真っ赤な野菜「ビーツ」の栄養とビーツの3つのヴィーガンスープ~野菜とレンズ豆のボルシチ・桃色ビシソワーズ・ビーツのけんちん汁~

ビーツは、晩秋のこの時期には生で出回ってくる旬の野菜です。同種には、甘味料の甜菜糖の原材料になるビートもあります。

どちらも甘みが強く、特にビーツはオーブンでトーストすると、ジャガイモに似たホクホクとした食感になります。

また似た姿の野菜に、赤カブもあります。

今回は、冬が旬で栄養価も高く、とっても魅力的な食材のビーツを使った3種のヴィーガンスープレシピと、ビートや赤カブなどの違いをお伝えします。

ロシア料理ボルシチで使われる「ビーツ」と甘味料の「ビート」そして「赤カブ」との違いは?


ビーツとは・・・
ロシア料理のボルシチに使われる赤い野菜のビーツは、ホウレンソウと同じアカザ科です。地中海沿岸が原産国で、和名では「火焔菜(カエンサイ)」と呼ばれています。ちなみに、アメリカでは「テーブルビート」、イギリスでは「ルートビート」。

日本には、古く江戸時代からあったようです。旬の時期は、初夏の6~7月と晩秋の11月~12月になります。

ビーツは、切ると真っ赤な汁があふれ、「食べる輸血」とも呼ばれるほど、鉄分をはじめミネラルなどの栄養価に富んでいます。

「テーブルビート」とも呼ばれるため、ビートと混同しやすいのですが、色はビートよりも濃い赤色をしています。近年では、スーパーフードの一つとしても扱われています。

ビートとは・・・
ビートは、甘みが強く、砂糖の原料となる「甜菜(てんさい)」でビーツと同じアカザ科の仲間です。一般的には「サトウダイコン」と言われます。

赤カブとは・・・
赤カブは、アブラナ科です。アブラナ科の赤カブの赤色色素は「アントシアニン」。こちらはポリフェノールの一種で、ブドウなどにも含まれている色素です。

また、カブの場合、鉄分は主に根よりも葉に多く含まれています。

ビーツに含まれる栄養素

ビーツは、赤カブに姿が似ているため、栄養成分も赤カブと同じと思われがちです。またその甘さから、高カロリーで糖質も多く感じられるため、糖質制限をされている方には懸念されてしまいます。

しかし、ビーツは根菜類でありながら、ジャガイモやサツマイモよりも低糖質でカロリーも低く、ビタミン・ミネラルの豊富な野菜なのです。

食べやすい鉄分のビーツ


ビーツの栄養価はホウレンソウに近く、鉄分が豊富に含まれています。茹でたビーツに含まれる鉄分は、100gで0.4㎎です。

一見少ないように見えますが、ビーツの重さは、一つ200g程度。そのため、ビーツを半分食べると0.4㎎摂ることができます。

100gあたりの鉄分が多いと言われるシソには、100g中1.6㎎の鉄分が含まれます。しかし、シソは2枚食べて1g。ビーツ半分の0.4㎎の鉄分をシソで摂るには、50枚近くのシソを食べなければいけません。

このように重量あたりの鉄分を考えると、ビーツは根菜類のため、無理なく鉄分を摂ることができるのです。

トマトやニンジンと違うビーツの赤色


赤い色素には色々な種類があります。

よく聞く栄養素では、トマトやスイカに含まれるカロテノイド系の「リコピン」や、オレンジに近いニンジン・カボチャの色素に含まれる「βーカロテン」があります。他に、唐辛子の赤に含まれる「カプサンチン」などもあります。

そして、ビーツに含まれる赤は、赤カブと同じ「アントシアン系」の色素です。赤カブの色素は、「アントシアニン」。

一方、ビーツの赤は、同じアントシアン系の色素でも、赤い「ベタシアニン」と黄色い「ベタキサンチン」が含まれています。

これら二つは、総称して「ベタレイン色素」と呼ばれ、高い抗酸化作用があると言われています。

この色素はビーツ由来の物で、実はまだまだ未知の部分があるため、今後の臨床研究の成果を期待したいところです。

ビーツの栄養成分

茹でた状態で、100g中、
エネルギー42㎉・たんぱく質1.5g・リン29㎎・マグネシウム22㎎B1 0.04㎎・B2 0.04㎎・ナイアシン0.2㎎・B6 0.05㎎・葉酸110㎍・パントテン酸0.31㎎・ビタミンC3㎎・カリウム420㎎・ナトリウム38㎎・カルシウム15㎎・ナイアシン0.2㎎・食物繊維2.9g
となります。

(出展:野菜ガイドブック「女子栄養大学出版部」より)

特に栄養素として多く含まれているのは、カリウムです。カリウムは塩分濃度の調整に役立ちます。

色素系の栄養素との相乗効果により、ビーツにはむくみ解消・高血圧予防・殺菌効果などが期待されています。

生のビーツを食べるならスープがお勧め

生のビーツが手に入ったならば、余すことなく食べられるスープがお勧めです。

ビーツは、皮をむいてからゆでると色が落ち、合わせて栄養素も出ていってしまいます。そのため、下処理する際は、塩を加えた水から皮のまま茹でて、その後皮をむき使います。

少し手間がかかるこの作業、スープであれば赤い汁ごと一緒に食べられるので必要がなく簡単です。

特に冬は、あったかなビーツのスープの赤い色が食欲をそそります。今回は、ビーツと野菜で作ったヴィーガンスープを3つご紹介します。

桃色ビシソワーズ


ビシソワーズは、じゃがいもを使ったスープ。そこに、ビーツと豆乳・甘酒を加えることで、シンプルだけどまろやかで深い味になりました。

栄養価は少し変わりますが、ビーツの代わりに赤カブを使うと、薄いピンク色に仕上がります。

材料(4人分)

  • ビーツ(皮をむいて薄切り) 100g
  • ジャガイモ(皮をむいて薄切り) 1個
  • タマネギ(繊維にそって薄切り) 中半分
  • 豆乳 40㏄
  • 甘酒 40㏄
  • 塩 小1/2
  • 水 1と1/2カップ~

作り方
① 切った野菜を水で柔らかくなるまで茹でる。

② ①をミキサーで滑らかにする。

③ ②に甘酒・豆乳を加えて再びミキサーにかける。この際、野菜の煮え具合の水分量と調節しながら甘酒・豆乳・水をお好みで加えていく。
④ 最後に塩を加えて味を調える。

野菜とレンズ豆のボルシチ

材料(4人分)

  • ビーツ(皮をむいて1cmの角切り) 100g
  • レンズ豆 (茹でた状態で)1/2カップ
  • タマネギ(1cm角切) 70g
  • ニンジン(1cm角切) 40g
  • セロリ(1cm角切) 20g
  • キャベツ(一口大に切る) 50g
  • カットトマト缶 1カップ

(A)調味料

  • 塩 小1/2
  • コショウ 少々
  • ベジタブルブイヨン 小2
  • 水 3カップ~

作り方
① 野菜を鍋に入れ、レンズ豆・カットトマト・水・ベジタブルブイヨンを加える。

② 沸騰するまで強火、沸騰したらあくを取り再び弱火で20~30分煮込む。

③ 途中水分が減ったら足して、丁度良い固さになったら火を止めて塩コショウする。

ビーツのけんちん汁

材料(4人分)

  • ビーツ(いちょう切り) 100g
  • ダイコン(いちょう切り) 30g
  • ニンジン(いちょう切り) 20g
  • ゴボウ(皮を良く洗って斜め薄切り) 20g
  • コンニャク(薄切りにした後湯通し) 30g
  • 油揚げ(半分に切って、細切り) 1/2枚
  • 焼き豆腐(2cm角) 半丁
  • 水 3カップ
  • 昆布だし 大1
  • ごま油 大1
  • 西京味噌 40g

作り方
① ビーツ・ダイコン・ニンジン・ゴボウ・コンニャク・油揚げをごま油で炒める。

② ①に水・昆布だしを入れて沸騰させ、あくを取り再び弱火で煮る。

③ 野菜が柔らかくなったら西京味噌を加えて焼き豆腐を加え強火にする。

④ 沸騰する直前に火を止めて出来上がり。

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松下 和代

松下 和代

食事は、「心のこもった温かい手で」をモットーに児童養護施設に住み込みで働く。さらに、栄養士として、ミルク会社のメールマガジンの編集・栄養・保育相談を担当後、フリーで各種保育施設の献立制作や栄養相談・テレビ・雑誌・WEB等で栄養関連の執筆を行う。現在は、ライター稼業兼、こじんまりとした料理教室を主宰。栄養士・調理師・保育士・食品アドバイザーの資格所有。趣味は、ホラー漫画とフィギア集め。