日本の暦「七十二候」とは?現代の食生活に取り入れたい、暦の味だより【9月8日~12日は草露白(くさのつゆしろし)】

更新日:2019/02/02 公開日:2018/09/10

古来より豊かな四季の恵みを享受し、同時にそれに伴う自然災害や気候の変化の対応を、今もなお避けることの出来ない日本。

そんな環境で、先人たちは自然の声に耳を傾け、寄添い、作物を作り、生き抜いて行く為の「暦」という知恵を編み出しました。

元より「食」はすべからく、自然の恵みなのですから、当たり前と言えば当たり前なのですが、その「当たり前」が中々難しい世の中になってきているのも事実です。

「はしり」「さかり」「なごり」という「旬」を表す言葉も、日常ではあまり聞かれなくなってきました。

この「暦の味だより」では、一年に一度巡り来る季節を愛しみ、旬の作物を味わってきた先人の知恵を知り、現代の生活に活かせる機会になればと願っております。

先人の知恵、日本の暦とは?


まず、日本の季節はどの様に区切られているのでしょうか。

1年を二分割した「夏至・冬至」から始まって、1年12ヶ月を四分割した「四季」、それを更に月毎に二分割した「二十四節気(にじゅうしせっき)」、更にそのひと月の前半、後半15日間を5日ずつに三分割した「七十二候(しちじゅうにこう)」まで、事細かに分けられており、その全てに美しい名前や言葉が当てはめられているのです。

何故、こんなに細分化する必要があったのでしょうか?


それは、それだけ日本の季節の移ろいが豊かであった事の証しであると同時に、その機を逃すと、作物が育たない、生活が立ち行かない、生命の危険に脅かされる、そして税を穀物で納めていた時代においては、国の存続にも関わるという切実な現実があったことも事実です。

その様な生活背景から生まれた「暦」は、先人達からの贈り物、未来への伝言といっても過言ではありません。

9月8日~12日頃の七十二候 初候「草露白」とは?


さて、毎年9月8日〜12日頃は、
季節 仲秋(ちゅうしゅう)
二十四節気 白露(はくろ)
七十二候 初候 草露白(くさのつゆしろし)です。

早朝、草木の葉や花に付いた露が白く輝き、秋の気配が感じられる時期。

そして仲秋と言えば秋も半ば。朝夕少し涼しくなって来たとはいえ、まだまだ秋を実感出来るほど涼しさを感じない方も多いでしょう。

これは、実際の日付と暦がズレているからで、あながち間違った感覚とは言えませんが、何れにしても少し暑さが緩み、心も身体もほっと一息つける時期、いわゆる「夏の疲れ」が一気に出てくる、9月はそんな季節と言えるでしょう。

9月の五節供「重陽の節供」


民間行事として、現代ではすっかり縁の遠くなった「五節供」ですが、特に一年の最後の節供、9月9日の重陽の節供の頃は、昔から「菊」や「栗」が重宝がられ、仲秋の名月の十五夜(今年は9月24日)にお供えされる「里芋」(きぬかつぎ)等を、家族や仲間が寄り集まり共に好んで食しました。

重陽の節供は、陽の極まる九という数字が重なるめでたい日とされ、また「菊の節供」とも言われている様に、「菊酒」という中国の風習が、平安時代、不老長寿を願う宮中の行事に発展し、江戸時代には庶民の間でも無病息災願い、盛んに行われました。

草露白の頃に摂りたい食材


「紫の菊(もってのほか)」
ユーモラスなネーミングを持つ「紫の菊(もってのほか)」ですが、言葉自体は「とんでもない」とか「思いのほか」と言う意味で使われます。

紫は高貴な色、そして菊は天皇家の御紋、「それを食すなんてもってのほか」という意味だとも、「食べてみたら意外に美味しかった」という意味だとも言われています。

とはいえ、この紫の菊に含まれているアントシアニンが夏の光に晒された目を労わり、抗酸化作用が夏の疲れで低下している免疫力を高めてくれます。

御浸しなどにして頂くと、シャキシャキした意外な歯触りの食感に、ついついお箸が進みます。


「栗」
脂質が少なく、ビタミン・カリウム・ミネラルが豊富な完全食と言われており、特に渋皮が有するタンニンには、血管を修復する作用が期待されます。

作るのは少し手間が掛かりますが、渋皮煮にすると、丸ごとタンニンの恩恵に預かる事が出来るでしょう。

又、少量で効率の良いエネルギー源として昔から好まれていたそうですので、おやつ代わりに栗おこわのお握りをいただいても。腹持ちの良さも、この季節のお弁当にぴったりです。


「里芋」
独特の滑りが粘膜を保護してくれます。また、菊と同様に豊富な食物繊維を含み、免疫力を高め、カリウムが体内の余分なナトリウムを排出して浮腫を軽減し、血圧の上昇を抑えます。

ビタミンB6が美肌に効果的なのは、女性にとっても嬉しい情報です。

また、特に肝機能が弱りがちなこの時期には、「梨」が、肝臓の保護、疲労回復に効果的です。そして巨峰などの葡萄もアントシアニンとビタミンが豊富で、夏の疲れには有効です。

この様な「旬」の食材は全て、その季節が育てた自然からの贈り物であり、自然がお互いに足りない物を、素晴らしいバランス感覚で補い合いながら成り立っている、自然界の恵みでもあります。

その様な物を食していれば、人は健康に生き生きと人生を歩んでいけるのではないでしょうか。

「初物を食べると寿命が延びる」という言葉にも諸説ありますが、手塩に掛けて育てた作物の初収穫には、その農作物に携わる人々の気の入りようも、一方ならぬ物だった事でしょう。

大地の〝気〟と人の〝気〟が渾然一体となった「旬」は、私たちが思うよりも遥かにパワフルで優しい人の思いに溢れている様に思います。

日々の生活に感謝を持って丁寧に過ごし、そして次の時代に伝える役目が、現代を生きる私たちにはあるのではないでしょうか?

9月長月、秋の夜長。いつもよりゆったりと時が過ぎるこの季節に、もう一度私たちの背後に続く、先人の歩んで来た悠久の時に心を馳せ、そして目の前に続く未来への道に思いを寄せて参りましょう。

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廸薫 Michikaoru

廸薫 Michikaoru

日本舞踊家
兵庫県神戸市出身。3歳より花柳流日本舞踊の手ほどきを受ける。宝塚音楽学校首席入学。宝塚歌劇団退団後、花柳流師範資格を取得。以来古典に基づく独自の舞踊活動を国内外で行う。平成17年NPO法人日本人のアイデンティティを育む会・紫薫子の会(しくんしのかい)を設立。日本舞踊のみならず、日本伝統文化の啓蒙普及活動をライフワークとして本格的な取組みを始動。日本の心を未来に伝える真の日本女性の創出を目的とする教育、日本国内外問わずレクチャー・デモンストレーション、パフォーマンスを行うと共に企業、老舗旅館にておもてなし研修・講演等も手掛ける等の活動が評価され、平成25年東久邇宮文化褒賞受賞。

「薫桜の記」~日本人よ凛とあれ~外国人になりたがっている君達へ(文芸社)
メルマガ甦れ美しい日本 廸薫の「タカラジェンヌが日本舞踊家になったわけ」連載(平河総合戦略研究所)
月刊日本舞踊 「アフタヌーンティーはいかが」連載(日本舞踊社)
同      「花ごよみ 踊りあらかると」連載(日本舞踊社)

オフィシャルブログ https://ameblo.jp/hanayagi-michikaoru/
オフィシャルホームページ http://michikaoru.net/index.html