猛暑続きの夏、クーラーは控えめでも大丈夫! 体温調節には熱を逃がす苦味のある食材で~しあわせこよみごはん~

短かった梅雨が明けて以来、猛暑続きの日々。夏バテや日射病などで調子を崩されている方も多いのではないでしょうか。

異常気象という言葉をよく耳にしますが、局地的な豪雨や気温40度超えのニュースなど、穏やかな四季の変化を楽しめたはずの日本の気候も、年々様変わりしているようです。

そうした変化に身体をついていかせるにはどうしたら良いのか、これは自然の摂理に従って生きていくより他はないのではと思います。

実際、今年は青梅の収穫が数週間早く、夏野菜もいつもよりかなり早く出回っていました。

こうした夏野菜を早目に摂り入れたならば、身体を適度に冷やし、猛暑の前に夏の暑さを過ごしやすくする準備をしてくれたことでしょう。

陰陽五行での「夏」とは

陰陽五行での「夏」は「火」のエネルギーの時期。燦々と照りつける太陽で、天から降り注ぐ陽の気はピークを迎えます。

大地からは拡散・膨張のエネルギーが放出されるように、草木がグングンと育つ活発な時期です。草が生い茂り土地をカバーすることで保水力を高め、容赦なく注がれる太陽で土地が乾いていくのを防いでいます。

そのため種類にもよりますが、草は根こそぎ抜かず、土の表面でギリギリにカットし、草はその場において土地の乾燥を防ぐ方法もパーマカルチャーなどで伝えられています。

(根を残す理由の一つには、乾燥を防ぐだけでなく、土中の微生物の世界を壊さないようにするという大切な考えもあります。)

人間の体では、真中に位置する「心臓・小腸」の働きが活発化していきます。

本来の機能に滞りがなければ、血液や循環器系はともに促されてよく巡り、人々も活動的に動くため汗を流し、体に溜まった熱も汗とともに放出され、気化熱で身体を冷やすことができます。

昼間は良く動くため、夜は早めの深い睡眠で疲れを取り、朝日が昇るとともに起床し1日がはじまる。そうしたサイクルは理想的ではありますが、現代の都会的な暮らしでは難しい面が多いのも事実です。

暑い日差しの中、汗をかきながら駅まで着いたと思えば、キンキンに冷えた通勤電車の中でホッとしつつも、そのうち汗が冷えて身体が芯まで冷える。

今度は電車から降りて、暑い日差しで身体も温まったかと思えば、クーラーの効き過ぎたオフィスで冷え込み、循環器系が滞り身体が重くなる。

暑さ寒さの繰り返しが一日の中に何度も起きてしまうと、自律神経の調子も崩れて、うまく汗がかけません。そのため熱が体内にこもったり、睡眠障害が引き起こされて不眠になるケースもあります。

クーラーをつけっぱなしで寝てしまい、夜中に汗をかけず熱が体内にこもり、朝起きたら体が重く浮腫んでいるというような経験を、皆さんお持ちではないでしょうか。

陰陽五行による「火」のエネルギーは、身体の部位では「心臓・小腸」と関係があるように、それぞれ関連する味・色・食物・調理法などがあります。

それらの考えを食生活に取り入れると、季節の変化に自然と身体が調和しはじめて、滞りが徐々に少なくなってくるのです。

「火」のエネルギー

  • 味:苦味・スパイシーな辛味
  • 色:赤・深い緑
  • 食べ物:とうもろこし・アマランサス・キヌア・たかきび・寒天・海苔・金時豆・八丁味噌・苦味のある食材(豆腐・セロリ・パセリ・人参葉など)・
  • 夏野菜(胡瓜・トマト・茄子・ピーマン・オクラ・ゴーヤなど)
  • 調理法:生野菜のサラダ・さっと炒める・さっと揚げる・プレスサラダ(浅漬け)・お浸しなど

苦味食材の効能

苦味のある食材の効能は、鎮静・止血・強心・消炎などがあり、「火」のエネルギーで活発化しすぎた心臟や小腸の働きを抑える役割があります。

また排泄・利尿作用も高いので、夏の湿気で汗をうまくかけず浮腫んで、熱が体内に滞ってしまう方にもオススメの食材です。

苦味のある食材は、火をうまく使うことで甘味に変換することもできます。さっと炒めたり、揚げたりする調理法で苦味を抑えると、ゴーヤやピーマンなどが苦手な方も食べやすくなります。

また、にがりを使用した豆腐も同様の効果がある上、陰性の大豆が原料であるため、身体をクールダウンさせるには最適の食材といえます。火傷をした指をそのまま冷たい豆腐にさしておくと、腫れを防ぐ効果もあるほどです。

冷奴は身体を冷やすので、一度少しだけお湯にくぐらせたものをいただいたり、大豆のタンパク質を分解するための生姜やネギを添えていただくのも、昔からの大切な知恵です。

苦味のある食材は、心臟や小腸の働きを抑えて血液の熱を下げるため、摂りすぎには注意が必要です。胃や肺・大腸などを冷やし、消化不良となってしまうこともあります。

特に冷え性の方は、心・小腸を活性化する唐辛子やニンニク・生姜・ネギなどを加え、胃腸に優しい甘味を組み合わせることで、身体への負担が少ないお料理に仕上がります。

今回は、苦味のある夏野菜やお豆腐を使った夏らしいレシピを2品ご紹介したいと思います。

ゴーヤのスパイス炒め


【材料(4人分)】

  • ゴーヤ(5mm幅に切る) 1本
    ※ゴーヤが苦手ならば、ピーマン5個で代用可。その場合は種とワタも一緒に使用し、大きめにカット。
  • トマト(1cm角に切る) 半分
  • 赤玉ねぎ(粗みじん切り) 1/4個(粗みじん)※玉ねぎで代用可
  • ニンニク(みじん切り) 1/2片
  • カレー粉 小さじ1/2〜1程度(お好みで)
  • 醤油 小さじ2
  • みりん 小さじ1.5
  • 塩 少々
  • 胡麻油 大さじ1
  • 白胡麻もしくはヘンプシード 適量

【作り方】
① ゴーヤは縦半分に切ってワタを取りのぞき、5mm幅にスライスする。塩少々(分量外)をふり軽く手で揉んで、10分ほど置いておく。(もし苦味が苦手な方は、塩と一緒に少しきび糖を足して揉むとより苦味が和らぎます。)

ピーマンの場合はヘタを取り、種の部分はそのまま8等分程度にカットしておく。

② フライパンに胡麻油とニンニクを入れて火をつけ、弱火でゆっくりと温度を上げていく。ニンニクの香りが出てきたら、赤玉ねぎと塩を加えて軽く水分が出るまで中弱火で炒める。

ある程度しんなりしたら、カレー粉を入れてひと炒めし、トマトを入れて中火でよく炒める。

③ ②のフライパンの中身を端に寄せて、水分をキッチンペーパーなどでよく拭いたゴーヤを入れてから、端に寄せた中身をゴーヤの上にかぶせるようにする。数分そのままでゴーヤによく火を通し、焦げる前に全体をざっくりと炒めていく。

ピーマンの場合もゴーヤと同様だが、あまり火を入れすぎずさっと炒めて仕上げる。

④ ある程度全体に火が通ったら、醤油を回し入れてひと炒めしつつ味の調整をし、最後にみりんを回し入れてさっと火が通ったら、皿に手早く盛り付ける。トッピングに白胡麻かヘンプシードをお好みでかける。

苦味のゴーヤ(またはピーマン)・辛味のカレー粉とニンニク・甘味の玉ねぎとみりんで、3種の味をバランスよくまとめると、夏にぴったりの一品となります。

スパイスが苦手な方は、麦味噌と生姜を代わりに入れて炒めても美味しく仕上がります。その際は少しみりんの量を増やして甘辛に仕上げても美味しいかもしれません。

苦味青菜の胡麻白和え


【材料(4人分)】

  • 青菜(ほうれん草) 一束 ※この時期に収穫される青菜なら、ほうれん草・小松菜・つるむらさきなど何でもOK。
  • しめじ(石づきを取って、軽く茹でておく) 1/2パック
  • 木綿豆腐(湯にさっとくぐらせて、水切りしておく) 1/2丁
  • 白味噌 大さじ1強
  • 薄口醤油 小さじ2
  • 白胡麻ペースト 大さじ1.5
  • 煎り白胡麻 大さじ1
  • 柚子果汁 適量
  • 柚子胡椒 お好みで

【作り方】
① 鍋のお湯を一度沸騰させてから弱火にし、木綿豆腐を入れて5〜6分火を入れてから取り出し、水切りをしておく。

(夏の食材は傷みやすいのと、陰性すぎる豆腐を少し陽性にする意味がこの火入れにはあります。必要でない場合は、そのまま水切りしていただいても大丈夫です。)

② 青菜はよく洗う。沸騰したお湯に塩を入れ、泡が立たない程度に火を弱めて、ゆっくりと青菜を茹でていく。さっと両面をお湯にくぐらせたら、盆ざるにあげて塩(分量外)を少しふり、うちわで扇いで冷ましておく。

(水溶性のビタミンが溶け出してしまうので、冷水に浸して冷まさない。)

③ すり鉢を用意し、炒り白胡麻を香りが出るまで軽く摺り、白胡麻ペースト・白味噌・豆腐・醤油・柚子果汁の順に入れて、その都度よく混ざるように摺る。

④ ②の青菜が冷めたら、軽く絞り食べやすい長さにカットしておく。③のすり鉢に、青菜と同じ長さにカットし、茹でておいたしめじと一緒に入れてざっくりと混ぜ合わせたら、盛り付ける。お好みで柚子胡椒を添える。

夏の暑さが大の苦手だった私も、今はほとんどクーラーいらずで生活できるようになりました。それまでは汗をかくことができず、体内に熱がこもってしまう体質だったのです。

食事を変えていくうちに、生活全般を見直すようになり、体質も少しずつ変化してきました。

料理も体質・体調に応じて、いろいろと工夫が必要です。

もし、クーラーの効いたオフィスで日々生活をされている方であれば、体が冷え切っているかもしれません。そんな時は、お風呂に入ってしっかり汗をかき、コトコト鍋で火を入れた根菜類などが美味しいと感じるでしょう。

夏だから、ここでオススメしたレシピが誰にでも合うということはなく、まずは自分の身体の声を聴くというのが一番大切です。

都会暮らしのように自然と調和しづらい生活の中でも、ご自身の体質・体調に合わせ、「しあわせこよみごはん」の記事で実践できることを、少しずつ取り入れていただけたら幸いです。

応用レシピでは、柑橘のソイヨーグルト・ムースをご紹介いたします。

アイスやカキ氷のように急激に身体を冷やすことのない、少し穏やかなスイーツです。使用する果物を変えれば、また違った味や見た目になるので、応用も楽しめます。

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大槻広子

大槻広子

KIJ(クシマクロビオティック)公認インストラクター
リマクッキングスクール師範科修了
JAMHA認定 ハーバルセラピスト

都内や横浜のマクロビオティックレストランやオーガニックカフェで経験を積み、現在は自宅サロン「Tsukinoki」で料理教室やイベントの開催したり、個人でパーソナルシェフとして活動中。地域に根づいた自然に寄り添う暮らしを目指しながら、日本の文化を見直すきっかけを「食」を通じて紹介している。