しあわせこよみごはん「小豆で解消できる?〜耳のトラブル〜」

暦の上でもっとも寒いとされる大寒(1月20日)も過ぎましたが、まだまだ寒く凍える日々が今年は続いております。みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

胃腸の調子は万全、免疫力と体温をしっかり上げ、身体も冷やすことなくこの厳しい冬を元気に乗り越えつつあれば良いのですが。周囲には免疫力が下がり風邪やインフルエンザなどで体調を崩されている方も多いようです。


陰陽五行はエネルギーの流れを見ていくことがとても大切です。胃や脾のエネルギーを夏の終わりから整えて、秋に肺と大腸のケアをすることで免疫力がアップし体温も上がります。

そうした準備を経て冬を迎えると、寒い日々も過ごしやすくなります。とはいえ、もちろん冬の間は寒さのため、体内の循環が滞りがちになり冷えを引き起こしやすくなってしまいます。

食べ物の選び方や調理法、適度な運動やエクササイズの実践、そして必要に応じてお手当てを施していくのがオススメです。

今回はそうしたケアを怠り、エネルギーの流れを無視した生活を送ってしまった私に起こった事例をご紹介させていただきます。

季節と食のアンバランスや偏食が不調を招く


3年ほど前のお話です。

その頃にはある程度マクロビオティックの勉強を済ませており、実践には及ばずとも何となく知識もありました。食生活も自分の中では大きく変化させ、穀物菜食中心のものを摂るように心がけておりました。

昔から乳製品が大好きでしたが、幼い頃から悩んでいた湿疹が乳製品を摂ると酷くなることにマクロビオティックを通じて気付き、出来る限り口にしてはいませんでした。

そんな折、近所のスーパーで豆乳ヨーグルトが市販されているのを知りました。これなら植物性だから大丈夫だろう!という安易な発想のもと、喜んで食べはじめたのです。

久々のヨーグルトのまろやかさ・酸味が懐かしく、白砂糖でなければ少々は大丈夫!とばかりメープルシロップまで入れて楽しんでいました。季節は3月になったばかり、まだ冬の寒さも残る時期のことです。

大豆は脂肪の多い豆で陰性寄り、豆乳ヨーグルトとなれば生成された豆乳から作られたものですから、より陰性になります。その上、冷蔵庫に入ってよく冷えた状態にメープルシロップをたっぷりかけていました。

白砂糖よりは身体への負担が少ないかもしれないものの、甘味料はやはり陰性、身体も冷やします。そんなことが頭に少しよぎりつつも、その味がクセになってしまいました。

毎週のように大きなパックをペロリとたいらげて1ヶ月、とうとう身体に異変が起こりはじめたのです。

腎の冷えが原因で不調の表れた意外な場所


ある朝から「あれ、何だか左耳の聴こえが悪いな。耳に膜がはったようで音が聴こえづらい。」という症状がはじまりました。

実はこうしたことが起こったのは以前にも数回あり、1〜2日経つと知らないうちに治っていました。ですから今回も放っておけばいずれ治るはず、という安易な気持ちでおりました。

さすがにこの頃は「ヨーグルトを食べ過ぎたせいかしら」という意識があったので食べずに控えておりましたが、それ以外のケアはせずに過ごしていました。

そんな中で時は過ぎ、1週間経っても聴こえない状況が続いたのです。時には両耳の調子が悪く常に頭の中がボワ〜ンとし、まるで水の中から音を聞いているような感覚がありました。

そのままついに2週間が経過し、これは耳鼻科で検査してもらった方がいいかなとようやく重い腰を上げたのです。

緊張しつつ医師に症状を伝えると、「とりあえず聴力検査室に入りましょう。」と案内されました。音域の異なる電子音をヘッドフォンで聴き、聴こえたらブザーを鳴らすといった簡単な検査方法です。しかし明らかに幾つかの音域で、全く何も聞こえなかったのです。告げられた病名は「突発性難聴」というものでした。

医師からは「何故、もっと早く検査を受けに来なかったのか。2週間経過は遅すぎる。聴こえづらいと思ったらすぐ来ないと、治るものも治らなくなってしまう。

突発性難聴の場合、聴こえなくなってから1ヶ月経過すると耳の状態はそのまま定着してしまうからね。すでに2週間経過ということは 治る可能性は今50%以下しかない。

とりあえず薬を処方するので、3日経って改善しない場合は入院手術を考えましょう。」と伝えられました。

処方された薬はステロイド剤を含む3種類のもの、出来れば薬は服用したくありません。

半絶望的な気持ちで耳鼻科を後にしながらも何とか気持ちを前向きに取り戻し、今まで学んだマクロビオティックの知恵を生かしてみようと思いました。

陰陽五行をもとに原因を探る

【耳に悪い影響が出ている=腎臓が弱っている】
※耳・腎臓・生殖器・神経系など、「水」のエネルギーに関連するグループのものでまずは影響を考えていきます。

【今回の腎の弱りの最たる原因(推定)】
寒い時期に豆乳ヨーグルトやメープルシロップの取りすぎ→腎の冷え、腎の目詰まり、体液の滞り、体温の低下など

腎臓に良い食べ物は?と考えて、すぐに浮かんだのは「小豆」でした。

食べ物の形との相似はお手当ての良きヒント


「腎臓の形」は「小豆」に似ている?

内臓や身体の形が似ている食材はその箇所に対する薬効的成分を持つと、マクロビオティックでは考えます。

他にも生殖器である子宮や前立腺の形が三角形であることから、形の似ている蕎麦の実や栗などが亜鉛も豊富でホルモンバランスの調節に良いとされています。

また前々回の投稿にもありましたが、足腰の不調には根菜類を摂取するのが効果的であるとも言われます。

〜小豆の持つさまざまな効能とは〜

■豊富な食物繊維

ごぼうの3倍とも言われる食物繊維があり、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維がバランス良く含まれる。腸内をきれいにして酵素を活性化するので、便秘などにも効果的。

■ビタミンB群

糖の代謝をサポートするビタミンB1は、脳へのエネルギー不足を解消し、精神的な安定を助ける働きがある。またビタミンB2は肌荒れや髪にも良いとされる。但しB1、B2ともに水溶性のため、煮汁も一緒にとると効果的とされる。

■外皮に含まれるサポニン

抗酸化作用、中性脂肪低下の働きがあり、腸のぜん動運動を促す。

■豊富なカリウム

余分な塩分、水分を排出させるため、古くから利尿剤としても利用される。むくみの解消や膀胱炎症状の改善の効果がある。

■抗酸化作用のあるポリフェノール

小豆のポリフェノール含有量は豆類の中でも特に高い。

■子宮や女性ホルモンにも良い

昔、太陰暦でいう1日(新月)と15日(満月)の月に2回小豆ご飯を食べる習慣があったのは、月のリズムが影響する女性ホルモンのバランスを整える意味もあった。また子宮の汚血を洗うという小豆には、ホルモン活性化に有効な亜鉛が含まれている。

腎の不調に効果があるとされる小豆ですが、以上のように様々な効能があります。

小豆の摂取方法ですが、私の場合は即効性を求めていたために、まずは負担の少ない液体として取り入れることができる『小豆茶』を1日2回、そして食事は『黒米入り小豆玄米ご飯』と味噌汁を基本に、いつもより少食でよく噛んでいただきました。

もちろん甘いものなどはご法度です。そして冷えた腎を温めるため、こんにゃく湿布を腎臓に当て続けること2日間、驚くことにその翌朝には以前の聴力が戻っていたのです。

小豆を使ったレシピ

今回のレシピは「小豆茶」「黒米入り小豆玄米」「小豆玄米と南瓜のコロッケ」です。

小豆茶

【材料】

  • 小豆 1/4カップ(ゴミや虫食いの豆を取り除く)
  • 水 3〜4カップ
  • 塩 お好みで

【作り方】
鍋によく洗った小豆と水を入れ、強火にかけます。沸騰したら弱火にし、水の量が半分になるまで煮詰めたら、温かいうちに上澄み(煮汁)をいただきます。味の好みに応じて塩をほんの少し入れても構いません。

飲む回数は1日に1〜2回ほど。小豆茶は腎や耳の不調・むくみの解消・膀胱炎症状の改善などに効果があるといわれています。

黒米入り小豆玄米ごはん


【材料】

  • 小豆 1/4カップ(ゴミや虫食いの豆を取り除く)
  • 玄米 3合(籾殻や虫食いの米は取り除く)
  • 水 玄米の1.25倍〜1.3倍
  • 黒米 大さじ1/2
  • 昆布 3cm角

【作り方】
① 玄米をボウルに入れて両手のひらで優しく、水を取り替えて数回洗い、ざるに上げる。
ざるに入った玄米を、水の張ったボウルに入れて振り洗いし、よく水を切る。圧力鍋に玄米を戻し、分量の水を入れて一晩浸水する。

② ①の圧力鍋によく洗った小豆と黒米、昆布を入れて蓋をして強火にかける。(浸水した水の臭いが気になる場合は、同量の新しい水に変えてから炊きます。)


③ 圧がかかったら、そのまま1〜2分ほど強火にかける。蒸気からお米のいい香りがしてきたらすぐに火を弱めて蛍火で30分炊く。ガスマットをお持ちの方はご使用いただいても構いません。

④ 30分経ったら、5秒ほど強火にかけて、すぐ火から(ガス台から)下ろします。圧が下がったら蓋を開けて天地返しをし、さらし布などをかぶせた上に軽く蓋をして10分ほど蒸らします。

小豆玄米と南瓜のコロッケ

【材料 4人分】

  • 小豆玄米ごはん 100〜150g(上記の要領で炊いたもの)
  • 南瓜 400g
  • 玉ねぎ 100g(みじん切り)
  • きのこ 100g(みじん切り)
  • 醤油 大さじ1
  • ごま油 適量
  • 塩 少々
  • 小麦粉 適量
  • パン粉 適量
  • 水 適量
  • 揚げ油 適量(ごま油+菜種サラダ油)

【作り方】
① 南瓜を大きめの一口大にカットし、軽く塩を振る。南瓜から水分がうっすら出たら、蒸し器で柔らかくなるまで蒸す。蒸し上がったら温かいうちにヘラなどでマッシュする。

② 鍋にごま油を入れて温め、きのこを入れてじっくり炒める。きのこが炒まったら、玉ねぎを入れて塩を少々振り、色づくまでじっくり炒めていく。玉ねぎが甘い香りでよく炒まったら醤油を回し入れ、馴染んだら鍋から出して冷ます。

③ 大きめのボウルに①の南瓜と②の炒めた野菜を入れ軽く混ぜ、炊いた小豆玄米ご飯を入れてよく混ぜる。南瓜の水分量によってご飯の量を調節し、まとめやすい固さにする。


④ ③のコロッケの種を8等分にし、成形したら小麦粉を全体にまぶす。

⑤ ④の余った粉に適量の粉を足し、水を少しずつ合わせて溶き粉をつくる。そこへ④のコロッケの種をくぐらせてパン粉をまとわせる。しっかりパン粉が全体についたら、170度の油でじっくりと揚げる。

ご飯・高黍・粟など、穀物を入れることで食べ応えのあるコロッケとなります。今回は小豆ごはんと南瓜の組み合わせで小豆かぼちゃ風にしてみました。

揚げ物ですので、油を分解してくれる大根やキャベツなどを副菜に取り合わせるとバランスが良いです。

今回ご紹介した例は私の体験談ですので、全ての方に同じような効果があるとは言えません。

日々の体調や個人の体質にも個性がありますので、それぞれにあった診断をもとに、食事改善やお手当ての必要があります。ただ、こうして昔ながらのお手当てで症状が改善していく例が多くあるのも事実です。

それまでは苦手だった小豆を、私はこの後から積極的にとるようになりました。

今では調子が良くない時、小豆がとても美味しく感じられます。未病の段階で小豆を取り入れたり、蒟蒻湿布で身体を温めることで、ここ数年は耳の不調もほとんどありません。

また同じような症状を持つ方からアドバイスを求められる時、自分の体験を通じて伝えられることは、とても大切な事だと感じています。

身体の不調は人任せにしないで、まずは己の身体の声を聞き、早めの対処がオススメです。もし必要であれば医者の力を借りつつも、自らが治そうとする心が最も大切なのだと思います。

会員制コミュニティ「Vegewel Club」では、今回のテーマ「小豆で解消できる?〜耳のトラブル〜」に合わせて、小豆餡・白玉入り南瓜甘酒のお汁粉を紹介していきます!

腎の冷えやすい冬だからこそ、スイーツの甘みや必要以上の油には氣をつけると身体も楽に過ごせます。一緒に食べることで相乗効果のある小豆と南瓜の組み合わせをスイーツにしました。

素材の持つ甘みを引き立てる簡単な工夫をご紹介しています。寒い時期だからこそ、スイーツ作りは甘味料をただ足していくのではなく、陰陽のバランスを考えることが大切です。

【大好評のベジレシピ一覧はこちら】
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大槻広子

大槻広子

KIJ(クシマクロビオティック)公認インストラクター
リマクッキングスクール師範科修了
JAMHA認定 ハーバルセラピスト

都内や横浜のマクロビオティックレストランやオーガニックカフェで経験を積み、現在は自宅サロン「Tsukinoki」で料理教室やイベントの開催したり、個人でパーソナルシェフとして活動中。地域に根づいた自然に寄り添う暮らしを目指しながら、日本の文化を見直すきっかけを「食」を通じて紹介している。