しあわせこよみごはん~腎と生殖器/足腰を強くする食材~

【冬は腎養生!】


12月22日は冬至でしたね。

北半球では一年で日照時間が最も短い日。古来から冬至は「太陽のエネルギーが復活する日」として、どんどん陽のエネルギーが高まっていく“始まりの日”とも考えられていたそうです。

冬至の一~二週間前から

  • やたらと眠い
  • 心が焦る
  • 何だかやる気が起きない
  • 体調がすぐれない

という方がいらっしゃったのではないでしょうか。

私たちは自然の一部。暦の影響を受けて身体が調整をするため毎年のこの時期はそういった方が多くなるそうです。

頭では分かっていなくても、身体はそのように反応して次の季節の準備をしているんですね。

冬至を境に一日の日照時間は徐々に長くなりますが、冷え込みが厳しい時期はまだまだ続きます。

年の瀬も迫るこの時期は、忘年会や大掃除、新年を迎える準備と、何かと忙しいですね。そんな時だからこそ、風邪など引かず元気に過ごしたいもの。

陰陽五行では、冬は「腎(腎臓・膀胱・生殖器)」にあたるため、腎を養うことが大切です。

腎は生命エネルギーの源


冬の寒さで冷えて尿の回数が増えるといったことからもわかると思いますが、冬は、「腎(腎臓・膀胱・生殖器)」に負担がかかります。

東洋医学では、腎は”生命力の源”とも言われる非常に大切な臓器。西洋医学でいう「腎臓」の役割のみならず、東洋医学でいう「腎」には全身の健康に関わる様々な働きがあります。

その主な働きは…

1.生命力の源「精」を貯蔵する
生命活動を維持するための「精」を蔵します。親から受け継ぐ「先天の精」と飲食物から得る「後天の精」があり、どちらも腎に蓄えられて成長や発育、生殖の基礎となります。

2.水分を管理して尿を排泄する
体内の水分代謝をコントロールし、尿を生成・排泄する役割を担っています。

3.酸素を体内に深く吸い込む
呼吸は肺が行っていますが、腎はその”吸う機能”をサポートしています。肺が担っている呼吸機能は腎の支えがあって完成されます。

4.骨・髪、耳との深い関係
次回以降のコラムで詳しくご紹介します。

腎の弱り=老化現象、生殖機能の衰え

「腎」に蓄える「精(生命力の源)」が不足すると、腎のさまざまな機能が低下して不調が現れます。

体力や免疫力の低下、回復力の低下、疲労感、冷え性、むくみ…さらに進むと、更年期障害、骨粗鬆症、排尿トラブル、脱毛、健忘症、聴力の低下といった不調、ひいては老化現象を引き起こしてしまいます。

また、生殖にも関係がありますので、不妊症(卵子、精子の質の低下)、精力の減退、膀胱炎、不感症、婦人病、子宮がん、乳がん、勃起不全、前立腺肥大など、生殖器のトラブルも起こりやすくなります。

不妊は男女ともに腎の機能不足が原因とされていますので、腎の力を高めて生殖機能とホルモンバランスを整えることがとても大切です。

身体全体へ影響を及ぼす腎は冷えに弱いので、まずは身体を冷やさない工夫を!前回のコラムでご紹介した冷え性改善のケアや黒の食材もぜひ取り入れてみてくださいね。

しあわせこよみごはん 「黒い食材パワーで代謝UP~冷え性改善」

また、家でゆったりと過ごしたり、早めの就寝や睡眠時間を長くすることも腎養生です。不摂生をしないことが腎を健やかに保ち、腎の精気を蓄えて老化予防や精力増進につながります。

ゆっくりしたいし、もっと寝たいけれど、現実的に難しい…という場合は、できるだけ食事に配慮して腎の力を蓄えるようにしていただければと思います。

足腰を強くする食材は??


腎は下半身の力と関係があります。前述の、生殖に関わる機能が衰えたり、高齢になって腰や膝が曲がったりと足腰が弱ってくるのは、腎の衰えも考えられます。

高齢者ばかりでなく、便利な世の中で足腰が弱り気味で冷え性に悩まされている私たち現代人。下半身を強くするために、足と似通った形をした根菜類を取り入れていきましょう。

地中に向かって伸びる根菜は、陽性のエネルギーを持ち、細胞を引き締めて下半身の血行をよくし、土台をかためて足腰の力を養います。

根気という言葉があるように、土台となる足腰がしっかりすることで集中力や持久力もつきます。

中でも、地中に深く伸びて成長するごぼうは根菜の中で陽性が強い食材です。アルカリ性が強く抗酸化物質を多く含んでいますので、酸性に傾いたからだを中和する働きに優れています。

ごぼうと言えば、食物繊維が豊富なことはよく知られていますね。イヌリンという不溶性食物繊維が腸内の老廃物の排泄を促し便秘を解消して血液を浄化してくれます。

秋のコラムでは、食物繊維に着目し、マクロビオティックの代表料理であるきんぴらごぼうをご紹介しました。

しあわせこよみごはん~食物繊維と腸について~

ごぼうには他にも機能的な物質が含まれています。その一つが皮の茶色い部分にあるクロロゲン酸。昨今注目されているポリフェノールの一種で抗酸化作用があります。

また、クロロゲン酸はミトコンドリアの働きを活性化し、より多くの脂肪を取り込ませエネルギーへ変換できるようにするため、脂肪燃焼効果が高いと言われています。

マクロビオティックでは、一物全体の考えから食材を皮までまるごといただきます。(玉ねぎの皮やにんにくの皮などの食べられない部分は除きます)

皮や皮に近いところにビタミン・ミネラルや繊維質が多く含まれますので、洗うときはゴシゴシこすって皮をこそいでしまわないように優しく洗いましょう。

今回は、冬の時期に取り入れたい、陽性の要因をより多く加えた調理法でつくるごぼう料理をご紹介します。

材料も作り方も非常にシンプルですが、土鍋でコトコトと時間をかけて優しく煮ることで、ごぼうの硬く土臭い、、というイメージを覆す一品となります。ぜひ作ってみてくださいね。

ごぼうの養生煮


【材料(2人分)】

  • ごぼう 中2本
  • 梅干し 2、3個(大きめなら2個、中くらいなら3個が目安です)

【作り方】

① ごぼうを洗う。皮をむかずにたわしか布で表面の土を取る程度にする。

② 洗ったごぼうを長さ5センチ程度に切る。

③ 鍋に②のごぼう、梅干しを入れ、水をひたひたになるくらいまで加えて火にかける。沸騰したらごく弱火にして煮る。途中で煮汁が少なくなってきたら水を足し、ごぼうが柔らかくなるまで煮る。(目安:6時間以上)


※火を止めて煮含めたり、また火をつけたりと、1日何回かに分けてじっくり煮ると甘くなります。10時間以上煮ると、ごぼうとは思えない美味しさに出会えます!

※土鍋での調理がおすすめです。

先日、ふだん使用している土鍋にひびが入ってしまったため別の鍋で作ったところ、同じ作り方にもかかわらず別物ができてしまいました。すぐに土鍋を手に入れて作ったらいつもと同じ養生煮ができてほっとしました。

保温性に優れた土鍋は特に冬に大活躍するエコな調理器具。玄米もふっくらと炊けます。四季を問わずに使えますので、ぜひ一家に土鍋一台を!

展開料理①葛湯


【材料(1人分)】

  • ごぼうの養生煮の煮汁 90cc
  • 水 90cc
  • 本葛粉 大さじ1
  • (お好みで醤油を少々)

【作り方】

① 鍋にごぼうの養生煮の煮汁と水、本葛粉を入れ、本葛粉をよく溶かす。3、4分程度置いておくと溶けやすい。

② ①の鍋を中火にかけ、絶えず菜箸か木ベラでかき回す。

③ とろみがついてきたら弱火にして、葛が透明になるまで煮る。焦げやすいので絶えずかき回し続ける。

④ 沸騰してブクブクと泡がたった状態で1分ほど煮たら出来上がり。

⑤ お好みで醤油を少量入れる場合は、よく混ぜ合わせてからいただく。

※本葛粉は、マメ科の野草のくずの根からでんぷん質を取り出して乾燥させたものです。葛根湯でおなじみですね。からだを温める作用があり適度な水分を補給してくれる、おなかの回復薬です。

※整腸作用の高い、ごぼう、梅干、葛の組み合わせレシピです。

展開料理②焼春巻


【材料(4本分)】

  • ごぼうの養生煮 80g
  • ごぼうの養生煮の梅干 2個
  • えのき茸 80g
  • 春雨(乾) 40g
  • 白菜 80g
  • 醤油煮 大さじ1
  • 大葉 8枚
  • ライスペーパー 8枚

【作り方】

① 具材の準備をする。ごぼうの養生煮は細切りにする。ごぼうの養生煮の梅干しを叩いてペースト状にする。えのき茸は5センチ程度の長さに切り、白菜は細切りにする。春雨は戻して5センチ程度の長さに切りそろえる。

② 具材の調理をする。えのき茸、白菜の順でウォーターソテー(※)する。さらに春雨・ごぼうの養生煮・梅干・醤油を加えて炒め、水気を飛ばして仕上げる。ごぼうが崩れやすいので優しく混ぜる。

③ 水で戻したライスペーパーを2枚重ね、中央に大葉を2枚敷いて、具材を大葉の手前に置いて巻いていく。

④ ごま油を敷いたフライパンで春巻をこんがりと焼く。

⑤ そのままでも、酢醤油につけても。お好みでいただく。

※ウォーターソテーは、油の代わりに沸騰したお湯で食材を炒める方法です。フライパンや鍋の底から1センチくらい水を張り、沸騰したら具材を入れ、塩をひとつまみを振り入れ、具材を炒めていきます。

※春巻きの皮が使い切れずに余ってしまうことがよくあるので、保存がきくライスペーパーを使用しました。春巻きの皮でも作れます。

ライスペーパーは二枚重ねていますが、春巻きの皮でしたら一枚で大丈夫です。

腎の働きが活発であれば生命力も強くなり、元気に冬を乗り切れます。腎養生で身体全体のエネルギーを高め、いつまでも若々しく元気に過ごしたいですね。

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五十嵐有希

五十嵐有希

リマクッキングスクール師範科修了
KIJ レベル1修了
一般社団法人内臓マッサージ協会認定セルフチネイザン講師、チネイザンマスターコース修了、カッサセラピスト
全米ヨガアライアンス200時間修了
Under the light認定ヨガインストラクター
経絡YOGA指導者

ヨガを通してマクロビオティックに出会う。食が体だけでなく心もつくることを実感し自然に寄り添う生き方や日本の伝統的な文化を大切にしたいと思うようになる。脱ステロイドによる皮膚炎を克服し、マクロビオティックを学ぶ中でチネイザン(氣内臓)に出会い、内臓へのアプローチで心身の安定や人生の巡りが良くなることを実感。対個人のチネイザン施術やセルフチネイザンを伝えるワークショップを通して幸腹(こうふく)を分かち合う活動を行っている。ヨガの指導、マクロビオティック普及を目的としたResetプロジェクトのメンバーとしても活動中。