菜食で僕はより強く健康になった!プロマウンテンバイクレーサー・プラントベースアスリート池田祐樹(いけだゆうき)選手・清子(さやこ)さんご夫妻インタビュー【前編】

更新日:2022/01/17 公開日:2019/04/25

photo ︎©︎Sallu

近年、メダリストの中でも自身がヴィーガンだと公言する選手が増え、ヴィーガンアスリートという言葉も目にするようになってきました。

「肉を食べなければ強くなれない」誰もがそう信じていた世の中で、菜食に切り替え、世界各国の長距離レースで優勝したのがプロマウンテンバイクレーサー池田祐樹(いけだゆうき)選手です。

前編では、20歳の時より今の自分の方が強いと断言する池田選手に、プラントベースアスリートになってからの体の変化や、競技生活についてお話を伺います。

後編では、アスリートフード研究家として池田選手を支える、奥様の池田清子(いけださやこ)さんとの二人三脚のベジ生活をご紹介します。

後編はこちら
≪後編≫アスリートフード研究家・妻として、細胞レベルから健康になるのを見守った。プラントベースアスリート池田祐樹選手・清子さんご夫妻インタビュー

誰もが知りたい!アスリートがなぜベジを選んだのか?


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池田 祐樹(いけだゆうき)さんプロフィール
プロ・マウンテンバイクレーサー(トピーク・エルゴンレーシングチームUSA所属)。プラントベースアスリートとして活躍中。世界各国の長距離・耐久レースに参加し数々の優勝経験を積む。7年連続(2010〜2017)マウンテンバイクマラソン世界選手権日本代表。2019年からはトレイルランナーとしても始動し、山岳長距離競技のスペシャリスト「ウルトラ・マウンテン・アスリート」として世界トップを目指す。


池田選手が菜食になったのは2014年。きっかけはチームメイトのソーニャ・ルー二ー選手がヴィーガンになったことでした。

「当時のチームメイトの中でも、僕とジャンクフード好き仲間だった彼女がヴィーガンになりパワーを落とさずにパフォーマンスが良くなっていったんです。

当時の僕は伸び悩みの時期で、何か次の手を…と探していた時だったので、半信半疑ながらもやってみようと。でも、やるからには効果がわかるように、一定期間、100%菜食を徹底してやってみたんですよね。

ソーニャからも、食事から動物性を抜くだけでは足りないからと、動物性食材の代わりとなる、たんぱく質の高い食材を教えてもらい勉強しました。

スーパーフードともそこで初めて出会い、学んだことを夫婦で共有してプラントベース(菜食)をアスリートフードに落としこんでいきました。」

驚く変化。アスリートとして健康寿命を長く。


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肉を食べないと筋肉がつかないというのが世の中の定説ですが、菜食に移行する中で体調に驚くべき変化があったそうです。

「僕自身も、動物性食品を取らないとスタミナがなくなったり、筋肉がつかないんじゃないかと思っていました。でも、パフォーマンス・体重・体脂肪が徐々に適正値に向かって行くのがわかりました。

一番効果を感じたことは、喘息の症状がなくなったことです。30歳を過ぎてから、アレルギー体質がひどくなってきていました。運動誘発性喘息になり、朝晩と吸引薬を飲まなければならなかったんです。

アスリートは競技寿命も短いし、短命と言われています。僕の成績は伸びていたので、『健康を犠牲にしてパフォーマンスを優先する』ところがあり、このくらい我慢して頑張らなければいけないのか、と思っていたんです。

ところが、食生活を変えて喘息がなくなり、医師から薬も飲まなくて良いと言われました!練習場が山の中なので、花粉がすごく花粉症にも悩まされていたんですが、それも治ったんですよ。

長距離選手の割に高血圧で、遺伝のせいにしていたんですが、血圧もみるみる下がっていきました。いわゆる健康体に近づいていったんです。」


−−左が菜食になる前。右は減量だけでなく、目元が光輝いているよう。

「僕の好きな、数日間・毎日連続してタイムを競う『ステージレース』では、1日1日のパフォーマンスはもちろん、翌日にいかにフレッシュな状態でスタートに立てるかが鍵なんです。それも菜食になってからは、回復が早い感じがあります。

海外遠征に行くとすごく疲れて、免疫が下がった状態で飛行機に乗るため、乾燥などから、風邪や感染症になってしまうことが常でしたが、それも年に1回引くか引かないかになりました。

風邪を引くということはアスリートにとってシビアです。1回引くと1週間はトレーニングを休んだりボリュームを減らさなくてはいけないので。それがなくなることでパフーマンスアップにもつながり、風邪をひかない分、練習時間も確保できる。」


「アスリートとして強くはあった。けど、強さイコール健康ではなかった。」

その瞬間だけ燃えるようだったと、菜食前の競技生活を語る池田選手。

プラントベースになってから、自身の中にある強い選手像が変わったそうです。

「健康であって強くあれば、選手寿命も長くなりますし、もし選手を辞めたとしても長生きすることができる。アスリートだからって、健康を犠牲にして自分の寿命を削らなくてもいいんだ!と、太く短くみたいなイメージではなくなりました。」

プラントベース生活を始めた年の秋、コロラド州で長距離レース「テルユーライド100」が開かれました。160kmを約9時間、荒れたオフロードをひたすら登って降りてを繰り返す過酷なレースで池田選手は優勝!

プラントベースが体を強くすることの証明となったのです。


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−−アリゾナでのトレーニング

「優勝した時に、この食生活の方がむしろスタミナがアップしているという感覚があり、間違ったことをしてないんだと確信しました。

マウンテンバイクのレースは木の根っこなどで悪路なので、常に振動があり、内臓が揺さぶられて負担もかかります。さらに、補給食も無理やり食べるので、内臓をより酷使します。

菜食になってからは内臓も軽くなった感覚があるのも自分にとっては大きいです。

今の僕の目標は、「生涯現役で生涯健康」です。

今、39歳ですが、自分のパフォーマンスは右上がりで20歳の自分より強いです。それをどこまで更新できるか。それもチャレンジですし、それにはやはり健康がキーワードだと思います。」

プラントベースアスリートって何を食べてるの?


奥様はアスリートフード研究家の池田清子(いけださやこ)さん(写真・左)。アスリートの能力向上や減量など、目的に合ったレシピを研究しています。

マクロビオティックを学んでいた経験があり、その知識が今生かされているそうです。

ここで、お2人で取り組んでいる、池田選手の気になる食事の内容をコメントと共にご紹介します。

*朝食・・・
フルーツ、バナナやりんごが多いです。以前は、オートミールなどの穀物を食べる時もありました。

*昼食・・・
玄米菜食メイン。雑穀や豆を混ぜたご飯に、カレーをかけたりしています。

*夕食・・・
バケツに入っているような量のサラダを食べます。笑

20品目は入っていて、とにかく緑いっぱいです。

運動後は、糖質・たんぱく質…と、以前は5大栄養素だけを気にしていました。今はリカバリーを考え、抗酸化作用のある新鮮な葉野菜をとるように意識しています。常に体を酷使しており、体の中が活性酸素だらけになってしまうので。


−−ネパールヒマラヤ山脈でのレース

*遠征中・・・
遠征先にキッチンがある場合は遠征中でも普段と同じ食事をしています。

5400mの峠を越えるレースがあるんですが、ネパールのシェルパ(荷物運びの仕事)は、ダルカレー(ネパールの代表的な豆のカレー)、ディド(そば粉を練ったそばがき)など、ほぼ菜食で1日20キロ超える荷物を持って超えるんです。しかも、靴ではなくてビーサンですよ!

僕も選手に用意された食事ではなくそれを一緒に食べました。笑

*レース中の間食・・・
ジェルやエナジーバー、持ち運びしやすいバナナやデーツ。妻の作る手作りジェルも。

糖質が凝縮されたスポーツ用の補給食は、血糖値のアップダウンも激しいので、普段は自然のものをなるべく取り入れています。
レースは本当に過酷なので、ジェルもうまく利用しています。

*激しいライド後のご褒美・・・
菜食を始める前はジャンクなピザ・ラーメンなど、消費したカロリー分好きなもの食べるのが楽しみでした。今は180°変わって、「サラダ食べたい!まず回復したい。」と変わったんです。効果を体感することによって味の思考も変わりました。


−−ドイツのファーマーズマーケットで

「我慢しているという感覚がないんです。シーズン後には肉食べるの?って言われるけどそういう意識は全然ないんです。検査の数値の結果だけでなく、菜食の方が心身ともに気持ちいいから続けています。」

本当に健康になりたいあなたへメッセージ。


新たな挑戦として、トレイルランナーとしてもレースに参戦する池田選手。

最後に、プラントベース・ヴィーガンアスリートになりたい方に池田選手からアドバイスをいただきました。

「合う・合わないはあると思いますが、僕の体感的にはいい方向にしかいってないので、まずは体感してもらいたいです。僕も先入観があったのですが、それを取り払って!

何から始めたらいいか難しいと思うんですが、僕や妻のブログにメニューや写真も載せていますし、できるところからでいいので始めてもらいたいです。

できれば、3ヶ月続けることで体の変化が顕著に現れてきます。僕の喘息が改善したのも3ヶ月後でした。

僕は100%やった方が効果がわかりやすいと思います。けれど、0か100かが難しい人は、例えば週末だけや、外食からでも試してみて、体が軽くなるの感じて欲しいです。

僕は100マイルのレースで優勝した体験もあるし、肉を取らなくても充分アスリートでやっていける確信があります。概念にとらわれないで試してみる価値はあります。」


池田選手、ありがとうございました。池田選手は現在アメリカに遠征中、常に挑戦し続ける池田選手のご活躍に目が離せません!

後編では、アスリートフード研究家としての清子さんにフォーカス。プラントベースフードと向き合う姿勢に迫ります。

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岩田 絵弥曄 / Emika Iwata

岩田 絵弥曄 / Emika Iwata

ヴィーガンフードアナリスト®︎
ベジタリアン・ビーガン・グルテンフリーなどヘルシーな食のフードライターとして活動。 保育士経験から子供たちの未来を守るため、オーガニックや自然栽培など食の安全にも取り組む。インバウンド対策やアレルギー・環境問題から、ヴィーガンに関するセミナー等も開催。自身も10年以上のヴィーガン。 メディア出演:The Japan Times、日テレ「人生が変わる1分間の深イイ話」、チバテレビ「ジャルっと爆ハリ」等。