膵臓と血糖値/膵臓をいたわる甘い野菜のスープ~しあわせこよみごはん~

気づけばあっという間に今年も10月半ばを過ぎ、秋の土用の時期になりました。

土用とは季節の移り変わる期間で、立春・立夏・立秋・立冬の前約18日間のことです。この時期体の中では、胃・膵臓系の臓器が活発に働きます。

詳しくはこちらの記事にぜひ目を通してくださいね。
マクロビオティックにみる季節の食べ方・季節の変わり目「土用」~しあわせこよみごはん~

今回は土用の時期に活発に働く膵臓と、血糖値についてのお話、膵臓を癒やす甘い野菜のスープをご紹介させていただきます。

血糖値のコントロールをしている膵臓


私たちは、体の中の様々な条件を常に同じ状態に保とうとしています。

例えば、夏は汗をかいて熱を発散し、冬はブルブル震えて熱を産生することで、1年中ほぼ同じ体温を保っています。

血糖値(=血液中のブドウ糖の濃度)も、一人ひとりがそれぞれちょうどいい濃度に保たれていることが必要です。

血糖値をいつも安定した状態にしておくために、体の中で様々な臓器が働いています。

膵臓は血糖値をコントロールするメインのホルモンを分泌して、血糖値が上がりすぎないように、下がりすぎないようにとバランスをとっています。

膵臓と甘味


陰陽五行では、膵臓をいたわるのは「甘味」といわれています。

ちょうどこの時期に旬を迎える、かぼちゃやさつまいも、栗なども甘くて美味しいですよね。他にも、この時期旬の甘い野菜としては玉ねぎやカブ、にんじんなどが挙げられます。

これらの野菜のやさしい甘さや、穀物をよく噛んだときのおだやかな甘味は、じんわりと私たちを癒やしてくれることでしょう。

単糖類や多糖類


甘味といっても、精製された砂糖や清涼飲料水などは吸収がよすぎるため、逆に体の負担になってしまいます。

ここで甘味について、単糖類や多糖類という視点から少し見てみましょう。

糖質には単糖類や二糖類と呼ばれる構造がシンプルなものから、多糖類と呼ばれる構造が複雑なものがあります。

単糖に近ければ近いほど消化吸収が早く血糖値が急激に上がりやすく、多糖類は分解して吸収するまでに時間がかかるので血糖値も緩やかに上昇していきます。

多糖類はデンプン質を多く含むもので、お米などの穀物や野菜に多く含まれています。お米はよく噛めば噛むほど甘さを感じますよね。甘味料としては、穀物からできる甘味料の米飴や甘酒などがあります。

血糖値の激しいアップダウン

精製された糖分を多量に摂取すると、血糖値が急激に上昇するので、上がり過ぎてしまった血糖値を今度は急いで下げなければなりません。

膵臓はインスリンというホルモンをたくさん分泌して急いで血糖値を下げようとします。すると、今度は過剰に分泌されたインスリンにより血糖値が急激に下がります。

血糖値の急激な低下に脳が強い危険を感じ、すぐに血糖値をあげるように糖分(すぐに吸収できる単糖類など)を欲します。

そこで精製された糖分を摂取すると、また血糖値は急激に上がり、そして上がりすぎたためにまた急いで下げるというリズムが繰り返されてしまい、激しい血糖値のアップダウンがおこります。

このように、ジェットコースターのような上がり下がりが急激に繰り返されることにより、血糖値を調整する機能がオーバーワークとなると、血糖コントロールがうまくいかなくなってきます。

体にとって大きな負担になりますし、血糖値のアップダウンとともに気分の上がり下がりも激しくなり、精神的にも不安定になる可能性があります。

血糖値のコントロールがうまくいかないと

血糖値を下げるインスリンというホルモンが出ない、または効きが悪くなってしまった場合、血糖値を下げることができなくなり、血糖値が高いままの状態になります。これが糖尿病です。

また、反対に、インスリンが出すぎる、または効きがよすぎると、血糖値が急激に低下したり、低い状態でとどまってしまい低血糖症となります。

現代人の7割~8割は低血糖症や糖尿病の予備軍ともいわれています。

強い甘みを欲するのは


ここで少し視点を変えてみましょう。そもそも精製された砂糖やお菓子、清涼飲料水などの強い甘味を欲するのはなぜなのかというところをみていきます。

これには様々な理由が考えられますが、ひとつは動物性食品や強い塩気によって、締まりすぎた筋肉や細胞をゆるめたいからということが考えられます。

マクロビオティックでは、甘味には体を緩めたり冷やしたりする働き、動物性食品や塩気には体を締めたり温めたりする働きがあると考えています。

つまり強い甘味を欲するというのは、実はそれだけ動物性食品や塩気で体が硬く締まっているからという見方もできます。

特に、鶏肉系や卵・魚卵・チーズ類・甲殻類、オーブンで焼き締めたクッキーなどの粉製品は、膵臓を硬くすると考えられているので、とりすぎには気をつけたいところです。

膵臓をいたわる甘い野菜のスープ


硬く締まった膵臓を和らげて、血糖値を安定させるのに効果的なマクロビオティックの代表的なスープです。

甘いものに対する欲求を満たして、単糖類などの強力な甘味の欲求を減らすのにも有効とされています。

今回は玉ねぎ・キャベツ・かぼちゃ・にんじんで作りますが、他の野菜でも大丈夫です。大根やりんご・れんこんなどを入れることもあります。

【材料(水800cc分)】

(材料はすべてみじん切りにしたもの)

  • 玉ねぎ 50cc
  • キャベツ 50cc
  • かぼちゃ 50cc
  • にんじん 50cc
  • 水 800cc(野菜の合計の4倍程の量)

【作り方】
① 野菜をすべてみじん切りにする。

② 鍋に玉ねぎ・キャベツ・かぼちゃ・にんじんの順に下から重ね入れ、水を静かに回し入れる。

③ 火にかけ沸騰したら弱火にし、30~40分ほどコトコト煮る。※ふたはしないです。

④ 熱いうちにザルなどで野菜を濾し取り、濾したスープだけをのみます。※塩もいれないです。

※一度に1カップ弱くらいを、空腹時、食感に飲みます。濾しておき冷蔵庫に入れて2日ほど保存も可能です。飲む時は都度小さな鍋で温めなおしてください。また、飲んでおいしいと感じない時はその時の体に合っていない可能性があるので、飲まないようにしましょう。

※スープを濾したあとに残った野菜は、旨味や栄養は抜けてしまっていますが、おやきやハンバーグ等の具材にすると無駄なく活用できます。

秋の土用が終わると、立冬。こよみの上ではもう冬がはじまりますね。

しあわせこよみごはんがスタートしてから丸1年が経ちました。

季節のうつろいとともに、自然はいつも私たちに必要なものを必要な時期に用意してくれているなぁと改めて気付かされた1年間でした。

自然のすばらしさに心から尊敬と感謝の気持ちを込めて、どうか皆様によい季節が訪れますように。

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清野利佳

清野利佳

リマクッキングスクール師範科修了
アンダーザライトヨガスクール ティーチャートレーニング、ホリスティックフードトレーニング修了

新潟の温泉宿で生まれ、湯治文化の中で育つ。
自然や食を大切にする母の影響でマクロビオティックと出会い、食と体と心のつながりを深く実感。
また、マクロビオティックを実践する中でヨガと出会い、体と心、生き方が軽やかになる感覚を体感する。
自身の心身の変化を通じ、食の大切さや面白さを大きな視点で伝えたいと、日々学び、活動している。