プラントベースを中心とした食生活の三大栄養素~炭水化物・たんぱく質・脂質~

日本では、厚生労働省の食事バランスガイドを中心に、肉や魚などのたんぱく質の摂取を推奨しています。

しかし、アレルギーのある方や健康志向、または思想や宗教上の理由などで、プラントベース(植物性食品ベースの食事)で食生活を送る方が、世界には大勢います。

プラントベースの食生活で「栄養は足りているの?」と不安に思う方もいるかもしれません。

もちろん、どんな食生活も、過度に偏ったものはバランスを崩します。植物性食品を中心とした食生活の中でも、できるだけ偏りをなくし、栄養バランスを考えることが大切です。

今回は、プラントベースの方にも改めて見直して欲しい、基本的な三大栄養素のお話をします。

食べたものが消化吸収される流れ


食べ物は、そのまま体の一部になるわけではありません。体は数々の消化・吸収を行いながら、食べ物を活動に必要なエネルギーに変えたり、体組織の構成成分とします。

まず始めに、人が食事をすると、その栄養素は主に小腸で吸収されます。食べたままの状態では、栄養素が体に取り込める大きさになっていないため、口で咀嚼したり、胃で消化液と一緒になることで、小さく分解されます。

そうして細かくなった栄養素は、小腸内の絨毛と呼ばれる細かいひだより、体内に吸収されます。

水分や電解質は、大腸で吸収されます。この時、水分の吸収が不十分だったり、大腸の動きが亢進して内容物が早く通過すると、下痢になります。また逆に、大腸の動きが悪く、水分を吸収しすぎた場合は便秘になります。

また、大腸では食物繊維の発酵も行われます。これにより、食物繊維から短鎖脂肪酸(酢酸・酪酸・プロピオン酸)が作られることで、腸内環境が整えられます。

ざっとお話しましたが、これらの全てを含め、体の中で行われる「食物を食べ、呼吸をし、水を飲み、汗をかき、排出する」生命活動そのものを「代謝」と呼びます。

食事が動物性のもの中心でも、プラントベースのヴィーガンやベジタリアンの方々でも、人はみな同じ仕組みで代謝を行っているのです。

プラントベースでもバランス良く!「三大栄養素」炭水化物・脂質・たんぱく質の話


写真はアボカドです。では、アボカドは、炭水化物・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラルのどのくくりに入ると思いますか?

おそらく多くの方が、「野菜なのでビタミン・ミネラルに入る」と考えているのではないかと思います。それはもちろん誤りではありません。しかし、それではアボカドには、糖質・たんぱく質・脂質は全く含まれていないのでしょうか?

アボカドは、100g中に脂質19g・炭水化物(後に話しますが糖質と関連してます)6g・たんぱく質2.5gが含まれています。もちろん大豆食品に比べると、10分の1程度の含有量ではありますが、野菜の中にもたんぱく質は含まれているのです。

そのため、植物性食品だけでも、食品の組合せによって、推奨されているバランスを保ちながら栄養素を摂ることができます。

それではこの三大栄養素である糖質・たんぱく質・脂質の消化吸収と役割・それぞれを摂るのにおすすめのプラントベースの食材を見ていきましょう。

炭水化物の消化吸収と役割


三大栄養素の一つの「糖質」は「炭水化物」と同じように明記されていることが多く、どのような違いがあるのかわからなくなることがあります。

糖類には、単糖類・少糖類・多糖類と呼ばれる種類があります。この「糖質」に食物繊維を加えて、「炭水化物」と言います。

糖質は主として体のエネルギーを作る役割をし、1gで4kcalのエネルギーを生み出します。

単糖類の中には、ブドウ糖と呼ばれる「グルコース」・果物に多く含まれる「フルクトース」・乳糖の元となる「ガラクトース」があります。(タケノコに含まれる「キシロース」も単糖類です)

これらを組み合わせてできた糖類が「スクロース(ショ糖)」「マルトース(麦芽糖)」「マルトース(乳糖)」「トレハロース(酵母やきのこ)」の少糖類に、さらに多くつながった「でんぷん」「セルロース」の多糖類となります。


例えば、ジャガイモに含まれる糖質であるデンプンは、まず口の中の唾液に含まれる酵素によって、二糖類の麦芽糖(マルトース)まで分解されます。

その後、小腸にある腸液に含まれる酵素によって、単糖類であるブドウ糖(グルコース)までに分解され、吸収されます。

分解されたグルコースは、小腸の絨毛(じゅうもう)と呼ばれる毛細血管から、門脈(吸収された栄養素を集めて肝臓に流れ込ませる血管)を通り、肝臓に運ばれます。その後、血流にのって体のあちらこちらに運ばれます。

ブドウ糖(グルコース)の一部は、肝臓と筋肉でグリコーゲンに合成され貯蔵されます。残りは血糖となり、脳や神経、赤血球にエネルギーを供給するほか、脂肪や一部のアミノ酸の合成材料になります。

ブドウ糖(グルコース)を多く摂りすぎた場合は、肝臓や脂肪組織でトリグリセリド(中性脂肪)に変わり、脂肪組織に蓄えられます。その後、必要に合わせて分解され、エネルギー源として利用されます。

ジャガイモを例に出しましたが、プラントベースの食生活の場合には、糖質が多く含まれる食品に偏りがちになります。

また、炭水化物には、重要な栄養素があります。それが「食物繊維」です。

かつては「食物繊維は不要なもの」と考えられていました。しかし、食物繊維には、コレステロールを運搬する働きや、腸の蠕動運動を助ける働き・腸内フローラの状態を安定させる働き等、様々なメリットがあることがわかりました。

そのため、現在では一日20gの食物繊維を摂取することを推奨されています。体を健康に保つのにメリットのある役割のある食物繊維は、ほとんどが植物性食品に含まれているため、肉食の方も積極的に取り入れていく必要がある栄養素です。

糖質は、人の体をすぐに動かすエネルギーになるため、スポーツや勉強前の脳にエネルギーを伝達したい場合には大変有効な栄養素です。

しかし、多く摂りすぎるとそのまま脂肪として蓄えられるため、炭水化物を摂る場合には、その食品がどのような糖質でできているかと、他の食品との組み合わせに注意をする必要があります。

【糖質を多く含む植物性食品】
米・小麦・さつまいも・じゃがいも・山芋・葛・春雨・さといも・あずき・いんげん・えんどう・そら豆・ひよこ豆・レンズ豆・銀杏・栗・カボチャ・とうもろこし・れんこん・バナナ・イチゴ・みかんなど。

【食物繊維を多く含む植物性食品】
ゴボウ・モロヘイヤ・グリーンピース・大豆・きなこ・パセリ・ライ麦粉・オートミール・そば粉・切り干し大根・キクラゲ・干しシイタケ・アボカド・バナナ・リンゴなど。

たんぱく質の消化吸収と役割


「たんぱく質」は、主に人の体を構成するための栄養素です。また、エネルギーを生み出すこともあります。

人の体は20種類のアミノ酸で構成されていますが、体内で合成されない「必須アミノ酸(フェニルアラニン・ロイシン・イソロイシン・バリン・スレオニン・ヒスチジン・トリプトファン・リジン・メチオニン)」と呼ばれる9種類のアミノ酸が必要です。

これらは食事から補う方法しかありません。そのため、たんぱく質を摂る時は、色々な食品からこのアミノ酸をバランス良く摂ることが大切です。

さらに詳しく説明すると、先ほど述べた「必須アミノ酸」は一つ一つが樽の桶の板の様な役割をしています。この樽の桶の中にあるアミノ酸は、その板の高さが一枚でも低く欠けていると、中のたまったアミノ酸がこぼれてしまいます。

このように、必須アミノ酸は一つでも不足すると、そこに合わせて十分なたんぱく質合成ができなくなってしまいます。

この指標は「アミノ酸スコア」と呼ばれる数値でわかります。アミノ酸スコアは、100が一番良いとされ評価されています。

そのためプラントベースの食生活の場合、たんぱく質を様々な食品の組合せで摂り、アミノ酸スコアの高い食事にするのがベストです。

アミノ酸になるまでのたんぱく質の代謝は、まず口の中で咀嚼され胃にたどり着き、ここで、胃液消化酵素の作用をうけ分解され、小腸に送られます。

小腸では、膵液・腸液の消化酵素によってアミノ酸にまで分解されます。(アミノ酸は、1個つながったものから2個、3個つながったものがあります。)

そして最後に、小腸の絨毛から吸収されて門脈を通り肝臓に運ばれます。吸収されたアミノ酸は、グルコースと同じように肝臓から全身に運ばれていきます。

肝臓に運ばれたアミノ酸は「アミノ酸プール」と呼ばれる形で体に蓄えられ、そこで必要に応じて使われます。

このアミノ酸プールは、食事由来のものだけでなく、体にもともとあるたんぱく質を分解して、空にならないように調整されています。そのため、食事のたんぱく質が不足すると、筋肉をはじめ肌や髪・体の様々な部分に不調をきたします。

プラントベースの食生活の場合は、たんぱく質が不足になりがちなので、このアミノ酸スコアの高い食品を上手に組み合わせていくことが大切です。

【たんぱく質を多く含む植物性食品】
豆腐・豆乳・納豆・テンペなどの大豆製品・枝豆・レンズ豆・黒豆・ライ豆・ひよこ豆などの豆類・ピーナッツ・アーモンド・カシューナッツ・パンプキンシードなどの種子類・ほうれん草・アボカド・とうもろこし・ブロッコリー・芽キャベツやワイルドライス・チアシード・フリーカ・キヌアなどのスーパーフードなど。

【アミノ酸価100の植物性食品】
★大豆★あずき★そばの実・さつまいも・じゃがいも・アスパラガス★ピスタチオ・インゲン豆★枝豆・グリーンピース・オクラ・カブ・カボチャ・からし菜・カリフラワー・なす・うり・人参・ねぎ・にら・ブロッコリー・パセリ・大豆もやし・アボガド・イチゴ・イチジク・柿・えのき・きくらげ・しいたけ・しめじ・なめこ・えりんぎ・あおさのり・もずく・わかめ・ケールなど。

※アミノ酸スコアが100であっても、たんぱく質の含有量には大差があります。★のついた食品は、100g中のアミノ酸量が多い食品です。

脂質の消化吸収と役割


最後は、「脂質」の代謝について説明していきます。

脂質は、水に溶けにくく有機溶媒によく溶けます。人の体では、主に皮下や内臓周囲脂肪として蓄えられ、必要に応じてエネルギー源として利用されます。

糖質が即効性のあるエネルギー源とすると、脂質は貯蔵できるエネルギー源と考えられます。

他にも細胞膜や血液、ホルモンなど、体の構成成分にもなります。

人の体の中の脂質は「食べた脂質」と「体の中で合成された脂質」の二種類があり、合成は肝臓で行われています。また、動物性の「脂」と植物性の「油」では消化吸収に違いがあります。

脂質は大きく3つにわかれ、「単純脂質(中性脂肪など)」「複合脂質(リン脂質など)」「誘導脂質(コレステロールなど)」があります。

さらに詳しくすると、例えば中性脂肪(トリグリセリド)は、グリセロールに3つの脂肪酸がくっついた形で存在しています。このくっついた(結合した)部分の脂肪酸の種類によって、油脂の性質が変わります。

脂肪酸の種類は2つにわかれます。一つめは飽和脂肪酸の酪酸・パルミチン酸・ステアリン酸などで、通常室温で固体の動物性の脂です。

二つめは、不飽和脂肪酸(くっついた部分に二重結合があり不安定)と呼ばれる、植物性の油に多い「N-6系」のリノール酸・γ⁻リノレン酸・アラキドン酸。また「N-3系」と呼ばれるα⁻リノレン酸・EPA・DHAなどです。

これらの油脂は、胃で一部「乳化」され、さらに小腸の消化酵素によって乳化と分解が行われます。そして、小さくなったところで小腸の上皮細胞で再合成され、リンパ管に入ります。

油の種類によって再合成の形や大きさが変わるため、油脂の種類によっては体の血管に負担がかかったり、脂肪として蓄積されやすくなります。そのため、脂質は、その脂質の種類と摂り方のバランスが決め手となります。

また、人の体には、必ず必要な必須脂肪酸と呼ばれるN-6系の「リノール酸」と、N-3系の「α⁻リノレン酸」があります。

EPAやDHAなどは動脈硬化を予防すると言われている油ですが、魚油に多く存在しています。よって、ヴィーガンの方は、EPAやDHAと同じ、N-3系の植物性油を摂っていくのをおススメします。

【脂質を多く含む植物性食品】
マカダミアナッツ・クルミ・松の実・ピスタチオなどのナッツ類・高野豆腐・油揚げ・きなこなどの大豆加工食品など。

【必須脂肪酸の多い植物性食品】
N-6系リノール酸・・・紅花油・大豆油・コーン油など。
N-3系α⁻リノレン酸・・・シソ油・エゴマ油・アマニ油など。

※これらの油は不飽和脂肪酸のため、酸化しやすい性質を持ちます。使う際は、ドレッシングなどそのまま食すのがおススメです。

このように、三大栄養素の消化吸収の過程を知ると、植物性食品だけでも十分に栄養素を補うことができることがわかります。

しかし、植物性食品でも、偏った独自の方法で行うとバランスを崩しますので、注意が必要です。

次回は、植物性食品のビタミン・ミネラルのお話をお伝えします。

参考文献:
・なぜどうして?基礎栄養学
・管理栄養士要点まとめ
・七訂食品成分表2019
・オールガイド食品成分表2019

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松下 和代

松下 和代

食事は、「心のこもった温かい手で」をモットーに児童養護施設に住み込みで働く。さらに、栄養士として、ミルク会社のメールマガジンの編集・栄養・保育相談を担当後、フリーで各種保育施設の献立制作や栄養相談・テレビ・雑誌・WEB等で栄養関連の執筆を行う。現在は、ライター稼業兼、こじんまりとした料理教室を主宰。栄養士・調理師・保育士・食品アドバイザーの資格所有。趣味は、ホラー漫画とフィギア集め。