シンプルこそ最高の贅沢~発酵するカフェ。麹中(こうじちゅう)【本郷三丁目】
一汁一菜・本物のオーガニック食材でつくる日本の伝統的発酵食の定食をいただけるカフェが本郷弓町にあると知り訪れました。
「麹中」 ”こうじなか”だとばかり思って出向いた本郷三丁目のカフェ。
外壁修繕なのかグレーのシートで囲まれたビルの1階に現れるガラス張りの今どきのカフェ。目の前には「麹中」のシートが。なんと、”こうじちゅう”と読むのだそうです。
工事中にかけたんですか?と思わず聞いてしまいました。
目次/Contents
伝統的発酵の街「本郷」
なぜ、この地で発酵なのか?
割と近所に住む筆者も、この本郷エリアが発酵に縁の深い街だったとは知りませんでしたが、実は麹中のある文京区本郷から湯島にかけてのエリアには、麹室がたくさんあり、江戸の幕末期には東京の味噌問屋の約6割が集まっていたというから驚きです。
カフェ「麹中」は、併設する設計事務所を運営する崎谷浩一郎(さきたに こういちろう)さん、建築事務所「空間構想」の川添善行さんのお二人が立ち上げた、「合同会社クスキチ」による新たな発信拠点としてオープン。
メニュープロデュースに食卓デザイナーの石橋直樹(いしばしなおき)さんが参画し、人の出会いと自然が生み出す化学反応で、まろやかに発酵するようなカフェを、、、と生まれました。
お店の前には保護樹木の大きな大きなクスノキ。
樹齢600年を超えるクスノキが放ついいエネルギーを感じる閑静な場所で、
「人と人が出会い、触れ合い、関係性を育んでいくなかで、そこからエネルギーが生まれ、全く新しい何かを創造する。そして、新しい文化を醸造していく」
ことをコンセプトに、食堂やカフェという括りを越えて「食べる場」「発酵する関係性を産み出す場」づくりをしています。
麹中の入るビルは、もともと重要文化財本郷瀬川邸を守るために建てられたもので、クスノキといい由緒ある場所であることが窺えます。
とびきりおいしい地味ごはん【自然栽培×発酵食×一汁一菜】食堂
(写真協力:木内和美)
「麹中」で提供する定食は「85定食(発酵定食)」、850円の一汁一菜という”地味”ごはん。
ハレ(晴れ・霽れ)の日は婚礼やお祭り、季節行事などの「非日常」の日のこと。ケ(褻)の日とは日常の生活のこと。
麹中で提供するごはんは”ケ”のごはんの極みです。しかし、農薬も肥料も使わずに自然栽培で育てられた野菜と自然循環栽培のお米を使い、伝統的な発酵を取り入れた、とびきり丁寧で愛情を込めたごはん。
飽食の現代だからこそ、そんな”ケ”のごはんが、何よりの贅沢に感じてしまいます。
カウンターのお盆に伏せられた様々な絵柄のご飯茶わん。好きなご飯茶わんを選んで、おひつに入った三分づき(玄米を30%削ったぬか等の栄養素が残ったもの)ご飯を食べたい分だけ自由によそう。
なつかしい昭和の食卓では当たり前だった光景。
自身でご飯をよそうことで残す人はいないのだそう。
山盛りごはんの男性客、控えめに盛り付けるママさん。そんな光景を見るのも楽しい。
使われるお米は、千葉県夷隅市にある「つるかめ農園」の自然循環栽培米。
埼玉県坂戸市の「えがおファーム」、長野県佐久市の「つながり自然農園」、静岡県南伊豆の「自然農園日本晴」の、おいしく生命力あふれる自然栽培の元気なお野菜を使い、発酵なめみそ※や漬物などはすべて自家製です。
※なめみそとは・・・・野菜・穀物・豆・果物・魚・獣肉などを入れてつくった味噌全般のことで、ごはんの副食や酒の肴としてそのまま食すものです。醤(ひしお)、もろみ味噌、金山寺味噌、ゆず味噌などに代表されます。
ごはんをメインに、旬の自然栽培野菜たっぷりのお味噌汁。そして日替わりの発酵なめみそと漬け床に、放し飼い有精卵の茹で卵、兵庫丹波のなた豆茶。
ごはんそのものの美味しさと甘味が口に広がり、温かい具だくさんのお味噌汁に身体が喜ぶのがわかります。
自家製なめみそをほんの少し付けるだけでごはんがいくらでも食べられてしまいそう。本物の美味しさ・発酵の美味しさを噛むほどに感じます。
この日の味噌汁は、グリルした菊芋・白菜・ネギ・かぶがたっぷり。付け合わせは、大葉のかかった玉ねぎの醤油麹漬け、牡蠣のなめ味噌です。
ヴィーガン・ベジタリアンの方には豆腐のなめ味噌に変え、味噌汁の出汁も鰹抜きで対応していただけます。
シンプルイズベストな御膳を求めて近隣のサラリーマンやOL、ご近所のママさんなどが続々と来店します。
コーヒーはスローコーヒーのオーガニックコーヒーが。他にも合鴨農法のお米で作った甘酒、季節の酵素ジュースなどのヘルシーなドリンクが楽しめます。
スイーツは酒粕をつかったチーズケーキや、平飼い卵の豆乳プリン、ヴィーガンさんには旬のフルーツコンポートが用意されています。カフェタイムものんびりお茶をしたり、パソコン仕事をして過ごせます。
発酵はつながり、そして新しいものを生み出す
麹中のメニュープロデュースをしている食卓デザイナー:石橋直樹さんにお話を伺いました。
石橋さんは、命と命をつなぐことを意識し、その橋渡しをするという意味から、食をデザインする工房「ニジノハシ」を主催しています。
”食卓をデザインする”ことを、ハレとケの二本柱で行っている石橋さん。
ハレの日のデザインとして「出張料理」、ケの日のデザインとして自宅で料理教室を行っています。
料理教室では単にレシピを伝えるだけでなく、食のインフラ・食材のこと・流通のことなど、本質を伝えることを大切にされています。
石橋さんは、どうしたら美味しくなるのかを、<おいしさの法則>としてイラストで表現して伝えています。生徒さんは20代前半から50代まで幅広いそうです。
8年程前まではサラリーマンをされていたという石橋さんが、なぜ食卓デザイナーとなり食を伝えることを職業にしているのか。
石橋さんは、洋食中心で野菜といえばサラダくらいしか食べていなかった当時に体調を崩し、日本人には日本人に合った食事が必要だと気づいたそうです。
食べ過ぎ、食べ方の歪み、身体と向き合うことなどを伝えたいと思い、学びと修行を経て今に至ります。
麹中のフードディレクションを担当することになった石橋さん。
食堂として本質的な機能を提供するカフェから、地球の循環を意識する・料理を提供する場ならば一時生産者に貢献し・つながりを大切にするという思いもとにコンセプトデザインを提案したそうです。
カフェタイムは、奥様である平野智子(ひらのともこ)さんが監修されています。夫婦二人三脚で”ちょうどよい暮らし”を伝える。今後、東村山の古民家に新たなお二人の発信基地を構える予定なんだそうです。
麹中のカフェスペースは、「カリキチ」というレンタルスペースとして、時間借りができます。
カフェのキッチン(かまど)とクラフトビールサーバーを借りて、パーティやイベントにも利用できるそうです。小あがりスペースだけを借りて会議室代わりに、など、リーズナブルなレンタル利用も可能です。
清潔感溢れ明るく心地よいスペースでパーティをしたら、とても喜ばれそうですね。
幸せは食卓から
「食卓を守り僕らの幸せな食卓を、僕らの手で守っていきたい。」
石橋さんは、強い思いをもって食の本質を伝え続けています。
石橋さんのブログは、毎回の末尾にこんなメッセージが書かれています。
命を大切に、食べることを大切に、目の前にある恵みに感謝を、そんな思いを込めて。
今日もちゃんと食べてますか?
あなたがたった今、この瞬間を、
残さずに味わえていますように。
「いただきます。」
食に感謝。
日本の米の消費量が右肩下がりに減っているのは、食の欧米化と、飽食でおかずの比率が多くなり、お米を食べなくなっているからだそうです。
ごはんは「主食」と言われるように、お米をベースにした食卓が、何より健康的にバランスのとれた食事なのではないでしょうか。
最後の晩餐に何を食べたい?
そんな話をするとき、食に携わる仲間たちが声を揃えて言うのが「おいしいごはんと味噌汁」。
もちろん私も。
日本人のソウルフードでもあるごはんとお味噌汁こそ最高のご馳走であり、魂が喜ぶものなのだと思いませんか?
クスノキのエネルギーを感じて「麹中」の発酵ごはんを頂くと、きっと感謝心と幸せに満たされることでしょう。
※記事の内容は取材時点のものであり、変更される可能性があります。来店時には、あらかじめお店にお問い合わせいただくことをお勧めします。
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