「気血水」「陰陽五行」って?知っておきたい漢方の基本と薬膳の話

「漢方」と聞くと、漢字で書かれた古い看板と薬草のイメージで、中国の言葉の様に思われていますが、漢方とは古代中国医学の知識をもとに、日本で作られた言葉です。

漢方は、自然とのバランスを保ちながら生命力・自然治癒力を高めていく考えが基本です。

今回は、漢方の基本の考え方をわかりやすくご紹介していきます。プラントベースの食生活の方も参考にしてみてください。

漢方とは

「心身一如」のバランス


漢方の基本は、「人間の体も自然の一部」という考え方。

病気を診る場合もその症状だけを「見る」のでなく、その人のおかれる環境を通じて、心も体も連動した「心身一如」のバランスを診て治癒していく思想です。

そのため、同じ病気であっても処方される漢方薬は違うものであることも。

また、ゆっくりと時間をかけて自然生薬を利用するのも特徴の一つです。

天然由来の生薬を使って

漢方で得意とされるのは、いわゆる「未病」と呼ばれる、原因がわからずに「なんとなく調子が悪い状態」です。

漢方薬は、患者さんの状態を全体でとらえ、「養生」させていきます。

この「養生」とは、文字通り「命を養う」ということで、真の健康にむかって生命力を高めていくことです。

この天然由来の生薬を使って体を養生させていくのが「漢方薬」となります。

食べる薬の薬膳料理

食養生の一つ「薬膳」とは


養生の中には、食事を通じて生命を養う「食養生」があります。

「薬膳」とは、この食養生の一つであり、体質・症状・体調・季節を考慮して食材を選び、レシピを作る料理です。

正気を補い、邪気を取り除くことを目的とし、健康増進や病気の予防・治療をしていきます。

「薬食同源」の考え

漢方で使われる薬は、化学的に作られたものではなく、天然由来のもののため、薬・食材どちらも「食べ物」で、区別がありませんでした(薬食同源)。

そして、長い経験の中から、どの食材が毒があるか、安全か、どの量をどれだけ使うと体に変化があるのか等を学び、数々の食材から、「食物として明確なもの(食材)」「薬効が著しく病気を治すのに利用できるもの(生薬)」「食材としても生薬としても利用できるもの(食薬)」に分けられていきました。

陰陽五行と気血水

「陰陽五行」とは


「陰陽」とは、古代中国の自然哲学の思想です。これは、漢方の養生学の基本になっています。

陰陽は、静的なもの(陰)と動的なもの(陽)の二つのことで、森羅万象はこの二つで成り立つとされています。陰陽は、全ての事象であり、対立し、依存し、消長し、転化します。

漢方においては、この陰陽の考えが、体の生理・病理の説明・薬物の分類に利用されています。(例えば、上の写真の様に、豆の色でも黒白の陰陽があります)

「五行」とは、中国医学の理論の自然観のひとつで、万物が「木」「火」「土」「金」「水」の5つの要素から成り立っていると考える思想です。

これらは、

  • 五臓(肝・心・脾・肺・腎)
  • 五腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱)
    の体の機能や生理機能から、
  • 五志(怒・喜・思・悲・恐)の情緒
  • 五気(風・熱・湿・乾・寒)の外気
  • 五色(青・赤・黄・白・黒)の色
  • 五味(酸・苦・甘・辛・鹹)の味
  • 五性(寒・涼・平・温・熱)の性質
  • 五根(目・舌・口・鼻・耳と二陰)の感覚機能
  • 五支(爪・顔面・唇・毛・髪)の五臓の症状
  • 五体(筋・血脈・肌肉・皮・骨)の体の構成要素
  • 五液(涙・汗・よだれ・はなみず・唾)の体液
  • 五季(春・夏・土用・秋・冬)の季節
  • 五方(東・南・中央・西・北)の方角

など、様々な要因と関係しています。

漢方では、この五行の特性と他との関係性やバランスを、個々の症状やタイプと合わせて診ることで、どの部分がバランスを崩し、症状がでているのかを判断します。

「気・血・水(き・けつ・すい)」とは


漢方にふれていくと「気・血・水」という言葉を耳にすると思います。この「気・血・水」の3つは、人の体の構成要素と考えられています。

「気」は、人体の生命活動の基本で、活力のエネルギーの元になります。

これには、生まれる時に親から受けた先天的な気と、その後に得た後天的な気があり、後天的な気の中には、大気や日光の「天の気」と、飲食物からの「地の気」の二つがあると考えられています。

「血」は、西洋医学における血液の血とは、少しイメージが異なります。「全身に栄養を供給しうるおす」ことと、「精神活動の基礎物質となる」という二つの働きがあります。

「水」は、津液とも呼ばれ、体内の水分のことを言います。水は、全身をうるおし血の材料ともなります。このうるおいが不足すると、乾燥してのどが渇いて咳が出たり、便秘を引き起こしたります。

さらに、陰陽を合わせると「気」は陽の分類で「血・水」は陰の分類となります。

また、五行の中でも、五季の「夏」の季節には、一般的に太陽の熱で体の水分が出やすくなります。また汗をかきにくい「冬」の時期は、体に水分がたまりやすくなります。

漢方では、このように病気や症状があった場合、病気そのものだけで判断をするのでなく、置かれた環境と個々人の状態など「気血水の考えと陰陽五行の考えを合わせ、全体でとらえ、それにあった養生をする」のが基本の考え方と言えます。

プラントベースの食生活における漢方


漢方の薬膳では、全ての食材を利用し丸ごと食べる事が基本です。

それは、森羅万象の中にある「人」も一つの小宇宙と考え、人の体も全てのものをとり入れるという考えで、食材を利用していくからです。

ただ、漢方では、バランスをくずした時に不調が起きると考えるので、摂りすぎや、食べすぎはしません。

近年増加してきた食物アレルギーや、現代病と呼ばれる高血圧・肥満・糖尿病などは、もしかすると、宇宙全体で食べ物のバランスを崩してきた流れの一つなのかもしれません。

様々な理由でプラントベースの食生活をおくる方が漢方や薬膳料理をとり入れる場合は、漢方には天然由来のものでも動物性の生薬が使われていることがあるので、気をつけてください。

食材の持つ働きの五行

食材を知る手がかりは、「五味」と「五性」に分けられます。これは、他の五行とも関連していて、体の不調により、欲しくなったり、必要になったりする食材の手がかりになると言われています。

筆者がこちらのサイト内で薬膳レシピをご紹介する際は、食材の五味と五性も合わせて書いておりますので、参考までにご覧ください。

五味の説明

五味の味は、それぞれその食材の持つ特徴的な味を表しています。五臓と関連していて、その時の体調によって、その味が欲しくなったり、強く感じたりします。

  • 酸味・・・気血水の漏れをとめ、引きしめる効果があります。
  • 苦味・・・熱を冷まし、湿を取り除き、便を下し、上がった気をおろします。
  • 甘味・・・滋養強壮。痛みを和らげる効果や食材の調和、脾胃の調和もはかります。
  • 辛味・・・発汗作用で外邪を発散させ、気・血を巡らせます。
  • 鹹味・・・塊や固い物を柔らかくし、便を下して出します。

五性の説明

五性は、食材の持つ、体を冷やしたり、温めたりする性質です。季節と関連していて、その時の体の状態に合わせて、必要な食材を利用する助けになります。

  • 寒性・・・体を冷やし、鎮静・消炎作用があります。
  • 涼性・・・寒よりおだやかに体を冷やします。
  • 平性・・・ちょうど平均的に、どちらにも偏らない常食の食材です。
  • 温性・・・熱よりおだやかに体を温めます。
  • 熱性・・・体を温め、興奮作用があります。

★ライフスタイルに漢方を利用する場合は、漢方を専門とした資格のある方に、ご自身のタイプや症状を聞いて利用してください。

参考文献:
始めての漢方ライフ(主婦の友社)
漢方基礎講座(NIHONNDO漢方スクール)
漢方養生指導士養生総論(NIHONNDO漢方スクール)

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松下 和代

松下 和代

食事は、「心のこもった温かい手で」をモットーに児童養護施設に住み込みで働く。さらに、栄養士として、ミルク会社のメールマガジンの編集・栄養・保育相談を担当後、フリーで各種保育施設の献立制作や栄養相談・テレビ・雑誌・WEB等で栄養関連の執筆を行う。現在は、ライター稼業兼、こじんまりとした料理教室を主宰。栄養士・調理師・保育士・食品アドバイザーの資格所有。趣味は、ホラー漫画とフィギア集め。