黒米の色に秘められたパワー
どんな食材も、ネットショッピングなどで直ぐに試せる便利な世の中。思い立って注文しても、すぐに綺麗に包装されて手元に届きます。
あまりにもスムーズで、気にするのは生産地くらい。生産の過程までは気にしたことはあまりないのではないでしょうか。
でも、生産過程も大切なもの。実際に収穫を体験し、土のエネルギーを感じることで、よりそのパワーを実感することができます。
今回は、これからの寒い時期・冬の食材としておすすめの黒米にフォーカス。早速試したい黒米のレシピもご紹介しています!是非ご覧ください。
目次/Contents
土のエネルギーを感じながら黒米を収穫
筆者の住む利根川下流の地域は、水郷と呼ばれ、水田がさかんです。2年前の11月上旬に、黒米の刈り取り作業を体験させて頂きました。ほとんどの水田で、稲刈りはとうに終わっている時期でした。
黒米の刈り取りは、普通品種より遅いのです。この年は成長が少し遅く、刈り取りの時期に雨が続き、更に例年より遅い収穫となっていました。
最近では、道の駅や野菜の直売所でもよく見かける食材になった黒米。白米や玄米に混ぜて炊けば、もちもちっとした食感が美味しく、炊きあがった時のほんのりピンクがキレイ。
この色は見た目だけでなく、体の中からキレイを助けてくれる栄養の印でもあります。
この時お話をうかがったのは、黒米生産者の小神野さん。華道の師範でもあります。当初は食べるためではなく飾る目的で黒米を生産していたそう。しかし、黒米の魅力を知って、最終的には販売するまでになりました。
始めは飾る目的だったこともあり、田んぼアートで使われるような観賞用品種の黒米を生産していましたが、その後、原種に近い種籾を使い、EM農法も取り入れたそうです。
※EM農法とは…人間にとって有益な微生物を組み合わせて作った「EM菌」を土作りに利用して、無農薬の作物を育てる農法
品種は紫黒米。とても色が濃く、玄米や白米と混ぜて炊いても、少しの量で色づきます。黒米は、品種によって色の出かたがかなり違います。
黒米は環境変化に強く、荒れ地や無肥料・無農薬の土の中でも丈夫に育ち、干ばつや冷害にも強いです。普通品種や赤米に比べて、室温に長期間保存した場合の発芽率が高く、貯蔵性・保存性がよいそう。
また、黒米の苗はたくさん「分けつ(一つの茎からいくつも新芽が出てくること)」するそうで、このことからも、生命力が強いことが分かります。
しかし、脱粒性が強いため、実ったお米が自然と落ちやすいのも黒米の特徴。お話を聞くまで知らなかったのですが、同じ面積の田んぼで現代米と同じように植えても収穫量は半分くらいだそうです。
帰りには、根から一株黒米を頂いたので、少しのあいだ玄関に飾って楽しみました(写真下)。
黒米の栄養・効果はどうなんだろう?
黒米は、生命力に加えて栄養価もすごい。まさに、スーパーフードです。もみをとった状態で玄米と同じように精米前の状態でいただきます。精米してしまうと、黒い色が薄くなってしまい、白に近い状態になります。
黒米は、その特徴でもある黒色(青紫色)に栄養がたくさん含まれているのです。黒米の特徴であるこの青紫色は、アントシアニン、ポリフェノールの一つですね。
ブルーベリー・桑の実・黒豆・ブドウ・アサイーベリー・ビーツなどもアントシアニンを多く含む食品。アントシアニンは、肝機能の向上を助け、疲れ目に効果が高く、血管を保護、動脈硬化を予防する働きもあります。
また、ポリフェノールは強力な抗酸化作用があり、美容には欠かせない栄養素として、すっかり定着した感がありますね。
さらに、黒米は完全栄養食と言われる玄米と同じ糠や胚芽のある状態ですから、タンパク質・ビタミン群・鉄分・亜鉛・カルシウム・マグネシウムなどのミネラル、食物繊維も多く含まれています。
現代人の食生活に不足しがちな栄養素を、黒米で沢山摂ることが出来るのです。
中国や東南アジアでは昔から滋養強壮・薬膳料理として黒米が食されていたことも、その栄養分の多さを裏付けできるのではないでしょうか。
また、アジアで黒米は、「長寿米」「出世米」などと言われ、縁起の良いお米として祭儀などでも古くから使われていました。あの世界三大美女の楊貴妃が美容食としていたというお話も納得ですね。
マクロビオティックからみる冬対策に黒米を!
マクロビオティックの食事ガイドラインでは、毎日の食事の40~60%を穀物(精製せずに丸ごとをすすめる)で摂ることをかかげ、一年を五つの季節でとらえる陰陽五行の考えを取り入れています。
これからやってくる冬は、五行(木・火・土・金・水)の水の時期です。この時期は、腎臓・膀胱がよく働く半面、弱りやすくケアしたい臓器。寒さは、腎や膀胱に影響を及ぼします。
腎を温め、精気を補う食べ物としておすすめなのが、黒色食品(黒米、黒豆、黒ゴマ、ひじき、昆布など)。
また、マクロビオティックや東洋医学では、腎臓の不調は髪・爪・骨・耳などに現れるといいます。「髪は腎の華」ともいわれ、髪と腎の働きには密接な関係があるのです。
艶のある髪、爪は女性の美しさの象徴。黒米は、女性内側から綺麗になるのを助けてくれます。これからの季節、冷え対策、風邪予防、また、乾燥した外気による髪のパサつきに、黒米は最適ではないでしょうか。
黒米を使ったレシピ
そこで、黒米を使った体を温めるレシピをご紹介。
黒色食材である黒米・黒豆・玄米(玄には黒を表す意も)を使います。更に、黒豆を炒ることによって体を温める作用を促し、ご飯を香ばしく仕上げます。
生姜は体を温めてくれる作用がある一方、マクロビオテックでは生の生姜は発汗作用により熱を下げる作用があり、陰性の食べ物として捉えられています。
冬は、生姜によく火をいれて料理したり、乾燥生姜を使うと体が更に温まります。もしあれば、生の生姜を乾燥生姜に変えたレシピもおすすめです。
黒豆黒米玄米ごはん
材料
- 玄米 3合弱(約450g)
- 黒米 大さじ1~2(玄米と黒米を合わせて3合に)
- 黒豆 1/2カップ
- 水 3カップ(600cc)
- 塩 小さじ2/3
- 生姜 ひと片(すったもの)
- 昆布 5cm角
- 酒 大さじ1(いれてもいれなくても)
作り方
① 玄米と黒米は、軽く水で洗いザルにあげる。
② 黒豆は、サッと洗って水気をきり、フライパンで表面の皮がはじけるくらいまでからいりする。
③ ①と②を合わせ、お水を加えて一晩浸水させる(冬は5時間以上がおすすめ)。
④ 圧力鍋に③と残りの材料をいれ、蓋をセットして火にかける。圧がかかったら、ごく弱火にして25分ほど炊く。圧がさがったら、軽く上下を返して混ぜて出来上がり。
クッキングメモ
おにぎりにする時は、手水に梅酢を使って温かいうちににぎると、梅酢が黒米や黒豆に反応して発色がよくなり抗菌作用も期待できます。
濃縮黒米甘酒(炊飯器ヴァージョン)
寒くなってくると、自然に温かいものが欲しくなりますね。黒米で甘酒はいかがですか。
材料
- 麹 300g
- 黒米ともち米 合わせて一合(約150g)
(写真は贅沢に黒米だけで、黒米は10gくらいでも薄いピンクに。黒米が10gの時はもち米140gぐらいで) - 水 540cc(お米の3倍)
作り方
① 黒米ともち米を水で洗い、分量の水を加え炊飯器でおかゆを炊く。
② 60℃くらいになるまで冷ます。
③ ほぐしておいた麹を加え混ぜる。
④ 炊飯器を保温にセットし、濡れ布巾をかけ、蓋を半開きのまま8時間ほど発酵させます(時々途中でかき混ぜるとなお可)。
⑤ 保存容器に移し、冷蔵庫へ入れる。
濃縮甘酒にお湯を割り入れ、好みの濃度にしてお召し上がりくださいね。お好みですった生姜を。
軽く温めた豆乳などで割っても飲みやすくなります(甘酒に含まれる酵素などの成分は高い温度に弱いので、温めすぎに気をつけて)。
圧力鍋で黒米のみを炊く~応用デザート・サラダ
黒米を炊飯器や圧力鍋でまとめて炊き、保存しておくと(冷蔵庫で2~3日又は冷凍保存)、そこから、色々と展開できます。主食以外にデザートやサラダにして使うと、毎日の穀物摂取量UPにつながります。
(A)圧力鍋に、洗った黒米、水、塩をいれ、蓋をして火にかける。圧がかかったらごく弱火にして20分炊く。火からおろして5~10分蒸らす。
(水の量は、おはぎやデザート寒天に使うときは柔らかめ、黒米1合に水300ccほど。サラダに使う時は黒米1合に水1合の同量で固めに炊き時間もやや短めで、お好みの固さに。塩はどちらも1合に対してひとつまみ)
※圧力鍋がない場合は、お米の2倍の水と塩ひとつまみを鍋にいれ、沸騰したらふたをしてごく弱火で45分ほど。お鍋にもよるので、火加減、時間を調整してください。
黒米と寒天デザート
上記(A)の柔らかめに炊いた黒米に、未精製のてん菜糖30gを加えて混ぜる。器に取り分け、寒天、フルーツなどと一緒に盛り付ける。
黒米や寒天が見える程度に、豆乳又はココナッツミルク(冬は軽く温めたものを)をかける。お子さんには軽く、メープルシロップやアガベシロップを。
黒米入りサラダ
上記(A)の固めに炊いた黒米(余計な水分はとばしておく)に下味(酢・オリーブオイル・軽く塩こしょう)をつける。
お好みの野菜を黒米と和え、下味で使った調味料を全体にドレッシング(写真はレタス、パプリカ、コリンキー、茹でた黒豆、塩麹に一晩つけた豆腐、素揚げカリカリゴボウ、黒ゴマ)。
梅酢とメープルシロップでつけておいたみょうがに切り込みをいれて、黒米をつめてみました。
黒米を残していきたいと生産してくれる人がいて、その食材を美味しく料理して、食べてくれる人が健康に。よい循環につながっていくと良いですね。
まずは黒米をスプーン一杯をいれてご飯を炊くことからはじめてみませんか?
【大好評のベジレシピ一覧はこちら】
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