アスリートフード研究家・妻として、細胞レベルから健康になるのを見守った。プラントベースアスリート池田祐樹(いけだゆうき)選手・清子(さやこ)さんご夫妻インタビュー【後編】
菜食中心の食事に切り替え、世界各国の長距離レースで優勝した、プロ・マウンテンバイクレーサー池田選手。前編では池田選手がなぜ菜食を取り入れたのか、そのきっかけと体の変化を伺いました。
後編では、正に二人三脚!池田選手を支えている、奥様でアスリートフード研究家・アスリートフードマイスターの池田清子(いけださやこ)さんにフォーカス。
清子さんは、産経デジタルCyclist「SAYAKOのはらぺこサイクルキッチン」の連載でも、プラントベース・アスリートフードを紹介しています。
プラントベース・アスリートフードって何?ということから、アスリートに限らず、誰もが細胞レベルで綺麗になれるその魅力まで、たっぷりお話を伺います。
前編はこちら
≪前編≫菜食で僕はより強く健康になった!プロマウンテンバイクレーサー・プラントベースアスリート池田祐樹選手・清子さんご夫妻インタビュー
目次/Contents
アスリートフードをプラントベースにするための7つの質問
photo ︎©︎Sallu
皆さんの中には「アスリート」というと、どんなイメージがありますか?さわやか?健康?体力がある?
実際、現役アスリートの体は酷使されています。ハードなトレーニングで疲労が溜まり内臓に負担もかけやすく、老化の原因と言われる活性酸素が体内に発生します。免疫力が下がると風邪を引くことも。
必要な栄養素を取り、リカバリーを早めるためにも食事はとても重要です。その食事をプラントベースに置き換えるにはどうしたらいいのか、清子さんにお伺いしました。
池田清子さんプロフィール
アスリートフード研究家
講演、執筆、商品開発、レストランメニュー開発などアスリートの為の食事に関する様々な発信・活動をする場所として、2016年にビオトープ株式会社を設立。”健康的に強く美しくなる食事”をモットーに、アスリートフードの研究及び実践を行っている。
趣味は筋トレ、トレイルランニング。
http://biotope-inc.co.jp
① 一般のヴィーガンメニューと、アスリートフードはどこが違いますか?
「基本的には同じですが、マクロビオティックを学んだ時と大きく変わったことは、生野菜を取ることが多くなりました。
抗酸化作用物質を多く取るためには、なるべく火を通さず、栄養素が壊れないようにホールフードの状態(一物全体)で摂りたい。これは加減やタイミングは違っても、みんなの食事に共通することではないかと思います。」
② ヴィーガンで、筋肉は落ちないの?タンパク質は?と聞かれます。
「タンパク質量や、糖質に偏りすぎていないかは気にしています。
池田選手が『タンパク質が足りない』と言って、ヘンプシードをガーって食事にかける時があるんですが、感覚的なものもあるので任せている部分も。ただ、ある程度バランスの良い栄養素は必要だと思っています。
また、タンパク質という形だけではなく、アミノ酸にも注目しています。タンパク質を分解したアミノ酸の形で取り入れた方が、基本的には体に早く吸収されるからです。
緑の葉野菜や、手作りの甘酒でアミノ酸を取り入れています。馬だって草だけであんなにたくましい筋肉が作られていますよね。
甘酒は一見タンパク質と結びつかないですが、飲む点滴と言われているくらいですから、アミノ酸がたくさん含まれるので体の回復に役立ちます。
私もフルマラソンの前には甘酒を飲んでいますが調子がいいいですね。もちろん、納豆・豆腐・ナッツなど、皆さんがわかりやすいものからもタンパク質を取っていますよ。」
③ ヴィーガンアスリートでプロテインを多用している方もいますが、お二人はどうですか?
「補助的に使うのはいいと思いますが、基本は食事ですね。
足りないときに取るのは効果的ですが、エネルギーの凝縮した加工品というのは内蔵に負担をかけてしまう可能性があります。それを長期的に続けるというのは、その時は良くてもその何十年後には弊害が出るかもしれません。
選び方も大事ですし、補助的な使用が望ましいかなと。」
−−海外遠征中に作ったビーツのフムス
④ 根菜で鉄分が取れると聞きましたがイメージがわきません。サプリはどうですか?
「サプリメントを取れば一時的に数値は上がるかもしれません。貧血などの緊急の場合は別として、根本的に解決するためには、スローかもしれないけど、日々、小松菜・根菜などの植物性食材から、幅広くバランス良く取ることが近道ではないでしょうか。」
⑤ 携行食は何を用意してますか?
「ジェルやエナジーバーを手作りしています。
ジェルはメイプルシロップなどを入れているものもありますが、欠かせないのが濃縮した梅エキスと、レモン果汁をしぼったクエン酸、天然のナトリウムです。
先日出た大会・青梅マラソンでは、プロテインと手作りジェルを半々用意しましたが、プロテインを全く体が受け付けられないという経験をしました。」
−−スリランカの遠征で
⑥ 海外遠征時の食事はどうしていますか?
「海外遠征の時にはキッチン付きの宿にすることが多いので、日本のものだけではなく、できるだけ現地の食材を取り入れているようにしています。
前は味噌など、日本の食材をたくさん持っていってたんですが、その土地の食材をとったほうが、その気候や風土にあってるから早く身体が順応できると考えています。それは数値だけでは表れないところですね。
人間の体はそれだけすごいと思うんですよ!傷ができたらかさぶたができるのと同じように、体はその地に順応しようとするんです。いいものを食べてあげると治る力はより早いです。
やればやるだけ返ってくるので自分の体に感謝することができますよ!」
どんな人でも細胞レベルから美しく。
−−アイディア次第で、プラントベースおせちも手軽に実現
アスリートフードは、アスリートだけの特別な食事ではないと清子さんはいいます。
「強さと健康はイコールではなく、強さのためには健康を犠牲にしなければならないと思っていました。
しかし、実は強さと健康がイコールで、食を見直すことで選手としての寿命も延びる。さらに、池田選手の疾患が治ったように、細胞レベルで体が変わっていくので、美しさにもつながっていくなと感じます。
男性でも肌・髪の艶がよくなり、イキイキとしたオーラになる。美しさを求めている人も、同じ食事をすれば細胞レベルから健康的に美しくなれるんだなって。
プラントベース・アスリートフードは老若男女色々な人に当てはまる食事で、決して運動している人だけの食事ではないなと思いました。」
「私は本を出版する際、プロフィール用の写真を撮る必要がありました。でもそれが1週間後に迫る中、忙しく肌がボロボロだったんです。
もう、どうしようって。そこから一週間、ビタミンAだ!と思って、いつも以上に人参を意識して食べていました。もちろん皮ごと。すると、当日肌はツルツルでした!
ビタミン剤ではなくて、食材の力を借りる方法が一番いいかなと思います。」
競技生活だけでなく、夫婦生活も変えた菜食
菜食を始めて大変だったことはありますか?と伺うと、
「なかったかもね(笑)逆に楽しい思い出しかないかもしれません。」と即答したお二人。
美容と健康のため、マクロビオティックを学んでいた清子さん。その頃は、後に出会うアスリートフードとそこが掛け合うとは思ってもいませんでした。
「当時の彼はあまりにも乳製品を取る量が多くて。無脂肪牛乳を1日1〜2本、ヨーグルトのファミリーパックを、アスリート栄養学の観点から、たんぱく質も豊富であり無脂肪だからヘルシーだと言って食べていたんです。
マクロビオティックの観点から、飲まなくてもいいんじゃない?と言ったんですが、何かをやめるって怖いじゃないですか?何度提案してもやめなかったんですが、プラントベースで成功体験をしている選手を見て、やめるって(笑)※前編参照
目指している選手や近い人がそういう体験をしていると、すっと自分に入ってくるんだなと。」(清子さん)
ヴィーガンのウルトラトレイルランナー、スコット・ジュレクなど、海外のヴィーガンアスリートを参考にすることもありますが、海外遠征時には一般アスリートの食生活からもヒントを得ているそうです。
−−スリランカのファーマーズマーケットで
「プラントベースに切り替える前から、カナダのトップ選手がヘンプシードを水で溶かしているのを見て、『それなに?』って、新鮮な気持ちで観察していたんです。
ちょっとずついいとこ取りをしながら、来年はどんなスーパーフードがメジャーになるんだろうと、楽しみにしながらメニューをアップデートしています。」(清子さん)
「海外のレースに行く際は、現地の自然食品店やファーマーズマーケットにいくことがとても楽しく、気分転換にもなります。その近くに宿をとったり、そのリサーチをすることが最近の趣味です。」(池田選手)
お二人での食事は「グルテンフリー」や「低糖質」など、まずテーマを決めて、3ヶ月クールで徹底して実践し、その効果を検証しているそうです。
「こうしたことを話し合うというのはなかなか無いことですが、自分自身の変化を観察するというのは大事な作業だと思いますし、相手の体を気遣うことでもありますよね。
食べるもので体ができているということはだいぶ浸透していると思うのですが、それによる気持ちの変化にも着目しています。
観察を構築していくことはとても貴重です。この日のこのレースに向けてこうしよう、というデータも出来上がってきます。」(清子さん)
夫婦揃ってレースで優勝!私も菜食で変わった。
食事をプラントベースに切り替えて4週間目で迎えた、「ヒルクライム・イン・おんたけ」。
池田夫妻は、お2人揃って優勝という快挙を成し遂げます。清子さんはなんとレースに初出場!
「応援や食事管理だけではなく、選手の気持ちになることも大事だと思ったので、私もプラントベースでやってみようって。
レース前の合宿では、素人の私が20キロの坂道を2日連続で登れたんですよ。でも、疲れているはずの2日目、バイクを漕ぎ出した瞬間に『あ、足が軽い』って感じて。さらに、レース当日には20分も自己ベストタイムを更新できました。」(清子さん)
「彼女がレースに出る前は、食事の面で衝突することもありました。しかし、彼女自身がトレーニングやレースを経験してからは、練習時やレース後に体が何を欲しているかを察してくれたり、かける言葉も変わってきたのは大きかったですね。」(池田選手)
支えあってこそ夫婦と言いますが、プラントベースという健康な食事が、二人の絆をより強いものに変えたのではないか?そう思ってしまうほど、二人が菜食の食事に切り替えてからの生活は楽しそうです。これからも、お二人のご活躍を応援しています。
清子さんはご自身の経験を生かし、サイクリスト向け補給食の開発に取り組み、4月に「minagiru -ミナギル-」が発売になりました。
ラインナップはエナジーバー・エナジージェル・エナジーバター・甘酒。美味しく、体に負担をかけないおススメの補給食です!
詳細はこちらから
https://www.adlibworks.com/minagiru/
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