お茶を作り続けています。

多くのお茶が農薬や化学肥料を使って作られている中、27年前に無農薬・無化学肥料の栽培に踏み切った経緯を、北川園を経営する北川さんにお伺いしました。

「もともとは農薬の危険性についてあまり考えたことはなく、農薬を使用することに疑問を持ったこともありませんでした。

無農薬・無化学肥料に切り替えたのは、とある食品会社の社長との出会いから。その方が農薬について、食の大切さについて考えるきっかけをくれました。

生活の元は食である、と決意し、その時入っていた農家の団体からも抜け、自然農法でやっていくことに。しかし、始めて3年間は収穫ゼロ。一緒に自然農法を始めた3軒の農家と励ましあいながら何とか続けました。」

4年目から少しずつ売りに出せるお茶を収穫できるようになりましたが、今度は団体を抜けてしまったため売る場所がない。苦労が続いた中でも、一番の励みになったのは、収穫されたお茶の「質」でした。

「今までは肥料がないとできない、もしできても美味しくない、と思い込んでいました。『施さなければ』という固定観念ガチガチだったんです。

でも、肥料がなければないで、根が自分で深くまで伸びて栄養を探しに行く。そうすると、空梅雨の年でも自力で水分を取り込むことができるんです。

また、自然農法のお茶の渋みは、栄養の証拠。殺菌効果が期待できます。さらに、虫からすると肥料を使っていない我々のお茶は美味しくないので、虫がつくことも少ないです。」

実際に何度も北川園のお茶を飲んでいる冨山さんは、このように絶賛します。

「北川さんのお茶は、ひっかかる苦味がなく、するんと身体に入っていくんです。これが無農薬で作ったお茶なのか!と感動しました。本物のお茶の味を初めて知った気がします。」


こちらは「紅ふうき」。カテキン含有量が多く、飲むと花粉症の方は症状が和らぐと言われています。

一時期話題になり様々なところで量産されましたが、北川園の紅ふうきは、その前も今も自然農法を守って作られています。

「色々きついこともありましたが、少しずつ自然農法への理解が広がり、周りの人達の考え方が変わってきているのも感じます。やってきて良かったと思っています。」


周りがやっていないことを率先してやるのは非常に勇気がいること。そんな中で北川さんが自然農法を続けてこられたのは、「安心・安全で美味しいお茶を届けたい」というブレない軸があったからです。

取材時も、次から次へとお客様が訪れ、その度丁寧に接客している姿が印象的でした。北川園を目当てにアースデイマーケットを訪れる常連さんも多いようです。

【北川園】
http://www4.tokai.or.jp/kitagawaen/


続いて訪れたのは「ポコ・ア・ポコ農園」。

日本でも珍しい、ほぼ全作物種とりの雑草の中で自然栽培の野菜を育てている農園です。オープンすぐの時間は、小さな女の子が店番を!

「ポコ・ア・ポコ農園さんは、さやから落ちた種が勝手に育つのをそのままにしている。交雑も多くあるため、誰も知らないような野菜ができることも。それがめちゃめちゃ美味しいこともあるんです!」と冨山さん。


名前がない野菜は「なんだかわからない菜」という名前でお店に並ぶことも!既存の枠に捕らわれない、自然で新しい野菜に出会えるかもしれません。

【ポコ・ア・ポコ農園】
https://www.facebook.com/POCO-A-POCO-FARM-276920389020810/


こちらは千葉県の「Minowa Rice Field」。合鴨の雛を田んぼに放つ「合鴨農法」でお米を作っています。もちろん無農薬。肥料も手作りの有機肥料を少し使うだけです。


冬に食べたい黒米も!

【Minowa Rice Field】
https://www.facebook.com/minowaricefield/

他にも様々な生産者のブースが!目移りしてしまいますが、のんびりしていると売り切れてしまう野菜も。午前中は常連さんが多いそうなので、早めに行って気になる野菜はすぐにゲットするのがおすすめです。


生産者の方がそのまま持ってくる野菜はどれも新鮮。Vegewelスタッフもお店を回りながらその都度お買い物。


手づくりの梅干し。毎日食べるものだからこそ、安心・安全の無農薬・無肥料を。


美味しそうな柿のお店も!そのままの柿はもちろん、柿蜜や干し柿、お茶なども販売。柿のお茶はビタミンCが豊富なんだそう。


珍しい柿蜜は、柿100%!柿の甘みだけの自然なものです。


干し柿は大きく食べごたえありそう!


こちらの「魚屋」では、魚を売っているわけではなく、手づくりのお菓子や、「ほ穂」というお酒を販売しています。ほ穂は、隣に出店している「みやもと山」で作ったお米を使っているそう!お店同士の連携が素敵です。


寒い外でほっと一息つきたい時には甘酒もあります!

【魚屋】
http://www.sakanaya1877.jp/


お隣「みやもと山」。千葉県の田んぼで完全無農薬で作っているお米です!


店頭では、美味しそうなおにぎりの販売が!ちょうどお腹が空いてきたVegewelスタッフは、休憩を取ることに。


一緒にお餅入りのけんちん汁も。身体が温まります!※けんちん汁は鶏肉入りです。

みやもと山では、自家製のお味噌や塩麹も販売していました。

【みやもと山】
http://miyamotoyama.boy.jp/top.html


他にも、ほっと一息つきたい時にぴったりなコーヒー屋さんや


焼き芋のお店も!


黄色くてホクホク甘い焼き芋です!

アースデイマーケットは、食べ物以外のお店も充実しています。

歩いているVegewelスタッフに声をかけてくれたのがこちらのお店。


何と、包丁を使ったマッサージ!痛くないの?切れないの?と恐る恐る体験してみることに。


2名のスタッフの方が2本ずつ、計4本の包丁で身体を小刻みにたたいていきます。刃と言っても切れるようなものではないので、安心して受けることができました。

そして不思議だったのが、ほんの10分、しかもそとでコートを脱いで受けていたのに、終わった後の身体がポッカポカ!強い指圧ではなく、本当にトントンと包丁でたたいてもらっただけなのに…?

「こちらの包丁マッサージは、5,000年前に台湾で始まりました。包丁の振動で身体が柔らかくなり、刃物で身体をたたくことで邪気を払うことができると言われています。」と施術してくれたスタッフさん。

気になる方は、以下のHPでチェック!近くに施術してくれるサロンがあるかもしれません。

【開運!包丁マッサージ】
http://xn--vckg5a9gugu69o1lh.com/therapists/


他にも、雑貨や食器のお店などがあり、様々なお買い物が楽しめます。

マスコミからの転身。自然栽培の畑を踏みしめた時に変わった人生。


アースデイマーケットは2006年に立ち上げられました。

「もともとNPO法人『アースデイマネー・アソシエーション』と『トージバ』という団体があり、そこで立ち上げたマーケットです。

トージバでは、主に大豆文化を取り戻すための活動を行なっていました。

その中で有機農家の知り合いが増え、『農作物を売る場がない。都市部の人達に有機の農作物を理解してもらい、買ってもらいたい』という農家さんの共通の想いに直面したんです。」

その想いに応えられる場は、すなわち自分達の活動を広げられる場。農作物をを売るだけではなく、今の食の問題の啓蒙にもなるような場所を東京に作ろう。冨山さんは、それを「マルシェ」という形で実現しようと決意します。


「日本では伝統的な市があります。

ヨーロッパでも何百年も続いているマーケットもありますが、約40年ほど前からは、農業の工業化という状況に対して環境や食への安全を求めるムーブメントが起こり、ファーマーズマーケットが広まった歴史があります。

日本にも、そういうものがあっても良いよね、と。」

そう話す冨山さんの前職は、なんとマスコミ業界。トージバへの取材がきっかけで、自然栽培に強く共感することになります。

「もともとは、制作会社でADをやっていました。ADの生活はかなり不規則。食事も弁当ばかりでした。そんな中、トージバの取材で訪れた有機農家の「みやもと山」さんでの体験が、自分の人生を変えました。」

早朝の畑からは、朝湯気がもうもうと出ていました。畑は見るからにフカフカ。自身が想像していた畑とは全く違いました。

「お前も大豆の種蒔きを手伝え、と言われ、裸足で畑に立った時に、足の先から頭の先まで土の柔らかい感触が突き抜ける感じがしました!

とても気持ちが良く、生きてる感じがした。その後いただいたご飯もとても美味しくて、その場で『絶対この生活の方が正しい!これをやりたい!』と決意しました。」

有機農家の人達と生きられる方法を考え始めた冨山さん。畑に足を踏み入れた時の衝撃から、冨山さんの新たな生活が始まったのです。

ノスタルジックな雰囲気はそのままに。「買い物」だけではなく「体験」と「経験」をプラスしたマーケットへの進化を。


アースデイマーケットは、今年の春以降、さらに形を変えて進化していくかもしれません。

「今年の4月か5月以降は、もっと作り込んだ内容を入れ込む予定です。今は物を売る場所という意味合いが強いですが、それ以外の内容も充実させたいなと。」

冨山さんが考えるのは、「自分事になるマーケット」。つまり、来る人が実際に体験・経験できることがあるマーケットです。

「例えば、その時期に合う種まきをプランターで教えるとか、縄のなえかたを教える、など、実際に自分でやってみること。

あとは、珈琲豆のロースターさんがあなた好みに豆を調整してくれるなど、個人へのサービス、そこに来ないと体験できないようなもの。

毎月新しい何かを楽しみに来られるような場に発展させていきたいと思っています。」

まだ日本にマルシェが少ない時に立ち上げたアースデイマーケット。今では規模を問わず、日本各地でオーガニックマルシェが多数開催されるようになりました。

日本でマルシェという文化を作るという意味では、役目を終えた。では、次にできることって?

「今では、単に有機野菜が欲しければ、ネットでクリックすれば買える時代。そこであえてマルシェに来るのは何故なのか?

それは、その場にいる生産者にしか聞けないことがあるから。単に買い物だけをするために来ているわけではないんです。」

今は、自分達でわざわざ作らなくても、ほとんどのものが手に入る時代。しかし、そんな便利な時代ゆえに、昔は当たり前だった文化が廃れてしまっているのも事実です。

そんな文化をもう一度手繰り寄せ始めているのも、今の時代なのでは?と冨山さんは語ってくれました。


「今は10年前と比べて、自家製味噌を作る人が増えて来ています。男性が趣味で燻製を作ったり、梅干しを漬けたりしていることも。

昔は当たり前だったそれらの文化をできなくなる、伝える場がなくなる。皆さんそこに漠然とした危機を感じているのではないでしょうか。

そういう文化を伝える場所を作ることは、すごく自然で健全なことだと思います。」

冨山さんは、「オーガニック」についての考え方も変化してきたと言います。

オーガニックを辞書で調べると、「有機的」という意味の他に、「本質的・本来的」という意味もあることがわかります。本質的とは?

「それって、抽象的ではあるけど、必ず実感が伴うものだと思うんです。ただ聞くだけではわからない。実際に体験・経験して初めてわかるもの。

そういう意味では、農業体験するのも、味噌を教えてもらって作るのも、オーガニックだな、と思うんです。」

自然栽培・オーガニックな農作物を買うだけじゃない、本来昔から当たり前にやってきた「オーガニック」な体験ができるアースデイマーケット。

ノスタルジックな空気やポリシーはそのままに、これからも進化し続けるマルシェ、是非皆さんも訪れてみてください!

【今後の開催予定】
■2018年2月18日(日)
■2018年3月18日(日)
いずれも10:00~16:00 ※雨天決行

【オフィシャルホームページ】
http://www.earthdaymarket.com/

※記事の内容は取材時点のものであり、変更される可能性があります。

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AYA OKUDA

AYA OKUDA

フードコーディネーター
食育インストラクター
食空間コーディネーター
フードライター
食の美味しさ、楽しさ、大切さを発信すべく、地道に活動、勉強中。
得意分野は、日本の伝統行事食、食の日本史・世界史、テーブルコーディネート。
好きな分野は、カレー、ビール。