プラントベースの食生活の五大栄養素~無機質(ミネラル)~

前回は、食品の三大栄養素である、炭水化物・たんぱく質・脂質の代謝や役割をご紹介しました。

今回は、その三大栄養素にビタミン・無機質(ミネラル)を加えた五大栄養素から、ミネラルについて詳しくご紹介していきます。

プラントベースの食生活の場合、穀類・野菜・果物に多く含まれるビタミン・無機質(ミネラル)が、動物性食品を中心とした生活よりも不足することはあまりありません。

しかし、単品の食品では偏りがちなので、どのような食べ方が有効なのかを考えていきたいと思います。

ミネラルとは?


人の体を構成する元素、酸素・炭素・水素・窒素は、体の95%を占めています。これ以外の元素を総称して無機質(ミネラル)と呼びます。

ミネラルは単体の元素で、体の中では、他の物質と結合して存在しています。

ミネラルの総量は、体の5%、40種類あると言われており、これらは体の約0.05~2%と比較的多い「多量ミネラル(ナトリウム・カリウム・カルシウム・リン・マグネシウム)」、体にわずかにある「微量ミネラル(鉄・亜鉛・銅・マンガン・ヨウ素・セレン・モリブデン・クロム)」にわけられます。

これらのミネラルを詳しくみていきましょう。

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多量ミネラル

ナトリウム(Na)


ナトリウムは塩の成分「食塩」と思われていますが、間違えてはいけないのは食品表示の中にある「食塩」と「ナトリウム」は違う、と言うことです。

科学記号ではナトリウムは「Na」食塩は「NaCl(塩化ナトリウム)」となり、食塩にはナトリウムと塩素が含まれます。

例えば、食品の表示に「ナトリウム400mg」とあった場合には、塩素の部分の係数2.5をかけて、「400mg×2.5=100mg」、つまり1gの食塩量となります。

食塩は、細胞内外のミネラルバランスを保つために必要不可欠な栄養素ですが、摂りすぎると、むくみや高血圧などをひき起こします。日本人は、食生活で塩分過多の傾向があるため、1日6g、1食2g以下を推奨されています。

【プラントベースの食生活の場合】
サラダなどの味付けに、頻繁に塩分の高いドレッシングなどを利用すると、過剰症になりやすくなります。毎食の食塩量に注意しながらナトリウムを摂っていきましょう!

【ナトリウムの多い植物性食品】
味噌や醤油等を使った加工調味料類・わかめ等の海草類・凍り豆腐・切り干し大根・がんもどき・おたふく豆・うずら豆・そうめん・コーンフレーク・フランスパンなど

カリウム(K)


カリウムは、あらゆる細胞の正常な活動を支えます。ナトリウムと作用し、細胞内の浸透圧を調整し、水分の保持や、腎臓のナトリウムの再吸収を抑制します。尿の排泄を促すため、血圧を下げる役割もあります。

【プラントベースの食生活の場合】
カリウムの豊富な野菜の摂取が多いため、不足することはあまりないのですが、新鮮なものほどカリウムは多く含まれるので、野菜や果物はフレッシュな状態で摂取すると良いでしょう。

【カリウムの多い植物性食品】
果物やドライフルーツ類・くるみ・アーモンド・落花生・松の実・枝豆・納豆・豆腐・ぎんなん・アボカド・ゆり根・ふきのとう・よもぎ・パセリ・小松菜・しその葉・わさび・にら・モロヘイヤ・やまいも・里芋・玉露など

カルシウム(Ca)

カルシウムは、体に一番多く存在するミネラルです。カルシウムの99%は、骨や歯などの堅い組織に存在しており、残りの1%は、血液や筋肉全ての組織に存在しています。

カルシウムは、骨の形成に役立つことで良く知られていますが、その他に、血液を作る役割もあります。

【プラントベースの食生活の場合】
魚や肉・乳製品からカルシウムを摂取しない場合は、カルシウムの豊富な豆や野菜を積極的にとりいれましょう。乾物は、カルシウムの吸収を高めるビタミンDが含まれ、お勧めの食材です。

また、カルシウムはたんぱく質と一緒に摂ると吸収を高めることができます。たんぱく質の摂取も忘れずに!

【カルシウムの多い植物性食品】
小松菜・モロヘイヤ・ごま・菜の花・青梗菜・切り干し大根・焼き豆腐・生揚げ・がんもどき・木綿豆腐・ひじきなど

リン(P)


リンは、カルシウムの吸収に関わる大切なミネラルです。カルシウムとリンは、1:1の比率で摂取することが望ましいとされています。主に、骨や歯の形成や、体の中の酸とアルカリを均等に保つのに重要な栄養素です。

しかし、過剰摂取をするとカルシウムの吸収の妨げになります。また肝機能にも負担がかかります。近年、保存料でリンが使われることが多いため、加工食品をよく利用する方は、意識的にカルシウムも合わせて摂取しましょう。

【プラントベースの食生活の場合】
リンは、肉や魚・加工食品に多く含まれていますが、ぬかや胚芽にも含まれているため不足することはあまりありません。ただ、過剰摂取は腎に負担がかかるので、注意が必要です。

加工食品であれば、食品表示のリンの量を見ながら、可能な限りカルシウムと同じ比率で摂取するのが望ましいです。

【リンの多い植物性食品】
カボチャ・くわい・白菜・干しブドウ・ブロッコリー・ほうれん草・菜の花・ゴマ・松の実・アーモンド・ピスタチオ・くるみ・ピーナッツ・昆布・玄米・そばなど

マグネシウム(Mg)

マグネシウムは、骨の成分として重要です。体内のマグネシウムは、6~7割が骨で、残りは肝臓・筋肉・血液にたんぱく質と結合して存在しています。

マグネシウムは、300種類以上の酵素の働きを助ける作用もあります。不足すると動悸・不整脈・神経過敏・抑うつ症状がおこります。

【プラントベースの食生活の場合】
マグネシウムの体内の吸収率を上げるためには、リン同様、カルシウムとの摂取比率が大きく関わってきます。望ましい摂取量は、マグネシウム:カルシウム=2:1となります。

【マグネシウムの多い植物性食品】
あおさ・乾燥わかめ・ひじき・ココア・ごま・アーモンドなど

微量ミネラル

鉄(Fe)


体の70%の鉄分は、赤血球のヘモグロビンで、残りは筋肉中のミオグロビン・肝臓・骨髄の貯蔵鉄になります。鉄分が欠乏すると疲れやすくなります。

写真のカカオは、植物性食品の中でも鉄分が多いイメージがあるかもしれません。ただし、カカオには鉄分の吸収が低下するカフェインやタンニンも含まれているため、単品ではなく、色々な食品と合わせて摂取するのがおすすめです。

【プラントベースの食生活の場合】
鉄分の吸収は、動物性食品の「ヘム鉄」が良いとされています。そのため、「非ヘム鉄」の植物性食品が中心の食生活では、多めに鉄分を摂取するよう心がけましょう。鉄瓶やスキレット鍋を利用すると、微量ですがヘム鉄の吸収ができます。

また、鉄分はビタミンCと一緒に摂ることで吸収率を上げることができます。

【鉄分の多い植物性食品】
あおのり・ひじき・きくらげ・ココアなど

亜鉛(Zn)


亜鉛は、味を感じる味蕾(みらい)の形成に大切な栄養素です。すべての細胞内に存在し、DNAやたんぱく質の合成・生殖機能を正常に維持する役割があります。

【プラントベースの食生活の場合】
植物性食品では、主食となる小麦胚芽に多く含まれています。1日の推奨量は、8mgが推奨されています。小麦胚芽は、日本では男性よりも女性の摂取率が高い食品です。男性も意識的に取り入れましょう。

また、アルコールの摂りすぎは、亜鉛の排出量が増えてしまうので気をつけましょう!

【亜鉛の多い植物性食品】
小麦胚芽・ココアなど

銅(Cu)

銅は、赤血球のヘモグロビンの合成を助け、鉄の吸収をよくする役割があります。また、乳児の成長にも欠かせない栄養素です。

銅・亜鉛・マンガンなどの栄養素は、活性酸素を体から除く抗酸化作用のある「SOD(スーパーオキシドジムスターゼ)」の構成成分でもあります。

【プラントベースの食生活の場合】
銅は、植物性食品だと、ココアや豆に多く含まれています。過剰摂取で心配されることはないので、積極的に取り入れたい食品です。

【亜鉛の多い植物性食品】
ココア・カシューナッツ・ごまなど

マンガン(Mn)


マンガンは、骨の発育に欠かせないミネラルです。また、「SOD」「ピルビン酸カルボキシラーゼ」「アルギニン分解酵素」など、多くの酵素の構成成分となっています。糖質・脂質の代謝にも役立つミネラルです。お茶の玉露などに多く含まれています。

【プラントベースの食生活の場合】
植物性食品に多く含まれているため、不足は心配ないでしょう。茶葉・種実・穀類・豆類に多く含まれています。

【マンガンの多い植物性食品】
あおさ・あおのり・きくらげ・ヘーゼルナッツ・葉ショウガ・玉露など

ヨウ素(I)


体の中のヨウ素は、70~80%が甲状腺に含まれています。そのため、甲状腺ホルモンの成分として欠かせない栄養素です。

【プラントベースの食生活の場合】
ヨウ素は昆布・わかめなどの海産物に多く含まれているため、日本人の場合は不足はあまり見られません。ただし、過剰摂取は、甲状腺腫などを発症する恐れがあり、注意が必要です。

【ヨウ素の多い植物性食品】
まこんぶ・ひじき・わかめ・のりなど

セレン(Se)


セレンは、過酸化物質を分解する「グルタチオンペルオキシダーゼ」の構成成分となります。そのため、体の酸化を防ぎます。胃・下垂体・肝臓に多く含まれます。

【プラントベースの食生活の場合】
セレン濃度の高い土壌で育った植物に多く含まれます。不足すると心筋障害が心配されます。また、過剰摂取では、脱毛・嘔吐・下痢・しびれ・頭痛などの症状がありますので、適量を心掛けることが大切です

【セレンの多い植物性食品】
わさび・ケール・シシトウ・カブ・パセリなど

モリブデン(Mo)

肝臓・腎臓に含まれるモリブデンは、老廃物である尿酸を作る酵素「キサンチンオキシダーゼ」の構成成分です。主に肝臓・腎臓に含まれます。

【プラントベースの食生活の場合】
モリブデンは、動物性食品だとレバーに多く含まれますが、植物性食品では豆類・種実に多く含まれています。欠乏すると発がんの可能性が高まるので、これらの食品を積極的に取り入れていきましょう。

【モリブデンの多い植物性食品】
きなこ・納豆・枝豆・そら豆・湯葉

クロム(Cr)

クロムは、炭水化物・脂質の代謝を助ける重要なミネラルです。クロモデュリンと結合し、インスリンの作用を増強し、血糖値を正常にする作用もあります。

【プラントベースの食生活の場合】
クロムは、魚介類・肉類に多く含まれていますが、あおさ・青のりなどにも豊富に含まれています。プラントベースの食生活の場合、ヨウ素と同様に海藻類の摂取が有効です。

【モリブデンの多い植物性食品】
あおさ・青のり・昆布・ひじき・黒砂糖・青汁など

いかがでしたか。

普段耳にするミネラルも、体の中でそれぞれ役割が異なります。栄養学ではまだ未知な部分もあり研究されている栄養素も多く存在しますが、現在わかっている範囲でバランスの取れた食生活を心がけましょう!

参考文献:オールガイド食品成分表2019

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松下 和代

松下 和代

食事は、「心のこもった温かい手で」をモットーに児童養護施設に住み込みで働く。さらに、栄養士として、ミルク会社のメールマガジンの編集・栄養・保育相談を担当後、フリーで各種保育施設の献立制作や栄養相談・テレビ・雑誌・WEB等で栄養関連の執筆を行う。現在は、ライター稼業兼、こじんまりとした料理教室を主宰。栄養士・調理師・保育士・食品アドバイザーの資格所有。趣味は、ホラー漫画とフィギア集め。